好きな人がいる。
インターネットの女の子だ。まさかこの僕がそんな恋をするとは夢にも思わなかったけど、自分の心には逆らえない。
なんでそんな子のことを毎晩考えて病んで裏垢に書くぐらい好きかというと、本当に傷ついた時に「救われた」からだ。
高校が通信で、好きになった当時バイトぐらいしか他人と関わる場所がなかった(バイトも仕事と割り切って人と深くは関わらなかった)ので、今もだけど本当にネットにしか友達がいない。
それでも現実で会って遊ぶみたいなことがちょくちょくあって、いろんな人と会ってた。
好きな人と同じ、160cm。
ある日discordでみんなでゲームをしてたから、ちょろっと入ってみたら僕の身長の話をしてて、チビ本人がやってきたぞという感じで、本当に信じられないくらいバカにされた。
僕はそれはそれは悲しくなって、こんな身体で生きてる意味も無いなとか思ってたんだけど、好きな子だけは僕をバカにしなかった。
お前の身長やばいから、みんなで並んだらお前の部分だけボコってなるから。
基本的に僕は自分の過去の気持ちをちゃんと思い出すことができないけど、この時の怒り悲しみはそこそこ鮮明に分かる。
好きな子に言われた言葉を思い出せば、何度でもあの時の心を再現できる。
「救われた」って書いたけど、今でも身長はコンプレックスだし、この表現はちょっとオーバーだったかもしれない。
でもああ言ってもらえなかったらもっと傷付いていたし、ダメージが許容量を超えて悲惨な結果になっていた可能性さえある。
それにあの子の優しいところに惚れたのは確かだ。
そのあとに
じゃあ、君はチビの男が好きなの?
と言われて、「170は欲しいかなー」とか言ってた気がするけど、そう言っていたこと認めてしまうと、今からでも精神の崩壊が始まりかねないので、言っていないものとする。
言ってたにしろ、あの状況で僕を庇った挙句低身長の男にも魅力がある的なことまで言ってしまえば、僕への愛を公開しているも同然なので、誤魔化したという感じだろう。
(「わたしと並んだらボコってならないよ」から、じゃあ君はチビの男が好きなの?という会話は不自然なので、間に彼女が何か言ってくれていた可能性が高い。覚えていなくて申し訳ない。)
僕みたいな人間はタダで救われることができない。
あの子の優しさを垣間見て、好きになろうとか、全部捧げようとか決めたのは僕自身なのだけど、あの瞬間のダメージを少しだけ緩和してもらって、その分をあとから物凄い利子で返されているような気分になることがある。
最初はネットの女の子なんか好きになった自分に嫌気が差していたのに、常に彼女が頭の中に現れて割れそうな時期もあった。
あの子がアイドルの○○がかっこいいとかメロいとか言う度に嫉妬の炎で大火傷もした。
今から本当にやばいことを書くけど、あの子は別に僕のことなど好きではない。
庇ってくれたのも多分僕があまりにもかわいそうだからという以外に理由がないし、その時以外にも元気付けてくれたことがあったけど、友達として優しくしてくれただけ。
これほど苦しみながら愛しても、あの子は僕を哀れな子羊程度にしか思っていないのだ。
この間は彼氏ができたとか言っていた。
あの子とのLINEを毎日の楽しみにしてたけど、送りづらくなった。
これからも僕は「わたしと並んだらボコってならないよ」という、あの子の優しさの欠片だけを握りしめて生きていくのだろう。たまに毒針が突き出してきて苦しむこともあるだろうし、他の女の子を好きになろうという時はその欠片に罪悪感を抱く。
下手をしたら二度と恋ができないかもしれない。