逝きし世の面影

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(続)非核三原則と核持ち込み密約

2009年07月10日 | 軍事、外交

核兵器持込に関する日米政府間の密約に対する見解は、『どこがニュースだ』と開き直り、『国家機密は、どこの国にも存在』し、『正義は国を滅ぼす』ので、国民に嘘をつくことは『政治の知恵』で有るとして擁護する産経新聞以外は若干のニュアンスに強弱は有れど、其れ以外の『政府は真実を国民の前に明らかにするべき』とする朝日、毎日、日経、読売と各新聞社の主張は一致している。

それにしても産経の『贔屓の引き倒し』的なうつろな詭弁は呆れ驚くばかりだが、この事からも産経新聞が『社会の木鐸』とは正反対の自民党政府の宣伝広報紙で民主主義のイロハも知らない低級プロパガンダ紙である事が良く分かる。
みんなが知っている事柄を日本政府一人が『知りません』では、今でも低い日本政府の信頼度や権威がさらに傷つき、政治不信や政府不信が国民に蔓延して、結果的に大きく国益を損ねる。
『政治の知恵』では無く、まさに『政治家の悪知恵(浅知恵)』の見本である。

『首相や外務大臣を選別していた官僚』

主権者たる国民や国会に嘘を付き騙し続ける核兵器持込密約は、勿論おおやけに出来る性格の物ではない。
それで、歴代の事務方のトップである外務省事務次官の間で文章により後任の次官に順次申し送りして日本政府が代々伝えてきたものです。
しかし、上司である外務大臣や首相には全員に報告していない。
相手によって『知らせた』り『知らせなかった』りしているのです。
今判っているのは知っていた(知らされた)首相は5人で外務大臣は6人だそうです。
約五分の一程度ですね。
判明している以外にも知っていた(知らされていた)首相や外相や其の他の閣僚もいたかも知れませんが、それにしても日本国の最高責任者であるはずの首相が、実は『知らされていなくて蚊帳の外』状態であったわけです。

官僚の信頼にたる人物だけが『知らされていた』ので、間違いなく田中真紀子外務大臣は知らされてはいなかったはずで、それ以外にも外務省の重用機密の多くが『知らされていない』事はあの事務次官と揉めて辞めさせようとして逆に小泉純一朗に首を切られた辞任劇を見れば想像できます。

『官僚が握っている機密』

核密約はアメリカのラロック提督の米議会証言やライシャワー元大使の発言で存在は何十年も昔から知られていたが、それ以外に日米に密約は無いのか。?

多分今回の密約暴露はアメリカが明らかにしても良い(明らかにしたい?)と考えたから公文書も機密解除したわけで、今回の元外務次官発言も其の延長線上の話でしょう。
明らかになった核密約以外、官僚が国民に内緒にしている機密が『無い』と考える方が余りにもナイーブすぎる現実離れした観念論、理想論でしょう。
そして、今回はたまたま外務省だったが、それ以外の政府の官庁や役所で、同じ様な機密はないのかと考えたら、やっぱり無いとは言えない。
しかしこの問題ですが、首相を勝手に選別して情報を上げないなどは、首相以上の(おおやけではない闇の)権力機構がこの国には有ると考える事も出来ますが、今マスコミ等で問題になっている高級官僚の無駄使いや天下り問題等の利権構造問題なんかより、遥かに重要な問題ではないでしょうか。?

『相互確証破壊戦略の恐怖』

非核三原則と核の傘は相反するようで、実は同じコインの裏表で同じ考え方(同一戦略構想)です。
『核の傘』とは最近亡くなったマクナマラ元国防長官の考えた相互確証破壊による米ソ超大国間の戦争抑止の考えを同盟国にも広げたものである。
核兵器を使用できる条件は以下の三つ。
1.一撃で相手の反撃能力を失わせる
2.相手の反撃を完璧に防御可能
3.相手の攻撃によって失う物がない

最初のアメリカによる原子爆弾のヒロシマへの使用は2の条件が完全に満たされたからで、敵軍(日本)の報復が予想されていたら核兵器は使用できなかった。
因みにナチスドイツは毒ガス兵器を備蓄(日本軍は細菌兵器を備蓄)していたが、敗戦確実な状態でもドイツ軍は連合国軍に対して(報復を恐れて)使用する事はなかった。

『核の傘』の根拠となっている相互確証破壊戦略は、具体的には1と2の条件を満たしているが3までは考えていない。
マクナマラ氏はこの危険極まりない『相互確証破壊戦略』を確立し、国防長官時代には積極的に推進していたが、後年は其のあまりの危険性に気が付き反省し、反対していたようです。
3は『北』が崩壊直前イタチの最後っ屁の様な話もあるかもしれませんが、可能性としては限りなく低いでしょう。
何故なら元々北朝鮮の軍事独裁政権が核を開発した最大原因は『相互確証破壊戦略』であり、核兵器を自らも持つ事によって1と2の項目の要件を満たそうと考えたからです。
その意味では北の核武装は、日本政府の『核の傘』戦略と対になった考え方である。
日本の相互確証破壊戦略(いわゆる核の傘)が正しいとするなら、アメリカと名目的には現在も戦争状態にある北朝鮮の核武装も当然の選択肢の一つになってしまうジレンマが存在するのです。

『パキスタンやイスラエルの危険度』

そして危険度だけでいえば、欧米やマスコミが問題にしているイラン、北朝鮮の核よりも、アメリカの同盟国であると言う事で『お目こぼし』されているパキスタンやイスラエルの『核兵器』の方が、より危険度は高い。
イスラエルはアメリカ以外では唯一、国益の為の『先制攻撃』を公言している核保有国であり過去に原子炉を空爆したり、周辺のイスラム諸国と4度の全面戦争を行ったり、今でもレバノン侵攻のように国際法を無視して度々隣国に越境攻撃を繰り返している。
パキスタンは核保有国ではあるが、国力以上の過大な軍事費や三度のインドとの全面戦争の敗北で国土は疲弊し財政は破綻状態で民間政治家は腐敗の極に達している。
アメリカの対テロ戦争への協力で国内イスラム勢力や部族の反感をかっていて安定化からは程遠く、国家崩壊までが囁かれている。
核兵器の父カーン博士の私的な行為であるとしているがパキスタンの核シンジケートを通じて北朝鮮へのウラン濃縮技術や装備の転売が噂されている始末である。


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