オフブロードウェイからはじまり韓国、日本でも長年に渡り上演されているミュージカル「スリル・ミー」。アジア三か国目となる中国版「スリル・ミー」が初めて上海で上演されたのは2016年です。上海初演から6年が経ちますが、現在上海には二種類の「スリル・ミー」があります。一つは中型の劇場で上演する通常の「スリル・ミー」で、もう一つは常設専用劇場で上演する「イマーシブ式スリル・ミー」です。
イマーシブ式ミュージカル中国版「スリル・ミー」(中国語タイトル:環境式駐演音楽劇『危険遊戯』)
劇場:星空間66号・Salute小劇場(上海「大世界」4階) 座席数約140席 公演時間約120分。運営:上海致敬文化伝播有限公司
2021年9月20日から2022年9月現在まで長期上演中。2022年3月中旬からロックダウンの影響で休演、7月から公演再開。
キャスト:2022年9月現在、リチャード(彼)、ネイサン(私)ともに7名ずつキャスティングされており日替わりキャストとなっています。但し二人芝居なので、組合せはある程度固定されています。
主な組合せ:リチャード(彼)×ネイサン(私)
鍾嘉誠×毛二、鍾嘉誠×夏陽、楊皓晨×毛二、蔡淇×瞿芸、徐昊×李蘇霖、白翰祥×張旭晨など。
上海イマーシブ式「スリル・ミー」は舞台の周囲を座席がぐるりと取り囲むような配置で、舞台上に二つの大きな柱があります。客席の通路や入口を劇中で使うなど劇場の環境を活かした演出があり、本来の「スリル・ミー」よりも長い約120分の公演となっています。
チケット価格:赤:399元(約8000円)、青:299元(約6000円)、黄色:199元(約4000円) アプリでチケットを購入する際に、座席を選ぶことができます。
上海イマーシブ式「スリル・ミー」のキャストは若いです。
古株キャストでも27歳、28歳で、新人キャストの場合、大学を卒業したばかりの22歳の俳優が演じています。
キャストの多くは上海戯劇学院、上海音楽学院などの有名芸術大学で声楽や演劇、ミュージカルを学んでいます。この種の芸術大学に入学すること自体が非常に難しく、厳しい審査をくぐり抜けているため、歌唱力、発声、滑舌、演技などの基本レベルが高く、ビジュアル、スタイルもよいです。
「スリル・ミー」の主人公2人は、物語の中では19歳の大学生です。上海版「スリル・ミー」は俳優が若いので普通に大学生に見えます。
観客はリピーターが多く、しかも客席から舞台が非常に近いので、ほんの少しのミスやアクシデントでも観客が即反応し、生温かい笑いが漏れてしまうこともありました。日本版「スリル・ミー」の宣伝で言われるような「息をもつかせぬ究極の100分間」という雰囲気ではないのですが、総体的にいうと観客のマナーは悪くありません。上海には上海の作法がある、といえると思います。
リチャード(彼):鐘嘉誠×ネイサン(私):夏陽の組み合わせを観ました。
鐘嘉誠(1997年7月20日生まれ)は「スリル・ミー」古株キャストで、はっきりした顔立ちの美形です。鐘嘉誠が出演する回はチケットがよく売れています。ネイサンを演じた夏陽は2000年9月29日生まれ、もうすぐ22歳の若手ですが、歌と芝居に芯があって非常によかったです。
アンコールは撮影可能ですが、アンコールの時間はやや短く2~3分しかありません。
夜公演は19:30開演で、21:30に終わりました。終演後、多くの観客が出待ちをしていました。上海イマーシブ式「スリル・ミー」の常設劇場である「星空間66号・Salute小劇場」は「大世界」という1917年に建設された歴史ある建物の4階にあります。「大世界」は大型室内遊戯場として開園しましたが、改造、休業を経て、現在では複数のステージ・劇場が入居する独特の施設となっています。
「大世界」上海市黄浦区西蔵南路と延安路の交差点
「大世界」の内部は吹き抜けになっており、ステージ付きのビアガーデンのようになっています。
現在「大世界」の4階には8つの常設劇場が設置されています。「スリル・ミー」(危険遊戯)の常設劇場は一番奥にあります。
「大世界」は非常に大きな建物です。舞台終演後、出演者は「大世界」の裏口から出てきます。裏口の周りには出待ちをするファンが50名ほど集まっていました。
「スリル・ミー」の出演者の2人が出てきたのは終演から約30分後、22時頃でした。2人が一緒に裏口から出てきて、裏口から少し離れた壁際に移動します。壁際に立つ2人を取り囲むような状態で、屋外ファンミーティングのようなことが始まりました。
俳優2人は壁際に並んで立ち、マスクはつけていますが撮られてもいいようなおしゃれな私服を着ています。ここから15分弱の「歓談タイム」が始まります。主に俳優2人が話していますが、ファンが質問のような言葉を投げかけると、それに俳優が答えています。歓談の途中でファンから笑い声が上がりますが、いいポジションをゲットしないと、具体的に何を話しているかまでは聞こえません。
歓談が終わると、2人の俳優がばらけます。そして、ファンがチケットの半券を差し出すと、俳優がチケットにサインをしてくれます。基本的に希望者(10〜20名くらいいました)には全員サインをしていました。その後、手紙やお菓子、プレゼントを渡しているファンもいました。
俳優2人が個別に対応する時間が10分弱あり、それがひと段落すると、俳優2人が一緒に帰っていきました。「大世界」がある区画を越えて、大通りに2人が出たら、そこからは先はもう俳優に近付いたり、追いかけたり、写真を撮ったりしてはいけないという暗黙のルールがあるようです。
「スリル・ミー」はアンコールの撮影可能タイムが短いこと、「大世界」の敷地が広く建物沿いにファンが溜まる十分なスペースがあるため、終演後にこのようなファンサービスが行われているものと思われます。俳優2人はかなり仲が良さそうでした。
私が「スリル・ミー」を初めて観たのは2012年銀河劇場で韓国キャスト版を観ました。
その後、2016年7月に上海で「スリル・ミー」中国版の初演を観ています。しかし、そのときあまり良い印象を持ちませんでした。観客のマナーがあまりよくなかったのです。また、当時は作品や出演者に関する情報が少なく、単に芝居を観て帰るだけでした。
現在上海で上演されている「イマーシブ式スリル・ミー」は、公式がSNS(Weibo)に頻繁に情報をアップし、キャスト紹介、舞台裏、練習風景、キャストVlogなど様々な動画を流しています。また、定期的に新キャストを投入し、誕生日公演、特典付き公演などファンが通いたくなるイベントを公式が企画しています。公式がファンダムの形成に配慮した運営をしており、舞台の演出にもある程度反映されています。そのため、2016年に観た「スリル・ミー」とはまったく印象が異なる舞台になっています。2016年から2022年までの6年を経て、上海の商業ミュージカルは俳優の数やクオリティが上がっただけではなく、運営やサービスの面でも成長したといえます。
イマーシブ式ミュージカル中国版「スリル・ミー」(中国語タイトル:環境式駐演音楽劇『危険遊戯』)
劇場:星空間66号・Salute小劇場(上海「大世界」4階) 座席数約140席 公演時間約120分。運営:上海致敬文化伝播有限公司
2021年9月20日から2022年9月現在まで長期上演中。2022年3月中旬からロックダウンの影響で休演、7月から公演再開。
キャスト:2022年9月現在、リチャード(彼)、ネイサン(私)ともに7名ずつキャスティングされており日替わりキャストとなっています。但し二人芝居なので、組合せはある程度固定されています。
主な組合せ:リチャード(彼)×ネイサン(私)
鍾嘉誠×毛二、鍾嘉誠×夏陽、楊皓晨×毛二、蔡淇×瞿芸、徐昊×李蘇霖、白翰祥×張旭晨など。
上海イマーシブ式「スリル・ミー」は舞台の周囲を座席がぐるりと取り囲むような配置で、舞台上に二つの大きな柱があります。客席の通路や入口を劇中で使うなど劇場の環境を活かした演出があり、本来の「スリル・ミー」よりも長い約120分の公演となっています。
チケット価格:赤:399元(約8000円)、青:299元(約6000円)、黄色:199元(約4000円) アプリでチケットを購入する際に、座席を選ぶことができます。
上海イマーシブ式「スリル・ミー」のキャストは若いです。
古株キャストでも27歳、28歳で、新人キャストの場合、大学を卒業したばかりの22歳の俳優が演じています。
キャストの多くは上海戯劇学院、上海音楽学院などの有名芸術大学で声楽や演劇、ミュージカルを学んでいます。この種の芸術大学に入学すること自体が非常に難しく、厳しい審査をくぐり抜けているため、歌唱力、発声、滑舌、演技などの基本レベルが高く、ビジュアル、スタイルもよいです。
「スリル・ミー」の主人公2人は、物語の中では19歳の大学生です。上海版「スリル・ミー」は俳優が若いので普通に大学生に見えます。
観客はリピーターが多く、しかも客席から舞台が非常に近いので、ほんの少しのミスやアクシデントでも観客が即反応し、生温かい笑いが漏れてしまうこともありました。日本版「スリル・ミー」の宣伝で言われるような「息をもつかせぬ究極の100分間」という雰囲気ではないのですが、総体的にいうと観客のマナーは悪くありません。上海には上海の作法がある、といえると思います。
リチャード(彼):鐘嘉誠×ネイサン(私):夏陽の組み合わせを観ました。
鐘嘉誠(1997年7月20日生まれ)は「スリル・ミー」古株キャストで、はっきりした顔立ちの美形です。鐘嘉誠が出演する回はチケットがよく売れています。ネイサンを演じた夏陽は2000年9月29日生まれ、もうすぐ22歳の若手ですが、歌と芝居に芯があって非常によかったです。
アンコールは撮影可能ですが、アンコールの時間はやや短く2~3分しかありません。
夜公演は19:30開演で、21:30に終わりました。終演後、多くの観客が出待ちをしていました。上海イマーシブ式「スリル・ミー」の常設劇場である「星空間66号・Salute小劇場」は「大世界」という1917年に建設された歴史ある建物の4階にあります。「大世界」は大型室内遊戯場として開園しましたが、改造、休業を経て、現在では複数のステージ・劇場が入居する独特の施設となっています。
「大世界」上海市黄浦区西蔵南路と延安路の交差点
「大世界」の内部は吹き抜けになっており、ステージ付きのビアガーデンのようになっています。
現在「大世界」の4階には8つの常設劇場が設置されています。「スリル・ミー」(危険遊戯)の常設劇場は一番奥にあります。
「大世界」は非常に大きな建物です。舞台終演後、出演者は「大世界」の裏口から出てきます。裏口の周りには出待ちをするファンが50名ほど集まっていました。
「スリル・ミー」の出演者の2人が出てきたのは終演から約30分後、22時頃でした。2人が一緒に裏口から出てきて、裏口から少し離れた壁際に移動します。壁際に立つ2人を取り囲むような状態で、屋外ファンミーティングのようなことが始まりました。
俳優2人は壁際に並んで立ち、マスクはつけていますが撮られてもいいようなおしゃれな私服を着ています。ここから15分弱の「歓談タイム」が始まります。主に俳優2人が話していますが、ファンが質問のような言葉を投げかけると、それに俳優が答えています。歓談の途中でファンから笑い声が上がりますが、いいポジションをゲットしないと、具体的に何を話しているかまでは聞こえません。
歓談が終わると、2人の俳優がばらけます。そして、ファンがチケットの半券を差し出すと、俳優がチケットにサインをしてくれます。基本的に希望者(10〜20名くらいいました)には全員サインをしていました。その後、手紙やお菓子、プレゼントを渡しているファンもいました。
俳優2人が個別に対応する時間が10分弱あり、それがひと段落すると、俳優2人が一緒に帰っていきました。「大世界」がある区画を越えて、大通りに2人が出たら、そこからは先はもう俳優に近付いたり、追いかけたり、写真を撮ったりしてはいけないという暗黙のルールがあるようです。
「スリル・ミー」はアンコールの撮影可能タイムが短いこと、「大世界」の敷地が広く建物沿いにファンが溜まる十分なスペースがあるため、終演後にこのようなファンサービスが行われているものと思われます。俳優2人はかなり仲が良さそうでした。
私が「スリル・ミー」を初めて観たのは2012年銀河劇場で韓国キャスト版を観ました。
その後、2016年7月に上海で「スリル・ミー」中国版の初演を観ています。しかし、そのときあまり良い印象を持ちませんでした。観客のマナーがあまりよくなかったのです。また、当時は作品や出演者に関する情報が少なく、単に芝居を観て帰るだけでした。
現在上海で上演されている「イマーシブ式スリル・ミー」は、公式がSNS(Weibo)に頻繁に情報をアップし、キャスト紹介、舞台裏、練習風景、キャストVlogなど様々な動画を流しています。また、定期的に新キャストを投入し、誕生日公演、特典付き公演などファンが通いたくなるイベントを公式が企画しています。公式がファンダムの形成に配慮した運営をしており、舞台の演出にもある程度反映されています。そのため、2016年に観た「スリル・ミー」とはまったく印象が異なる舞台になっています。2016年から2022年までの6年を経て、上海の商業ミュージカルは俳優の数やクオリティが上がっただけではなく、運営やサービスの面でも成長したといえます。