はてなキーワード: フルアコとは
20代前半のころ、それまで聞くだけだった音楽を演奏することに興味を持ってギターを買った
コミュ障ゆえバンド系はすぐに諦め、ボサノバにハマったことからジャズも聞くようになった
当時はいわゆるビバップ的なジャズセッションのようなものにはさほど興味がなかったのだ
指板の音名が見えるように!
バッキング!
そういう感じのことをやらされ、勇気を出して
「これは今自分が求めている物ではない気がする…」
と打ち明けたところ「でも楽譜読めないより読めた方がいいですよね?バッキング出来ないより出来た方がいいですよね?じゃあやってください」
とまあ、そりゃそうなんだけどね、という理屈で畳みかけられ、自分の嗜好について言語化が進んでいなかった俺は反論できずに不満をため込み、すぐに教室をやめてしまった
それからはあまり練習することもなく、TAB譜付きの楽譜を買って弾けるようになって喜んだり
ギター自体に興味が移り、中古ギターを買いあさっていじくりまわす日々が続いた
それで散財もかなりした
それでまたギターを真面目に始めてみるかと思って、別のギター教室に入った
アメリカのギターオタクのおじさんがマイナスワンに合わせてアドリブを弾いているYoutube動画にハマっていて、奇しくも20代のころ拒否していたビバップスタイルに興味を持っていた
発表会もあって初のセッションを経験したのもこの頃のことだった
楽しかったが、上達は遅かった
あとは耳で覚える!
やってみて、失敗しながらフィーリングで覚える!
という方針だった
これが自分には合わなかったと思う
他の先生がどういう教え方をしているのか気になって、別の先生の個人レッスンを受けてみた
するとこちらは全然違っていて、とにかくリズムが重要だという人だった
四つ切のバッキングがすべての基本です、と何度も言っていた
まずはFのブルースのバッキングだけをひたすら練習し、ノリが身についてきたら
各コードの3度の音とドミナントフレーズだけでアドリブをとれるようにする、という流れのようだった
調べてみるとビッグバンドが本職の先生で、それもこのスタイルに影響していたのかもしれない
当時の俺にはどちらも遠回りのように感じた
バッキングトラックに合わせて流暢にソロを弾きたいだけだから、
その方法を理屈立てて明快に教えてもらえないものかと思っていた
そのころ、ちょうどYoutubeで初心者向けにジャズギターを詳しく解説している講師のチャンネルを見つけた
今ではそういうのが山ほどあるが当時は珍しかった
通っている教室に疑心暗鬼になっていた俺はこの人についていってみるかと思い、独学に舵を切ることにした
俺と同じような人が多かったのか、このYoutuberはすぐに人気になった
そしてオンラインサロン、メンバー限定コンテンツで稼ぐようになった
今思うと金を出しても良かった気がするが、当時は抵抗感が大きくドロップアウトしてしまった
独学の厳しさに負け、いつしか俺はTAB譜ソロギターマンに戻っていた
なぜかウクレレにも手を出して、TAB譜ウクレレマンも兼ねるようになった
そんな折、たまたま近所の汚いバーで知り合った人がジャズギタリストだと発覚した
お試しは無料だから一回来てみますか?と誘われ、行ってみることにした
3畳の和室がレッスン室で、控えめの音量でやりましょう、と言われて
エレキの生音でこそこそ「枯葉」かなんかを二人で合わせていると…
俺はそう言って入会を辞退した
でもそれは実際、環境のせいだけではなかった
いくつかのグループに分かれたフレーズを暗記して、曲のしかるべきところで正しいグループのフレーズを選んで弾く
まず2年くらいはこれを目指してやっていきます、と
いや、それアドリブって言えるのか?と、その疑念もかなり大きかった
その後結婚し子供も産まれ、金が必要になりギターも売ってしまった
楽器に関しては一本だけ残ったウクレレをぽろぽろやるだけの日々が続いた
教則本も押し入れにしまい、参考にしていたYoutubeチャンネルも全で登録解除した
それらが目に付くところにあると「何故諦めたんだ」と責められているような気がしたんだと思う
俺は40代になり、もうジャズギターのせいで苦しい気持ちになるのは御免だ、と逃げ腰になっていた
でも結局、ジャズギターが弾けるようになりたい、という欲求から逃げ切ることはできなかった
ある日リサイクルショップで程度のいいフルアコを発見して思わず買って帰ってしまった
それでまたギター熱が再燃した
そのうちの一冊をパラパラ見ているうち、ふと気が付くことがあった
俺が今まで逃げてきた、
読譜も、バッキングのリズムも、耳で覚えることも、パズルのようなコード進行の分析も
カリキュラムに沿って進めていくとそのすべてが網羅されるようにできているのだ
もちろんこの本だけが特別すごいという事ではなく、こちらの理解がやっと追い付いてピンときたということだと思う
俺は遅まきながら、あれは全部必要なことだったんだ、順番の違いでしかなかったんだ、とここで初めて気が付いた
この教則本は、「序盤に出てくるコードの押さえ方が好みではない」という勝手な理由でほとんど読んでいなかったが
なんとなく「これはいけるかも」という予感があった
定額でレッスン動画が見放題なのと、週一で参加自由のZOOM会議がある
サイトの説明を見ると、長年の講師経験から例の教則本のメソッドをさらにブラッシュアップした内容だと書いてあった
サンプルを見ると、それが本当なんだとわかった
俺は初心者歴がすごく長いから、初心者にとってわかりやすい内容か否かについては鼻が利くのだ
早速そのサイトに登録して、カリキュラムに沿って練習を再開した
そして3か月ほど経過した
やっていることは、あのボロアパートの一室でやっていたパズルと大差ない
しかし繰り返すうちに音楽理論が頭に入り、指板上の音名がちょっとずつわかるようになる
似たようなフレーズばかり覚えるのだが、それがつまり自分でフレーズをアレンジしたり作っていく伏線になっている
こういう事が全部同時進行で訓練できる
気が付くと、限られたキーの中ではあるが、何曲かのスタンダード曲でそこそこアドリブを弾けるようになっていた
何を練習すれば次のステップに行けるかもなんとなく理解できている
まだ何年かかかるだろうけど、求めていたものがようやく手に入りそうな気がする
いや、20年前に最初に門をたたいたあの先生のもとで我慢してやっていても、
もしくはどこかの時点の教室をやめずに続けていても、たどり着く場所は同じだったかもしれない