温度差・・・・《地域性》のいろいろ

2007-08-09 12:05:02 | 建物づくり一般
 公的な依頼を受け、ある公的な団体で、地域産の木材利用振興のための木造住宅建設プロジェクトにここしばらくかかわってきた。この依頼には、最近の木造建物が低寿命化していることへの対応が、大きな理由として挙げられていた。
 その「対応策」として何を考えたかを含め、詳しい内容は、おって紹介・解説することとして、 昨日開かれた中間報告の会議の席上で遭った「驚くべき事態!」を紹介しよう。

 このプロジェクトには、地域の木材業の組合がかかわっている。地域産の木材の利用を促進したい、との考えとのこと。
 昨日の会議のため、今回、プロジェクトとして提案した設計例について、当方で部材ごとの「木材調書」を作成し、町場で実際に仕事をしている大工さんと、この木材業組合の双方に、積算書の作成をお願いした。この提案の木材費がどの程度になるか、一般的事例と比較するためである。
 「驚くべき事態!」とは、寄せられたその結果のことだ。

 提案した設計例は、瓦葺き二階建て、基本的に内外真壁仕様(外回りは内法下を、真壁の上に保護用に板壁張り大壁)。
 1間=6尺6寸≒2000㎜の設計で総計40コマ(1階:28コマ、2階:12コマ)、つまり、1間=6尺で計算すると40坪の大きさである。
 そして、主要部材の総木材量(壁下地材、内外装材を除く)は、約35㎥、内0.6㎥がヒノキ、残りはスギ。

 私の概算では300万程度。
 双方から出た見積もり金額の「項目別比較表」を作成して資料として配付した。
 大工さんからの積算書は242万。妥当だし、むしろ安いくらい。大工さんによれば、これであたりまえとのこと。
 ところがである。木材業組合の積算は、1018万円也。大工さんの4倍強である。材木店(小売店)価格との注釈があった。

 私は言った、「こんな価格なら、地域の材にこだわる必要はない。隣接地域から、同質の材が、これよりずっと安く手に入る」と。
 すると、出席していた組合の代表が、「失礼なことを言うな、そんなことを聞くために出席したのではない、退席する」と言う。
 私は言った。「それは違う。こんな値を入れる方がよほど失礼だ。大工さんの見積もりがおかしいとでも言うのか。これでできるという大工さんに対して失礼ではないか。地域産材の活用を本当に願っているのか?」

 彼は、退席せず、会議の進行をずっと聞いていた。そして、しばらくしてから言った。「この『比較表』はなかったことにしてくれ、引っ込めてくれ」、と。
 引っ込めたところで、事実は事実。

 私は思った。この地域の木材業者は、もちろん全部ではないだろうが、胡坐をかいて商売しているのだ、と。それで商売できているのだ。高く売れればそれに越したことなない、という腹積もりなのだろう。かつての近江商人のツメのアカでも煎じて飲ませたくなる。
 これが他の地域ではまったくちがう。青森にしろ岩手、秋田にしろ、関東甲信越の神奈川、栃木、群馬、長野・・・関西、中国、四国、九州・・皆本気だ。

 どうやらこれは、この地域の「精神風土」が現われたにすぎないらしい。いろんな口実、大義名分を立てては商売に利用しようとする人たちが目に付く。この地域のNPOには、商売のためにNPOを利用している例が結構多い。
 もちろん、みんなではない。真っ当な人たちが、他地域よりも少数派、だということ。

 いささか呆れた「事件」ではあった。

   ここ数日ブログの書込みをしなかったのは、
  会議の用意の為に時間がなかったから・・・。

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