おいみず亭 Family & Friends

美味しい食べ物と知的好奇心、そして楽しい仲間!!

Henry Cowへの道 / Leg End (Original Mix)

2007-05-11 02:21:32 | Henry Cow


ヘンリーカウへの道の、いよいよ最終回。
今までの「道」シリーズは、ファーストアルバムから始まって、アルバムの発売順に道をたどるものでした。いわば時の流れに乗って、川を下るようなもの。
今回は、たまたま最初に聞いたヘンリーカウがWestern Cultureだったので、ラストアルバムから1stへと、川の流れを遡るものでした。
いや、しかし、川を遡るのが、こんなにたいへんな事だとは思いませんでした。
でも、川を上ってたどり着いた源流は、とても素晴らしい世界が待っていました。

ヘンリーカウの1stアルバム。Legend(Leg end)には、とても若々しくて、ういういうしいヘンリーカウの姿がありました。それはまるで、5月の光のようにまっすぐで、明るい音です。

1曲目はフレッド・フリスの「Nirvana for Mice」。管楽器のきらびやかさと、スピード感。Western Cultureの重っ苦しいイメージは全くありません。フリスの書く曲は、なにげに覚えやすく、印象に残ります。1stアルバムの1曲目に相応しいと思います。

2曲目「Amygdala」はチープなオルガン(?)の音から始まります。
記憶の中に微かに残っているZNRは、こんな感じゃなかったかと思います。
そこから、ほのぼのとした曲が展開します。
このほのぼの感こそ、カンタベリーの音。
リチャード・シンクレアも、デイブ・スチュワートもいないけど、これはカンタベリーの音です。
(いやいや、ジョン・グリーブスのグリグリベースもいいですよ)

それがはっきりするのが、3部に別れたTeenbeat。
特に3つめのRepriseのスピード感は、見事です。
カンタベリーの名曲だと思います。

ラストは、メンバーによるコーラスによる「Nine Funerals od the Citizen King」。
決してうまい歌じゃないのですが味があります。
でも、コレ聞くと、ヘンリー・カウがダグマー・クラウゼ獲得に動き出したのが、わかるような気がします。

ヘンリー・カウ史上最高に明るく、楽しいヘンリーカウ。
Leg endを傑作という人がいるのも解るような気がします。

ちなみに、Legendという不思議なアルバムを作り上げたエンジニアは、トム・ニューマン。
Nirvana・・・(と2ndアルバムのRuinsも)マイク・オールドフィールドがエンジニアとして参加しています。

1.Nirvana for Mice/ねずみの涅槃(Frith)
2.Amygdala/扁桃核(Hodgkinson)
3.Teenbeat Introduction(H.Cow)
4.Teenbeat(Frith/Greaves)
5.Extract from "With the Yellow Half-Moon and Blue Star"/"黄色い半月と青い星とともに"より抜粋(Frith)
6.Teenbeat Reprise(Frith)
7.The Tenth Chaffibch/十羽目のあとり
8.Nine Funerals of the Citizen King/市民の王の九つの葬式(Hodgkinson)

それにしても、カウの日本語タイトルのセンスというのは・・・

Personel
Geoff Leight: Saxes,Flute,Clarinet,Recorder,Voice
Tim Hodgkinson: Organ,Piano,Alto sax,Clarinet,Voice
Hohn Greavs: Bass,Piano,Whistle,Voice
Fred Frith: Guiter,Violin,Viola,Piano,Voice
Chris Cutler: Drums,Toys, Piano, Whistle,Voice

----
さて、ヘンリー・カウの道も最終回なので、まとめにかえて、ヘンリーカウ入門者に送るアルバム一口メモ。

Leg end:
 とにかく初々しいヘンリーカウ。カウの原点がここにあります。おすすめ。
Unrest:
 なんといっても名曲Ruins。ヘンリー・カウらしいアルバムだと思います。
In Praise of Learning:
 ダグマー・クラウゼのボーカルが素晴らしい。いちばん分かりやすいヘンリー・カウ。
Concerts:
 ダグマー・クラウゼの参加したRuinsは、スタジオ版とまた違った味があります。
 初心者向き(Disk1)からマニア向き(Disk2)まで、ナガーく楽しむ事ができます。
Western Culture:
 「なに、こいつら!?」度が最高。頭の中、かき混ぜられます。

ということで、おすすめは2枚組のConcerts・・・かな?
どれも、はまると味が出るのですが、それぞれ個性的だから、なかなかお薦めしにくいバンドです。




----
にほんブログ村へ登録しました。
ブログランキング・にほんブログ村へ ←この記事が気に入ったらクリックしてください

Henry Cowへの道 / Unrest (remastered)

2007-04-27 03:11:32 | Henry Cow
靴下2枚目。
うーん、これは困った。

Unrest。
ブログ記事を何度も書いては消し、書いては消し・・・
つかみ所が無い・・・の逆。聞くたびに新しい発見があります


1.Bittern Storm over Ulm(ウルムを覆うビターン・ストーム)
2.Half asleep; Half awake(眠半醒)
3.Ruins(廃虚)
4.Solemn Music(厳粛な音楽)
5.Linguaphonie(リンガフォニー)
6.Upon entering the Hotel Adlon(ホテル・アドロンに足踏み入れつつ)
7.Arcades(拱廊)
8.Deluge(氾濫)

Personel
Tim Hodgkinson
 Organ,Alto Sax,Clarinet,Piano
Fred Frith
 Stereo guiter,Violin,Xylophon,Piano
John Greaves
 Bass,Piano,Voice
Chris Cutler
 Drums
Lindsay Cooper
 Bassoon,Oboe,Recorder,Voice



オリジナルメンバーのジェフ・リーが抜けて、替わりに入ったのが女性バスーン奏者、リンゼイ・クーパー。オーボエも担当します。
ヘンリー・カウの音、アバンギャルドでありながら、どこかのどかな牧歌的なところがあるのは、リンゼイのバスーンの音の影響かもしれません。

LPのA面にあたる3曲。
1曲目は元歌はヤードバーズの曲だそうです。短めの曲ですが、1stアルバムのイメージを残した曲です。
この曲が短いイントロとなって、いよいよアルバムのスタート。
2曲目Half asleep;Half awake。
以前、インターネットラジオで聴いて良いなぁ、とおもったのがこの曲。
物憂げなピアノで始まり、管楽器とギターの即興的な絡みたいで曲が展開し、そして再びピアノソロで曲が閉じます。
即興演奏なのかと思いきや、意外としっかり構成を練り上げた曲なのだと思います。
そしてLPのA面最後は、名曲Ruins。12分を越える大作。このアルバムのハイライト。

最初聞いたときはフリスの攻撃的なギターと、カトラーの手数の多い、でもどこか冷静なドラムばかり目立つ曲でした。
でも、なんとなく記憶に残るメロデーがあります。
実際、この曲をLPで聞いたのはもう10年以上前の事だったと思います、しかも、そう何回も聞いた訳ではなかったのですが、「そうそうここ覚えている」というメロディーが沢山ちりばめられていました。
結局、そういった曲の断片に惹かれて何度も聴いていました。それこそ、毎日の通勤途中に、朝も夜もかかさず聞いていた時期がありました。
どこか遠くの方から聞こえてくるようなオルガン、そして管楽器がパラパラと入ってくると、空から降ってくるようにザイロフォンが響き、そしてフリスの引き裂くような、猫の叫び声のような暴力的なギターが割り込んできます。クリス・カトラーも、フリスのギターに合わせて激しくドラムをたたきまくります。
その大暴れが約3分ほど続くと、チーンとベルの音。
その音を合図にギターとドラムは静まり返り、フリスの奏でる物悲しいバイオリンとこれまたトツトツと話しをするかのようなバスーン。
Ruinsを「廃棄」と訳すか「遺跡」と訳すかでイメージは違うのですが、ギターとドラムが破壊の限りを尽くした跡地にやって来たちょっと悪戯好きな精霊? 女神? そんなものがフワフワと漂っているようです。
バイオリンとバスーンの対話が7分過ぎまで続くと、再びザイロフォン、管楽器、そしてギターが再び現れます。
やがて、曲も残り2分ぐらいになりドラムのロールを合図に、曲は再フルスピードに。ギターとドラムがグングンとひっぱり、メンバーが一丸となってエンディングに向かいます。
興奮が最高潮に達したとき、潮が引くように楽器が一つ、また一つと引いていきます。
そして、再びオープニングと同じオルガンの音が、こんどはどこか遠くの世界にいってしまうかのように、静かに消えていきます。

大暴れのRuinsが終わると、一転現代音楽のようなSolemn Music。
ベース(オルガン?)とオーボエによる小品です。
そしてここからは、即興的な小品がいくつか続きます。
ここからが、アルバム後半の始まり。

一曲一曲、しっかりと作り上げられた大作が並ぶA面と比べると、後半の曲はちょっと散漫な感じがします。
解説によると、どうやらアルバム1枚分の曲が揃わないまま、レコーディングに突入したようです。
スタジオで即興的に曲をつくりながらレコーディングを進めていたようです。
そんな後半の曲の中でも、Delugeはすこし違った感じがあります。
ベースとドラムのリズム隊が静かに曲のイメージを作り上げていきます、
そこに管楽器とギターが緩やかに滑り込んで、まるでマイルスの「オーラ」を聞いているみたい、というと褒めすぎかもしれませんが。。。
ゆっくり、ゆっくりと曲が盛り上がってきたその時に、一転ジョン・グリーブスのピアノの弾き語りが引き継ぎます。ちょうどHalf asleep;Half awakeのイントロのピアノに呼応するかのような、物憂げで、ちょっとおしゃれな感じのピアノです。
このピアノをを聴いていると、まるで今までの時間が夢だったかのように思えてきます。
あるいは、なかなか醒めない、夢の中の夢のはじまりであるかのように。。。



----
にほんブログ村へ登録しました。
ブログランキング・にほんブログ村へ ←この記事が気に入ったらクリックしてください

Henry Cowへの道 / In Praise of Learning

2007-04-12 01:55:30 | Henry Cow
まったく、なんでいまごろ30年も前のアルバムにはまっているんだろう、と思うほど、ここのところHenry Cow漬けになっています。


1.War(戦争) Moore/Blegvad
2.Living in the Heart of the Beast(野獣の心に棲みつき) Hodgkinson
3.Beginning: The Long March(序曲: 長い3月 長い行進) H.cow/S.Happy
4.Beautyful as the Moon - Terrible as an Army with Banners(月のように美しく、軍旗はためく軍隊のように恐ろしく) Frith/Cutler
5.Morning Star(明けの明星 ヴィーナス) H.cow/S.Happy

靴下三部作の3作目です。
このアルバム、いくつかの聞き所があると思います。
そのひとつが、超アバンギャルド・ポップなSlapp Happyと合体したHenry Cowの方向性。

まず、メンバーを見てみると・・・
Anthony Moore: Piano,Electrics & Tapework
Dagmar Krause: Voice
Tim Hodgkinson: Organ,Clarinet,Piano
John Greaves: Bass,Piano
Fred Frith: Guiter,Violin,Xylophone,Piano
Cris Cutler: Drums,Radio
Lindsay Cooper: Bassoon,Oboe
Peter Blegvad: Guiter,Voice & Clarinet

guest
Geff Leigh: Soprano Sax
Mongezi Feza: Trumpet
Phil Becque: Oscillator

メンバー多すぎます。
そりゃ、2つのバンドが合体したのだからしかたありません。

前作、無DesperateStraightsは、どちらかというとSlapp HappyのバックをHenry Cowが勤める、といった感じの曲が聞かれました。
が、このアルバムでは、スラップハッピー風の曲は、最初の1曲のみ。後はHenry Cowらしい曲になっています。

「Henry Cowらしい」といっても、初期のLegendやUnrestに比べて、おとが随分洗練されています。そして、深みがあります。
音楽を、浴練り上げるという方法論は、Slapp Happyが合流する事によってもたらされた、よい方向への変化ではないかと思います。

そして、なんといってもHenry Cowにとっての最大の収穫。もっとも大きなインパクトは、歌姫ダグマー・クラウゼを獲得した事ではないかと思います。

ダグマー・クラウゼの歌声は、あるときは人間離れした、スコーンと突き抜けるような透明感のある歌声。またあるときは、ドスのきいただみ声。でもなんといっても、その歌いぶりのドラマチックな事。曲が先か、歌声が先か、どちらから歩み寄ったのか、この時期のHenry Cowの音楽と、クラウゼ嬢のうたが、ぴったりと一致して新しいHenry Cowの世界を作り上げています。

1曲目「戦争」。戦争を生み出した女神(?)のストーリー。「満たされぬ心が、暴力を生み出す」と、ドイツ語訛り(というか、クラウゼはドイツ人だから)巻き舌で、まるでポップソングのように(まるで、SlappHappyのように)歌うかと思えば、
2曲目「野獣の心に棲みつき」では、ブレヒトの人民オペラかくありきと思わせるような、ドラマチックな歌唱力を見せつけ、
名曲「月のように美しく、軍旗はためく軍隊のように恐ろしく」では、これまたドラマチックに謳い上げているのですが、より神話的な透き通った歌声を聞かせてくれます。
ダグマー・クラウゼの歌を獲得した事により、Henry Cowは音楽的な幅と方向性を明確にすることができたのではないでしょうか。
滔々とうたうダグマークラウゼの歌声を聞くたびに、このアルバムが再発されてほんとうに良かったと思います。

もう一つのポイントは、戦うバンドとしてのHenry Cow。
Henry Cowのデビュー作は、当時の新興レーベル・ヴァージンからリリースされていました。
その後、ヴァージンレコードが、コマーシャリズムに向かい、売れるレコードしかリリースしないようになり、Henry Cowの靴下レコードは廃盤になってしまったそうです。
アルバムを作成したミュージシャン本人の意思が通じず、レコードが廃盤に成ってしまう事に疑問を感じたHenry Cowは、ミュージシャン自らの手でレコード販売をする方法を模索して、Recommendedレコードを設立した。と解説に書いてありました。

1stアルバムが「伝承」
2ndが「不安」
3rdがSlapp Happyとの合作「悲しみ一直線」
そして4作目が、この「学ぶ事への称賛」
ラストアルバムにあたる5枚目「Western Culture」では、西洋文明への批判。アルバムジャケットには、槌と鎌。
Henry Cowじたい、もともとが左翼思想に傾倒した学生バンドとして発生した、という話も聞いた事があります。
歌詞の内容を見ても、Henry Cowの向かおうとするところが、簡単に見てとる事ができます。
その傾向がもっとも分かりやすい形で表現されているのは、Western Cultureだと思います。西洋の都市文明にたいする批判的な未来像。そして、あのジャケット。

でも、Western Cultureは、言葉をもちません(体調をくずしたダグマーが脱退後に作成されています)
本作では、ダグマー・クラウゼという類いまれなる声の持ち主による、言葉の表現によって、Henry Cowの主張がもっとも説得力をもって表現されていると思います。

とは、いうものの・・・
クリス・カトラーは音楽そのものが政治的なメッセージだと言ったとか。
アルバムの裏ジャケットには「芸術は鏡ではない、それは槌である」というジョン=グリアソン(左翼系映画監督だそうです)の言葉。
なんとなく、わかる気はするのですが、でも、音楽をそこまで追いつめなくても良いんじゃないか、と思うわけです。
音楽って、もちろん、そういう主張もできるツールではあるのですが、だからといって、偏狭的になる必要もないのではないか、そう感じてしまいます。

特に、このアルバムの素晴らしい曲を聞いていると、henry Cow自体「自分たちは、こうあるべきだ」という「べき論」に縛られてしまったのではないかと思います。
もっと、自由に、伸び伸びと、ダグマー・クラウゼ+Henry Cowの音楽を聴きたかったな、って思います。




----
にほんブログ村へ登録しました。
ブログランキング・にほんブログ村へ ←この記事が気に入ったらクリックしてください

Henry Cowへの道 / Western Cultuer

2007-03-26 01:52:18 | Henry Cow
まだ咳は出ますが、熱は下がりました。
明日から、また仕事です。
みなさん、いろいろありがとうございました。

ということで、Henry Cowへの道を進む事にします。
----

Western Culture
RIOを組織し、Recommended Recordsを創立した武闘派ロックバンド、ヘンリー・カウのラストアルバムです。
前作、Concertsのあと、紆余曲折をくぐり抜け、その間に
 ベースの、ジョン・グリーブスか抜け(National Health加入)
 後がまに決まった女性ベーシスト、ジョージー・ボーンも脱退
 カトラー、フリス、クラウゼのプロジェクト、アート・ベアーズが活動開始
そして、とうとう解散が決まったヘンリー・カウが再び集って制作したのがこのアルバム。
LP時代のA面がホジキンソンの曲。History and Prospects、B面はリンゼイ・クーパーの曲。こちらにはDay by Dayというタイトルが付けられています。
レコメンデッド・レコードから再発されたこのアルバムでは、1分半ほどのブランクトラックの後に、ボーナストラックが3曲追加されています。



History and Prospects
 Industry
 Decay of Cities
 On the Raft
Day by Day
 Falling Away
 Coretels Tale
 Look Back
 1/2 the Sky

Additional Tracks
 Viva Pa Ubu
 Look Back(alt)
 Slice

Tim Hodgkinson:
 Organ,Alto Sax,Clarinet,Hawaiian Guiter
Lindsay Cooper:
 Bassoon,Oboe,Soprano Sax,Soparano Recorder
Fread Frith:
 Electric and Acoustic Guiter,Bass,BanjomSoprano Sax
Chris Cutrer:
 Drums,Electric Drums,Noise,Piano,Trumpet
with
Anne Marie:
 Trombone,Violine
Irene Schweizer:
 Piaano
Georgie Born:
 Bass

ベーシストが脱退した事により、なんとも不思議なバンド編成となっています。
室内楽で使用するような楽器編成、所謂チェンバーロックと呼ばれるジャンルが、ここに始まった事になります。

ヘンリーカウというと、前作のConcertsで聞かれたようなインプロビゼイションをイメージしがちですが、このアルバムでは、インプロは無し。全てが作曲された音とされています。
フレッド・フリスのプリペアード・ギターのような音が聞かれますが、こういう偶然性を前提とした音についても、作曲された作品の中に織り込み済み、という事でしょうか。

実は、最初に聞いたヘンリーカウはこの作品。
LP時代、そんなに聞き込んだ、という記憶は無かったのですが、今回iPodで聞いてみると、作曲されたカオスというか、音の渦巻きに取り込まれ、あっさりと嵌りきってしまいました。
LPのA面、ティム・ホジキンソンの曲は、それこそ音のラビリンス。アメリカに比べて、衰退の一途をたどるEC結成前の西ヨーロッパ。曲のタイトルを見ながら、そんな衰退していく都市型文明の行く末を思い巡らしながら聞くもよし。あるいは、純粋に、楽器編成のすごみに聞き入るも良し。ただただ、ひたすらに、圧倒されてしまう、そんな音になっています。
方やリンぜー・クーパーのB面。バスーンとオーボエというどちらかというと牧歌的な響きの楽器が中心となっているためか、ホジキンソンの曲と比べるとどことなくユーモアを感じる事ができます。
どちらかというと、リンゼイ・クーパーの曲の方が息苦しくなく、好きです。

さて、先にも書きましたが、武闘派バントのヘンリー・カウ。
研ぎ澄まされたインプロビゼーションを繰り広げているうちには、メンバー間の確執というものも少なからずある事でしょう。
このアルバムに先立って録音したアルバムがあったのですが、ホジキンソンの「これは、ヘンリー・カウらしくない」という判断によって、お蔵入り。その後アートベアーズの1stアルバムとして発表されたという有名な逸話があります。
こんな話を聞いていたので、カウも内部の圧力が高まって、空中分解した、とばかり思っていました。

しかし、今回再発モノのライナーを読むと、リマスタリングにはカウのメンバーが参加して行ったとの事。
またyouTubeで、こんな映像を見つけました。
cutler, frith & hodgkinson
カトラーとフリスとホジキンソンによる2006年のパフォーマンスです。
こういう話や映像を見ると、実は中が悪くなって解散したのではないような気がしてきます。
今でも、しっかりとヘンリー・カウというバンドの存在を、画メンバーが意識しているような気がします。
ただ、メンバーの向いている方向性が、ヘンリー・カウとは異なっているため、ただ集って「これはヘンリー・カウではない」という音楽を作らないため、ヘンリー・かウとしての音楽ができるようになるため、今はメンバーが誰もいない、そういう空白の時を過ごしているのではないか。そんな気がします。
メンバー各自が、自分たちの仕事を終えて、「どれ、またカウのメンバーとやってみようか」と思うまで、ヘンリー・カウはメンバー不在のバンドとしてあり続ける。なんだかもそんな気がします。
とりあえず、ラストアルバムなので、なにやら結論めいた事を述べてみました。


追記:
次に予定しているアルバムが、これまた嵌っていますので、次回「ヘンリーカウへの道」まで、また間が空くと思います。





----
にほんブログ村へ登録しました。
ブログランキング・にほんブログ村へ ←この記事が気に入ったらクリックしてください

Henry Cowへの道 / Concerts

2007-03-13 02:24:07 | Henry Cow
まずは、昨日の訂正から。

WikipediaのConcersのページにあるように、このアルバムは、北欧でのコンサートの模様「も」収めたアルバムでした。
詳しくは、wikipediaを参照してください。


それでは、きのうの続き・・・

この頃のヘンリーカウの魅力の一つは、なんといってもダグマー・クラウゼのボーカルでしょう。
ケイト・ブッシュより、もっと強烈に突き抜けたような高音。
そして迫力満点に迫る、演劇のような歌いかた。
最初に聞いたときから、参っていました。
Concertsの幕開けは、そんなクラウゼが歌う、これまた名曲
 Beautiful as the Moon - Terrible as an Army with Banners

1曲目の「Beautiful as・・・」から5曲目の「Beautiful as the Moon (Reprise)」までがメドレーで綴られています。
ここで、カウのもう一つの魅力。もう一人の女性メンバーであるリンゼイ・クーパーのバスーンやオオボエとティム・ホジキンソンによる変則的な管楽器のアンサンブル。カトラーの金属的なドラム。ジョン・グリーブスの弾くクリス・スクワイアばりのグリグリベース。
そして、ノイズを多用するフリスのギター。このロック離れした楽器編成による、緻密なアンサンブルとノイジーなフリーインプロビゼイション。時にノイズになり、時にかっちりした演奏になり、次の瞬間またぶっ飛ぶ。でもその全てがまるで事前に予定されていたように、メンバーが追いついてくる。
20分を越えるこのメドレーだけでも、ヘンリーカウの様々な魅力に触れる事ができます。
そして、このメドレーで、完全にカウにはまりました。

続く、Bad AlchemyとLittle Red Riding Hood Hits the Roadでは、クラウゼとロバート・ワイアットのデュエットを楽しむ事ができます。
ワイアットの名盤ロックボトムにも、カウのメンバーが参加していますが、このアルバムで聞かれるLittle Red Riding Hood Hits the Road、スピード感が最高です。なんだか、普通にこういう演奏するヘンリー・かウというのもちょっと変な感じがしてしまいます。まともにロックできるんですね。

続くRuinsは再びフリスの曲。
フリスのへんてこギターが魅力のこの曲。以前書いたようにこれを聞くためにUnrestを探し求めました。
なんともダイナミックなリズムと、曲の展開。お見事というしかありません。

2枚組CDのうち、1曲目から8曲目のRuinsまで、とても聞きやすいものではありませんが、ここのところ繰り返し聞いています。聞くたびに新しい発見があります。

が、やはり、ポップな曲ではないので、このあたりまで聞くと疲れてしまいます。
9曲目Groningenと2枚目のCDは、どちらかというと混沌とした曲なので、なかなか聞き進められませんでした。
でも、この8曲で十分満足していたので、このアルバムかったのは大正解だと思いました。
というか、折角だからリマスター買っておけばよかったと後悔しています。

でも、GroningenとGroningen Againだけを聞いてみたら、これがまたなかなか良い。
誤解されることを覚悟で書きますが、Groningen Againの混沌としたところは、クリムゾンのTalking Drumにちょっと通じるところがあります。
Talking Drumの混沌としたものが、ベクトルがぎゅっと同じ方向に揃って、太陽と戦慄パート2になだれ込む、その直前のような緊張感がなんとも言えません。

ということで、現在Concertsの1枚目のCDで満足しています。

万人向けではありません。
Henry Cowファンの人には、必聴版・・・今更言わなくてもファンの人は聞いてますよね。



----
にほんブログ村へ登録しました。
ブログランキング・にほんブログ村へ ←この記事が気に入ったらクリックしてください




Henry Cowへの道 / Concerts

2007-03-12 01:26:49 | Henry Cow
まだ、ちゃんと聞き込めていないんですが、Henry Cowへの道を始めてしまいます。
どこにたどり着くか、かなり不安。



Henry Cowの結成は1968年。
1stアルバムが1973年の発売なので、それまでに5年近い活動があった事になります。
70年代のプログレブームに乗って活動を始めたのかと思っていましたが、意外に古い時期の結成で驚きました。

discographyに基づいてHenry Cow暦を作ってみました。

1972
SH: Sort of
PF: Obscured By Clouds
KC: Earthbound
TD: Zeit

1973

HC: Leg End
SH: Acnalbasac Noom
PF: Dark ide of the Moon
KC: Larks' Tongues In Aspic
MO: Tubular Bells
TD: Atem

1974

HC: Unrest
SH: Slapp Happy
KC: Starless And Bible Black
KC: Red
MO: Hergest Ridge
TD: Phaedra

1975

HC: Desperate Straights
HC: In Praise of Learning

PF: Wish You were here
KC: USA
MO: Ommadawn
TD: Rubycon
TD: Ricochet

1976

HC: Concerts
TD: Stratosfear

1977
PF: Animals

1978
MO: Incantations
TD: Encore

1979

HC: Western Culture
PF: The Wall
MO: Platinum
TD: Force Majeure

 HC: Henry Cow
 SH: Slapp Happy
 PF: Pink Floyd
 KC: King Crimson
 TD: Tangerine Dreadm
 MO: Mike Oldfield

1973年に、新興ヴァージンレコードからアルバムデビュー。
2ndアルバムUnrestを発表後に、SlappHappyとの共作Desperate Straightsを発表。
その後あっという間にスラハピを取り込んで4枚目のアルバムIn Praise of Learningを発表。

その後、Slapp HappyのAnthony MooreとPeter Blegvadが脱退。Slapp Happyの歌姫Dagmar Krauseのみが、Henry Cowに留まりました。
このConcertsは、この頃のノルウェーでのライブ。

その後、ヴァージンレコードがカンタベリー路線を辞めて、よりポップな音楽に傾倒していく中でHenry Cowは、既存のロックビジネスから独立した活動を行っているバンドを集めたRock In Opposisition(RIO)の活動を始め、RIOに賛同したバンドのレコードを販売するためのRecommended Records(ReR)を創立します。Henry CowのラストアルバムWestern Cultureは、Recommended Recordsを通じて販売されました。

さて、前置きが長くなりましたが、このConcerts。
Henry Cowの作品はリミックスされて、うれしいことに国内版も発売されています。
今回購入したものは、リミックス前のアルバム。しかも中古。
「久しぶりにちょっと聞いてみようかな」っという軽い気持ちで買ったのですが、これがすっかり嵌ってしまいました。
リミックスバントはちょっと違った、懐かしいジャケット。
音は、いまいちでした。リミックス版は、もっと良い音になっているのでしょうか・・・
コンサートの合間に、地元の雑誌のインタビューが載っているブックレットが付いているのですが、輸入盤なので当然英語。
国内版は、このブックレットも翻訳されているそうで、ちょっと悔しい。
拾い読みしてみたのですが、フレッド・フリスはフリージャズを聴いていたのか、とか、ちょっと面白そうな事が書いてありそうです。

というところで、長くなってしまったので、続きます。



Disc 1
1. Beautiful as the Moon, Terrible as an Army with Banners
2. Nirvana for Mice
3. Ottawa Song
4. Gloria Gloom
5. Beautiful as the Moon (Reprise)
6. Bad Alchemy
7. Little Red Riding Hood Hits the Road
8. Ruins
9. Groningen
10. Groningen Again

Disk 2
1. Oslo
2. Off the Map
3. Cafe Royal
4. Keeping Warm in Winter/Sweet Heart of Mine
5. Udine

Personnel
 Lindsay Cooper: Bassoon, flute, oboe, recorder, piano
 Chris Cutler: Drums, piano
 Dagmar Krause: Voice, piano
 Fred Frith: Guitar, piano, violin, xylophone
 John Greaves: Bass guitar, voice, celeste, piano
 Tim Hodgkinson: Organ, clarinet, alto saxophone
 Robert Wyatt: Vocals ("Bad Alchemy" and "Little Red Riding Hood Hits the Road")

クリス・カトラー公式サイト
英Wikipedia:
Henry Cow
Concerts
ローカスレコード




----
にほんブログ村へ登録しました。
ブログランキング・にほんブログ村へ ←この記事が気に入ったらクリックしてください

牛の道

2007-02-24 14:53:24 | Henry Cow
牛といえば「原子心母」、そして、Henry Cowですね。

Henry Cow。高校の頃だったか、当時のニュー・ミュージック・マガジンとかロッキングオンとかに、あの靴下ジャケットの広告が載っていて興味を持ちました。
当時、マッチング・モールだのゴングだのという集団即興音楽に興味持っていたので、なんとなくHenry Cowに手を出すタイミングを見計らっていました。

でもって、最初に買ったのがWestern Culture。

LPをターンテーブルに載せて針を落した瞬間に鳴り響いた音にはびっくりしました。
今まで聞いた事も無いような硬い音がビシビシと飛んできた、そんな感じがしました。
これがロックなのか? 音楽なのか?
理解の枠組みをはるかに越えた音楽のような気がしました。

理解を越えたものに出くわしたときにとる方法は2つ。あきらめるか、何者か正体を見極めようとする。で、HenryCowについては後者の道を進みました。

今のようにインターネットでいろいろな情報にたどり着ける時代ではなかったので、フールズメイトだのマーキームーンだのという雑誌を頼りにHenry Cowならびにレコメン系の情報をあさっていました。

すると「Ruins」という曲が名曲だとの情報。
早速、Ruinsの収録されているUnrestを探し求めましたが、当時としては高価な値段がつけられていました。といっても、マニアの方から見れば決してべらぼうに高い値段ではなかったのでしょうが、入門者にはやはり高価。

それから、あちこちの輸入盤屋やら中古屋を回ってようやく手に入れたUnrest。Henry Cowの2ndアルバムに当たります。

この後、スラップハッピーとの接近/取り込みを行うので、初期のヘンリー・カウとしての最後の姿。即興演奏度はWestern Cultureより強く、ますます理解不能度は増すばかり。

最近、インターネットラジオでこのアルバムの中の一曲「Half asleep; Half awake」を耳にしました。これが意外と良かったので、もう一度このアルバム聞き直してみたいなと思っています。

その後しばらくヘンリー・カウからは遠ざかっていました。しかし、時々ブログに登場するY君からスラップ・ハッピーのアルバムをかりて聞いているうちに、ヘンリー・カウ/スラップ・ハッピーの合作をききたくなりました。

と、ちょうど良いタイミングでヴァージンレコードからDesperate Straightsの再発。邦題「悲しみのヨーロッパ」。なんだかサンタナみたいですが、向こうは「哀愁のヨーロッパ」。中身も全然違います。

ヘンリー・カウに本当に驚いたのは、このアルバム。
アバンギャルド即興集団のカウとアバンギャルドポップバンドのスラハピ。合体してどうなる事かと思っていたのですが、これがとってもよい結果を生み出したようです。

それにしても邦題の「悲しみのヨーロッパ」。よくぞこのタイトルを選んだと思いました。アルバムの内容とバッチリ一致しています。
EU結成前の経済的に勢いの衰えかけたヨーロッパ。長い歴史を持ったヨーロッパの街角を、沈み行く夕陽が照らしているような、まもなくやって来る夜を思わせるような、そんな内容のアルバムに仕上がっていました。

スラップハッピーの歌姫、ダグマー・クラウゼの堅く突き刺さるようなボーカル。あるはずも無い記憶なのに昔日のヨーロッパの街角で、旅の楽団の演奏を聴いているような、そんな懐かしさを覚える音でした。

このアルバムを聞いて、ヘンリー・カウに嵌ったのかもしれません。

それから何年か後に、ロックを聞き始めた友人が、「なんでもいいから、ロックのテープを作ってくれ」とカセットテープを渡してくれました。たぶん、ビートルズとか、パーブルとか、そういうのを期待していたのでしょう。
確か、A面の1曲目はヘンリー・カウの「History & Prospect」(Western CultureのA面1曲目)。それから「悲しみのヨーロッパ」も当然録音しました。あとは、クリムゾン、ゴング、ソフトマシーンなんかを混ぜたような・・・。
でき上がったテープを彼に渡したのですが、あまり喜んでもらえませんでした。



ヘンリー・カウといえば、こんなアルバムも持っていました。

Greasy Truckers Live At Dingwells Dance Hall

LP2枚組で、A面がキャメル、B面がヘンリー・カウ、C面がグローバル・ビレッジ・トラッキング・カンパニー、D面がゴングの各ライブ。
ゴングのライブ目当てで買ったのですが、ゴングの場合気合いの乗り方で、アルバムの内容がとんでもないものだったりするので・・・。
キャメルが一緒に入っているのが不思議でしたが、意外にも(というとなんですが)キャメルのライブがなかなかよくて結構繰り返して聞いていました。

ヘンリー・カウのライブについては、また次回・・・

ところで、グローバル・ビレッジ・トラッキング・カンパニーって何者なんでしょう。
どなたか、ご存知でしょうか。





----
にほんブログ村へ登録しました。
ブログランキング・にほんブログ村へ ←この記事が気に入ったらクリックしてください