民間のビル建設プロジェクトが基本設計段階で頓挫した。設計者が設計料の支払いを求めて訴え出た建築訴訟で、設計者の割合報酬請求が認められた一方、設計者を「債務不履行あり」ともする判決が下った。(日経アーキテクチュア)
今回取り上げるのは、設計契約の解除と設計料の清算を巡るトラブルだ。まず概要を見ていこう。
不動産会社A社は2015年ごろ、収益性向上を狙いとして、神奈川県厚木市に立つ保有ビルの建て替えを決めた。この時期、A社は不動産会社B社(訴外)というコンサルタントを入れて検討を進めていた。
B社はプロポーザル方式で設計事務所C社を選定。A社とC社は16年6月末、基本設計の業務委託契約を締結した。低層階を商業テナント、上層階を賃貸住宅とする構想で、工事予算は20億円程度。基本設計の業務委託契約書では、鉄筋コンクリート造の地下1階・地上9階建て、延べ面積7200m2が想定された。
契約には解体工事に関する設計業務も加わり、設計料は総額約2800万円、期間は16年7月から翌17年9月末までと定められた。C社はまず、着手金として約500万円の支払いを受け、残りは基本設計完了後に受け取る予定だった。