前回は、画像の代替テキスト(alt属性値)の注意点や工夫の仕方を説明した。今回は、alt属性や他の属性には「過度に頼ることはできない」という前提で、さまざまな環境に対応できる「よりよいプラクティス」を考えていこう。
環境対応性が高いのは、何といっても「生テキスト」
画像(img要素)の代替テキストを工夫して書くのはとても大切なことだが、前回の最後で「それでも完璧ではない」と述べた。なぜなら、alt属性、title属性、longdesc属性の属性値として含めるテキストやURLは、ブラウザなどのユーザーエージェントがどのように対応しているか、ユーザーそれぞれがどのようにオプション設定しているかといった、制作者側では完全に把握するのが難しく、かつ、コントロールできない問題が横たわっているからだ。
たとえばalt属性値ひとつとってみても、Internet Explorer 6/7、Operaなどのブラウザが画像へのカーソルオン時にツールチップ表示するのに対し、FirefoxやSafariでは表示されない(title属性値をツールチップ表示する実装になっている)。
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左がInternet Explorer 7の表示、右がFirefox 2の表示。FirefoxやSafariではalt属性値がツールチップ表示されない |
結論としては、やはり「生テキスト」、つまり要素の内容として含めるテキストが、何といっても環境対応性が高い。生テキストは、ユーザーに環境設定など特別な操作を強いることなく表示・表現され、制作者が工夫できる余地も大きいからだ。
代替テキストと生テキストの組み合わせ
代替テキストではあくまで「それが何の画像なのか」を示しておき、生テキストで内容を詳しく説明するのがベタープラクティスといえる。たとえば次のようにである。
[XHTML] |
実際のページ上での見え方は、次のようになる。CSSでdiv要素全体をフロートさせ、本文テキストとは視覚的に区別しやすいようにしておくとよいだろう。
![]() |
[CSS] |
もちろん、すべての画像にこのような詳しい説明が必要なわけではない。代替テキストのみでもよい画像もあれば、このように詳しい説明をつけたほうがよい画像もある、ということである。
さて、上記の例について、dl要素(定義リスト)を利用したマークアップを思いついた人もいるだろう。子要素のdtに「画像」を、ddに「説明」を含める方法だ。しかし、dl要素はあくまで「リスト」であって、単一の組み合わせに使うのは、果たして正しいだろうかという疑問がある。つまり、「画像」と「説明」のセットが複数なければ、dl要素は使わないほうがよいのでは、ということだ。
また、画像の代替テキストがあたかも見出しのような役割を果たしているので、img要素を見出し要素でマークアップしたほうがよいと考えた人もいるだろう。しかし、HTMLでもXHTMLでも、見出し要素はあくまで「文脈上の存在」であって、特定の画像に個別的につける見出しという性格ではない。見出し要素を使ってしまうと、文脈的にはそこから話が変わる(あるいは、ある話のなかでの下位見出し)、ということになってしまう。
こういったことから、上記の例では、「画像」と「説明」のどちらもp要素でマークアップしている。
代替テキストを「つける・つけない」の微妙な判断
代替テキストをつけるかどうか迷うケースは意外と多い。たとえばリンクテキストの先頭に矢印アイコンを置くとする。この場合、代替テキストは必要だろうか。これは、その人の判断でよいだろう。代替テキストとしては「続きは○○をご覧ください」「詳しくは○○をご覧ください」などが考えられる。
W3Cの「Web Content Accessibility Guidelines 1.0」では、リンクが設定されている画像には代替テキストをつけることを要請している。つまり、リンクを矢印アイコンも含めて設定する場合には、代替テキストをつけるべき、ということになる。
もし代替テキストをつけない(alt属性値を空にする)のであれば、矢印アイコンをリンクに含めないか、そもそもCSSで表示させたほうがよい。「代替テキストをつけない → コンテンツとして必要ではない装飾のためのもの → それならCSSで表示させたほうがよい」という三段論法にもとづくの判断である。
次のようにXHTMLとCSSを記述する(a要素にクラス「arrow」をつける)ことで、CSSによる矢印アイコン表示が簡単に実現できる。
[XHTML] [CSS] |