登って来た梯子を蹴落として来たから・・
・・・文明は危なっかしい。私たちは進歩の階段を登りながら、下の段を蹴落としてきた。後戻りすれば破局が待っている。文明が嫌いで、それが倒れて傲慢な顔が潰れるのを期待している人たちは、現在の私たちのような人口や生活状態にある人類を支えるのに、ほかの方法などないということを心に止めるべきだろう。私たちは全員この虎の背中にまたがっており、生きて飛び降りられる人はいそうにもない。
この部分は愛読したこの本の中で、私が最も同意出来ない部分かも知れません。
「私たちは進歩の階段を登りながら、下の段を蹴落としてきた」
と言うのは事実として同意するところです。
しかし、後戻りすれば破局が待っていると言うのは、経済成長を基本原理と考える人々の脅迫概念ではないでしょうか?
破局は、今までどおり下の段を蹴落としながら進歩の梯子を登り続ければ、その先に確実に待っているのです。
考えてみて下さい。バベルの塔でも、タワーでも、どんどん上に上に積み上げながら高くしていけば、不安定になり、いつかは崩れるのです。崩れないためには、富士山のような成層火山みたいに裾野もどんどん広げなければなりませんが、地球は有限ですから、裾野はどんどん広げられません。かなり以前から「グローバル化」の言葉が頻繁に使われていると言う事からもわかるとおり、もう裾野が世界規模にいっぱいいっぱい広がっているのです。もう限界を超えて、不安定になり、崩れはじめているといった所でしょうか・・・・。
確かに、現在の人口や生活レベルは、エコロジカル・フットプリントの観点から考えて見ても、地球の持続可能な容量を既に超えています。・・・このまま、人口と生活レベルをドーピングのような科学技術に頼ってもっと上げようと言う事こそ破局へ向かうことでしょう。・・・・じゃあどうするか?・・確実な方法は一つでしょう。下へ向かってまた梯子をかけるのです。つまり、人口を徐々に減らして、生活レベルも下げる・・・それは困難な事かも知れません。・・・しかし、破局を出来るだけ小さく押さえる為には、梯子を下に向かってかけて上手く下りる事以外には見つからないでしょう。・・飛び下りる必要はないのです。持続可能な高さまで梯子をかけてみんなで降りるのです。
「文明が嫌いで、それが倒れて傲慢な顔が潰れるのを期待している人たち」ってそんなにいないような気がしますが、ロナルド・ライトはどういう人たちを想定したのでしょう?いわゆるディープ・エコロジスト達の事でしょうか?
原始的な生活を送っている先住民達;自然破壊の文明に反対するインディアンなどの人達については、彼は大きな理解者の筈です。南北アメリカの先住民の迫害史を白人側で初めて深く掘り下げた『奪われた大陸』を書いたのですから・・・同じ自らの著書『暴走する文明』の中で進歩の罠の危険性を警告しているロナルド・ライトの意図がよくつかめません。・・No Way Out・・・どう進んでも 出口無し・・と言う事を言いたいのでしょうか?確かにどの方向に進んでも困難な道でしょう。しかし、本書で解決策に触れていない彼でも、下に梯子を掛ける道を否定しないで欲しいと思います。これを否定する事は、そこらの経済成長主義者と変わらないか、もしくはもう絶望しているという事でしょうか?(理性が十分ある人が考えれば、悲観的にならざるを得ない部分は十分にありますが・・)
確かに私自身も、文明の便益を十分享受致しておりますが、それがこのまま続けられるとは考えられません。理性的に考えれば誰でもそういう結論に達するのではないでしょうか?いわゆるディープ・エコロジーというレベルでなければ解決出来ないでしょう。
下向きに梯子をかけ直して、十分安全な高さまでみんなで下に下りる事より安全で確実な方法は思い浮かびません。これまでこのブログでしつこく繰り返している部分です。技術的には何ら困難な事はありません。あとはその手の欲望を抑えられるかどうかでしょう。・・・既に禁断の実を食べてしまった人類の事ですから、その欲望を抑えられるかどうかが問題です。・・人々の意志による政治的な決断がいつ出来るかでしょう。
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