住友商事が代理店となっている米ジンブラの「Zimbra Collaboration Suite」は、Webメールサービスのサーバー・ソフト。ソリューションプロバイダのSaaS事業を後押しするライセンス体系もある。

 「SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)事業で、3年後に売上高30億円を目指す」。この目標を実現するため、住友商事が手掛ける商材が米ジンブラのWebメールソフト「Zimbra Collaboration Suite」(Zimbra)である。

 住友商事はZimbraの国内総代理店となった2006年春以降、35%を出資するSaaS事業者のフィードパスを通じ、ZimbraのWebメールサービス「feedpathZebra」を提供してきた。これは主に社員数300人未満の中小企業向けだが、Zimbraでは大企業や教育機関など大規模ユーザーの開拓を狙う。

 2007年春ころからライセンス販売を開始し、ネットマークスと住商情報システム(SCS)が販売を担当。ネットマークスは関東学院大学、SCSはDNP情報システムから受注済みで、いずれも2008年4月から順次導入を進める。

 ソリューションプロバイダがZimbraを担ぐメリットは三つある(図1)。一つは、Ajaxを使った動的なインタフェースであること。クライアントにインストールするメールソフトと同じ使い勝手を実現できるため、HTMLを使った一般的なWebメールソフトとの差異化が可能だ。

図1●Webメールソフト「Zimbra Collaboration Suite」の主な機能と特徴
図1●Webメールソフト「Zimbra Collaboration Suite」の主な機能と特徴
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 二つ目は、Webサービスでシステム間連携するマッシュアップを活用できること。他のシステムとの連携を追加提案でき、システム導入後も商談を開拓できる。さらにSaaS事業者に必要な機能も実装している。ネットマークスの鈴木哲也マネージメントサービス統括部長は、「バックアップやリカバリーなどの運用機能が、他のWebメールソフトよりしっかりしている」と評価する。

周辺システムとの連携も

 Zimbraの売り方は二つ(図2)。

図2●「Zimbra Collaboration Suite」を担いだ2社の事例
図2●「Zimbra Collaboration Suite」を担いだ2社の事例

 まずは一般のSI案件と同様、システムを構築して売り切りで納めるケース。通常のSI案件との違いは、ソフトのライセンス料が月額利用の料金体系になっていること。一括支払の料金体系と比較すると、ソリューションプロバイダの当初の売り上げは小さくなる。だがSCSの奥田守彦ビジネス開発事業部CRMソリューション部担当部長は、「ユーザー企業にとっては初期投資が安くなるというメリットがあり、ユーザー数を増やすことで売り上げ増につなげる」と話す。バージョンアップ費用が不要になる点もアピールし、3年後に10万ユーザーを獲得。ライセンス料に換算して3億円の事業規模を目指す。

 ソリューションプロバイダ自らがSaaS事業者となる形態もある。ただし、この場合はSaaS事業に必要なインフラを自前で用意する。

 ネットマークスが関東学院大学向けに用意したサービスは、約3年間の継続利用で償却できるようにしている。大学側はインフラを持たないため、容易に乗り換えられないが、ネットマークスの鈴木部長は、「長く使ってもらえるような提案が重要になる」と話す。

 例えば、ネットマークスはZimbraの対象ユーザーを卒業生にまで広げ、卒業後の利用を促す。そのために、寄付金の募集手段としての利用や、卒業生を対象にしたコミュニティの設置といった提案を考えている。さらに、周辺システムとのマッシュアップも提案。具体的には、既存のeラーニングシステムとの接続を検討している。

 同社は関東学院大学向けのサービスを、「PeacePlanetメール2.0サービス」の名称で他の教育機関や企業にも提供。2009年3月末までに5万ユーザー、金額で約4億円の売り上げを見込んでいる。