現行法令の下での一体化工法の試み-1・・・・確実な架構の木造建物をつくるために

2007-08-19 21:33:57 | 設計法

[タイトル変更:8月20日2.13AM]

 8月9・10日に、「木造住宅の住宅低寿命化傾向への対応策」の検討について若干触れた。
 その検討・対応策の一例として提案した「住居の質」「工法の質」確保策の概要を紹介したいと思う。乞うご意見!
  

「基本仕様」

1.敷地の立地条件
  戸建住宅とする場合は、建蔽率は5/10~6/10以下とする。
  建蔽率がこの数値を越えるときは、戸建てにこだわらない。

   註 (戸建て)住宅の質は、建物そのものではなく、
     建屋を含んだ敷地全体の質で考える必要がある。

2.建物の計画基準寸法
  メートル法と尺貫法との整合性を考慮し、1間=6尺6寸=1999.8㎜とする。

   註 関西間・京間の6尺5寸で十分だが、一般に進行中のメートル間との
     整合性を考慮し、この寸法とする。

3.建物規模(面積)
  柱間1間角(1コマ)を単位として、40コマ以上とする。

   註 多くの事例が「基準柱間×基準柱間」(1コマ)を単位にして
     40コマ(関東間で言うと40坪)以上であることによる。

4.敷地面積
   上記1)2)3)より、80~67コマ=319.9~267.95㎡以上とする。

   註 過去の事例では、一反=300坪≒1000㎡が屋敷の単位であったが
     現況にそぐわないため、ここでは建蔽率から逆算した。
     
 以上は、「住居の質」の確保のための要件。

 以下は、「工法の質」の確保のための要件。
 要は、現行法令の下で、どうすれば「一体化・立体化工法」のもつ特徴を具現化できるか、ということ(建築法令が日本の正統工法を正当に反映したものであったならば、こんなことに苦労する必要もないのだが・・)。

5.工法(次回以降、解説図を紹介予定)

   註 現存する建物の工法の様態を検討した結果、以下にまとめた。

  「軸組工法・真壁仕様」とし、基礎、材種、材寸、継手・仕口等は、
  以下を原則とする。

   註 法令も「真壁仕様」の推奨に転換しつつある。

  ア)基礎・地形(地業)
    「布基礎+束立て」方式を原則とする。
    傾斜地等の場合には、「礎石+土台+足固め」方式も検討する。
    布基礎の場合の床下通・換気口は、ネコ方式とする。
    アンカーボルトは架構の基礎からのずれ落ち防止と理解する。
    床下となる地面は、GL+60㎜以上とする。

     註 「礎石+土台、足固め」方式が床下の環境維持上最適だが、
       現行法令上やむを得ない。
       ただし、不同沈下対策は、布基礎でなくても可能のはずである。
     註 中越沖地震で、砂質地盤等では地盤そのものを改良しないかぎり、
       基礎の形式・形状では対応できないことが判明した。

  イ)使用木材
    現行市場流通品規格以外に新たな規格を設定する(別表)。
    柱寸法は、最低仕上り4.3寸角とする。

     註 現行規格は、現在でも関西間・京間地域では「間尺に合わない」。
       柱の最低寸法は、強度、見えがかり両面から、文化財等の事例に
       ならった(「日本の建築技術の展開」中でも触れた)。
       なお、現在、大径材が増えているため、良材を確保しやすい。

  ウ)構造計画
    
    過去に地震に際し健在であった文化財等の事例を参考にし、
    耐力壁、金物に頼らない。

   a 上屋+下屋方式とし、奥行2.5間×n間の本体:上屋を構成し、
     その二面以上に付加部分:下屋を追加、所要空間を確保する。
   b 屋根は瓦葺とし、下屋部は本体屋根の葺き下し、または段差を設ける。
     本体部分の屋根勾配は4.5/10以上とする。
     下屋部分は、本体部分の葺き下しの場合を除き4/10以上とする。

      註 町家を参考にし、前面道路からの視覚的な効果を考慮し、
        下屋部の屋根勾配を本体より緩くする。

   c 小屋梁は、入り側柱に「折置」で納める。

      註 「折置」方式に対して、法令は金物補強を要求していない。

   d 二層の場合、本体=上屋の入り側柱を@1~2間で通し柱とする。
     床梁は通し柱に「差口(竿シャチ継)」で納める。
     各層の間仕切位置を一致させる。

      註 「差口」については、法令には金物補強の規定はない。

   e 横架材の長さは、最大スパン2.5間=16尺5寸=4999.5㎜程度とし、
     継手は柱位置に設け、柱間に継手を設ける方法は採らない。

      註 材長を柱間寸法で加工でき、施工上も利点。

   f 一階にあっては、内法レベルに「差鴨居」を設け、
     二階では、腰部(開口部敷居または手摺位置)を「差物」とする。

      註 差鴨居、差物の架構上の効用を活用する。     

   g 一階床は大引上に板(厚5分スギ板)を流し、根太を敷き並べ、
     空隙を設けた上、床板を張る。
     保温材を設置する場合は、この空隙に敷く。
     二階床は、小梁上に床板(厚1寸)直張り、下面表し。
   h 屋根下地は、垂木(表し)上に地板(室内側表し)を張り、
     枕木を介し野垂木を流し(軒先部は表し)、野地板を張る。
     軒先部で二重垂木の間から吸気し、上部で排気する(上昇気流)。
     保温材を設置する場合は、この空隙の枕木間に敷きこむ。
   i 造作を含め、上向き作業を要する工程は、極力避ける。

      註 かつての工法では、上向きの作業を極力避けている。

   j 法令の要求する耐力壁は、面材耐力壁の規定を援用する。

      註 法令の規定をクリアするための仕様である。
        面材の下地としては、受け材方式、貫方式を適宜使用する。
        水平面の剛性は、架構そのものと床面、屋根面に張る板に求め、
        火打ち材を用いない。

  エ)継手・仕口等

    下記条件を確保できる継手・仕口を採用する。
    a 簡単な刻みで加工できる(機械加工ができる)
    b 汎用性に富む(各所に応用可能)
    c 強度的に安定している
    d 部材を表しにできる(金物補強を要しない)
    e 分解・解体が可能である

   概要(解説図参照:模型写真・分解図で各部位ごとに解説:次回以降)
   1)土 台  
     入り側柱の要所ならびに各隅柱を通し柱とする。
     通し柱~通し柱の土台を一本ものとし、土台に継手を設けない。
     通し柱および隅柱は土台に「蟻落し」で納める。

      註 土台の継手の省略可能。
        「蟻落し」箇所への金物使用規定は法令には見えない。
        ただし確認申請審査員の見解は未確認(次回「参考」参照)。
           
   2)土台と柱
     通し柱、隅柱以外は、土台に「長枘差し・込み栓打ち」とする。

      註 筋かいを用いないかぎり、法令上補強不要。

   3)横架材  
     床梁、小屋梁とも、原則として継手を設けない。 
     桁、母屋は、柱直上で「目違い付き・雇い竿シャチ栓継ぎ」で継ぐ。 

      註 次回、図で説明

   4)横架材と柱
     管柱は、根、頭とも「長枘差し・込み栓打ち」とする。
     通し柱への胴差、床梁、差鴨居、窓台等は「雇い竿・シャチ栓継ぎ」。
     竿は、原則として上小根とする(作業性よく、下面を表しにできる)。
     小屋梁は、柱の頭枘を「重枘」として折置で納め、
     桁は「渡り顎」で梁に架け、頭枘の「重枘」で固定する。

      註 「渡り顎」については、法令は金物補強を要求していない。

  オ)仕上げ、造作等
    壁 
     原則として内外とも真壁納め、塗壁仕上げ(漆喰など)。
     外部は、真壁仕上げの上、外壁下部(土台~一階内法下)に
     大壁(縦羽目・横羽目板壁、煉瓦積壁、大谷石積壁等)を追加。

      註 塗り壁下地は、原則として木ずり直塗り、石膏ラスボード。
        壁量が不足の場合は塗壁下地用構造用合板等を適宜使用。
        羽目板壁の場合は、取替え可能な取付け方法による。
    屋根
     原則として、瓦葺(53A型いぶし瓦)とし、軒の出を極力確保する。
     霧除け庇等は、金属板葺き。
    室内床
     原則として、一階はヒノキ厚6分縁甲板、捨床はスギ板厚4分張り。
     二階はスギ厚1寸板張り。
     原則として、畳、カーペット等は、この上に敷く。
    天井
     原則として、一階は踏み天井、二階は地板表し。
     天井を設ける場合は、「天井パネル」を取付ける方法とする。
    開口部
     外部は原則として外付けアルミサッシ(引違い)とする。
     柱間に木製建具(明り障子またはガラス戸)を設ける。
      註 サッシ外部枠回りには木製額縁を設ける。 
     内部建具は木製とする。
  カ)設備
    給排水設備の配管類は、保守点検、交換可能な位置に設ける。
    電気設備幹線は、軒裏を利用し、壁内で分岐(配管を設ける)。  
     
6.必要材寸表(特注材)

材 料 ヒノキ、スギ

正角材 挽割寸法(cm) 仕上り寸法(寸)   長さ(cm)
    16.5×16.5 5.3×5.3 350.0 450.0 550.0 650.0
    13.5×13.5 4.3×4.3
    12.0×12.0 3.8×3.8
    10.5×10.5 3.3×3.3

平角材 24.5×13.5 8.0×4.3 450.0 550.0
    21.5×13.5 7.0×4.3
18.5×13.5 6.0×4.3
    15.5×13.5  5.0×4.3

    註 高さを最大仕上り8寸とする。これ以上の寸面を必要なときは、
      二材を合成して対応する。
       例 上:8×4.3寸+[3.5×1.6寸]+下:4.3寸角
         0.8寸角(または0.8寸径)ダボ@16.5寸
      横架材の見えがかりを小さく押えるための策(9.0寸以上になると
      横架材だけが目立ちすぎる)。

平割材 13.5×5.0 4.2×1.6 450.0
    11.0×5.0   3.5×1.6
8.0×5.0 2.5×1.6
5.5×4.5   1.8×1.3

板 材 15.5×3.3   5.0×1.0 450.0 
15.5×2.0 5.0×0.6
15.5×1.8 5.0×0.5
15.5×1.5 5.0×0.4
13.0×3.3 4.0×1.0
13.0×2.0 4.0×0.6
13.0×1.8 4.0×0.5
13.0×1.5 4.0×0.4

その他は市場流通品による。

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