福岡県宗像市は2023年6月29日、マイナンバーカードを使った証明書交付サービスで、別人の住民票の写しが誤って発行されるトラブルが発生したと明らかにした。原因は富士通の子会社富士通Japanが手掛けるコンビニ交付システム「Fujitsu MICJET コンビニ交付」の不具合だった。
同市によると、6月28日午後2時半ごろ、市役所の窓口で市民の女性が住所変更などの手続きをし、市職員が住民データの更新を実施。女性が同日の午後2時50分ごろに、庁舎内にある「らくらく窓口証明書交付サービス」で住民票の写しの交付を申請したところ、申請者でない男性市民の住民票が出力されたという。この男性は同日の午後2時35分ごろ、市内のコンビニから住民票写しの交付を申請していた。男性側は問題なく住民票の写しを印刷できていた。
富士通によると、らくらく窓口証明書交付サービスから住民票の写しを申請すると、富士通Japan製コンビニ交付システム経由で住民のデータを印刷する仕様になっているという。ただ、写しの申請と住民データの更新の反映が同タイミングになったことで「データの不整合が発生し、同時期に申請した別人の住民票が誤発行されてしまった」(富士通広報)という。
同社によると、過去に他の自治体で同様のトラブルが発生しており、その際に対象システムのプログラム修正をしていたが、宗像市にはそれが反映できていなかったという。同市にプログラムの修正が反映されていなかった理由については「現在調査中」(富士通広報)とした。
富士通Japan製コンビニ交付システムを巡っては、全国の自治体で様々なトラブルが相次いでいることから、デジタル庁が5月8日に同社にシステムを一時停止した上で総点検するよう要請しており、同社は要請に応えるかたちで、6月17日までに全国の自治体123団体の点検を完了させたばかりだった。河野デジタル相も2023年6月20日の閣議後記者会見で「システム負荷が高い場合でも、申請者の証明書が他人の証明書と入れ替わることなく交付されることを確認した」と説明していた。
宗像市も2023年6月2日に富士通Japanによる点検を実施していたが、「同時アクセスの負荷試験が中心であったため今回のような不具合を見つけることができなかった」と富士通Japanの担当者から説明を受けたという。同市は富士通Japanによる修正対応と再点検のために現在コンビニ交付サービスとらくらく窓口証明書交付サービスを停止しており、2023年6月30日午前10時時点で再開のめどは未定という。
富士通広報は「再度サービス停止のお願いをする事態となり、自治体さまならびに住民の皆さまに多大なるご迷惑ご不便をおかけいたしますことを重ねて深くおわび申し上げます」とコメントした。
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