IP電話を導入する際に、個人ごとの内線番号を利用するケースが増えています。パソコン上の電子電話帳などを使えば、氏名などを検索して電話をかけられます。とはいえ、内線番号を覚えられるに越したことはありません。電子電話帳を使うよりも直接内線番号をダイヤルしたほうが簡単という場合があります。しかし、無味乾燥な数字の羅列を暗記するのはひと苦労。自分の番号、それからよくかける番号をいくつか覚えるのが精一杯です。

 ほとんどの企業などでは、「電子電話帳あるいは紙やExcelなどの電話帳を用意するから、番号なんて覚えられなくていい」と考えるでしょう。しかし、奈良県奈良市の帝塚山学園は、なんとか覚えやすい内線番号をつけられないかと考えました。そこで「末尾の数字だけ覚えれば番号がわかる」番号計画を作り上げました。

 帝塚山学園は、2005年10月に幼稚園と小学校の教員を中心にFOMA/無線LANデュアル端末「N900iL」を46台導入。同時に全校の電話の半分弱をIP電話に切り替えました(詳細は日経コミュニケーション2006年4月15日号参照)。IP電話導入に伴い内線番号の再編を検討しました。その際、皆が覚えやすい番号を目指したのです。

図1 個人内線番号の付け方−施設管理課の佐藤さんの例
図1 個人内線番号の付け方−施設管理課の佐藤さんの例
 目をつけたのは、携帯電話機のダイヤル・ボタンに振られている、かなやアルファベット。帝塚山学園は、この文字を利用して番号を決めました。たとえば、佐藤であれば、「さ」の文字が書いてある「3」、「と」はた行であるため「た」の「4」といった具合です(図1)。つまり、携帯電話機でかなを入力するときに押すボタンで、番号が決まるわけです。

 もっとも、このボタンにある“文字”を利用しようというのは英語圏では以前から利用されています。「1」には「ABC」、「2」には「DEF」というように、アルファベットが振られています。たとえば、ヒルトン・ホテルは顧客向けフリーダイヤルは「1-800-HILTONS」(=1-800-4458667)というように、電話番号を知らなくても電話をかけられるようになっています。このように電話番号をアルファベットで表現するのは一般的になっています。

 帝塚山学園で注目すべきは、「個人内線番号を覚えやすいものにしよう」という発想です。内線番号は自由に設定できるはずですが、多くの場合、従業員名簿順に順番に番号を振っているのが実情でしょう。

 実際には、4ケタの内線番号のうち真ん中の2ケタが名字によって決まり、先頭の数字は所属、最後の一文字は重複を防ぐためにランダムな数字を割り当てます。学校法人という性格上、所属の変更は一般企業より少なめ。末尾1ケタの数字さえ覚えておけば、相手の内線番号がわかるという番号体系です。

 一番驚いたのは「特にユーザーへの通知はしていない」ということ。それでも電話をかけるときにかな文字へ目がいきますから、口コミで“秘めた狙い”は広まっているのだとか。「最初に気が付いた人はさぞかしうれしかっただろうなあ」と思いながら、自分の内線番号に何か意味はないものかとせんない想像をしています。