2024年春、ゴールデンウイーク中に新幹線や特急列車などを利用した人の数が新型コロナウイルス禍前の95%程度まで回復する中、ビジネスパーソンの働き方にはどんな変化が起こっているのか。2020年春からほぼ半年おきに実施してきた調査の最新結果を見ると、在宅勤務を活用する人の割合が2年ぶりに上昇した。仕事の内容や都合によって働く場所を使い分ける、「ハイブリッドワーク」が広がり始めた実態が浮かび上がった。
日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボは「ワークスタイルに関する動向・意識調査」を2020年春から定期的に実施しており、2024年4月に最新となる9回目の調査をした。「あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」と尋ねたところ、「週3日以上」と答えた人は39.8%だった。2023年秋の前回調査よりも8.9ポイント増えた。
週3日以上テレワークを利用する人の割合は、新型コロナウイルス感染症のまん延防止等重点措置が2022年3月に解除されてから減り続け、2023年10月の前回調査では最低割合を更新していた。2年間に及んだ減少傾向が止まり、上昇に転じたというのが、最新調査における最大のポイントだ。
コロナ禍におけるリスク対策の観点からテレワークを半ば強制された時期を第1フェーズとすると、緊急事態を脱した多くの企業が出社回帰へとかじを切った2022年春から2024年春までの第2フェーズを経て、新たな「第3フェーズ」への転換点を迎えている。
第3フェーズとは、ビジネスパーソン一人ひとりが目的などに応じて出社と在宅勤務を自律的に使い分ける時代だ。
強制ではなく、自ら考えて使い分け
「自律的に」という言葉は、文字通り、会社から強制されるのではなく、自らが選択する行為を表す。そのような動きを裏付ける調査結果を示したい。
テレワークの実施頻度が2023年10月よりも「減った」「やや減った」と答えた人に複数回答可の形でその理由を尋ねたところ、「勤務先(または派遣・常駐先)から出社を求められる/指示されることが増えたから」を選んだ人の割合が2023年10月の調査よりも4.5ポイント減った。
同割合は51.1%と選択肢の中で最も多く、2人に1人が出社を指示されている状況ではある。だが、前回調査よりも減った結果を踏まえると、会社に指示されたからではなく、別の理由で自ら出社を選ぶ人が増えている、とみなせそうだ。
別の理由とは「同僚(上司や部下を含む)や取引先、顧客と直接対話したいから」「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに切り替えたいから」といったものだ。前者を選んだ人は前回調査より13.2ポイント増え、後者を選んだ人は同10.0ポイント増えている。
2024年4月の最新調査でテレワークを「利用していない」と答えた人にその理由を複数回答可の形で質問したところ、最多回答は「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに切り替えたいから」(35.5%)だった。この結果も、会社に強制されて、というよりは、自らの判断で出社を選ぶ人が存在する現状を表している。
これらのデータを踏まえると、ビジネスパーソン一人ひとりが自らの判断に基づいて働く場所を選ぶ時代に突入しつつあると言えそうだ。会社からしても、社員が一切出社しないのは困るだろうが、といって「毎日必ず出社しなければだめ」というわけでもないだろう。
自由意見に目を向けると、「出社が原則。テレワークには上長の承認と理由が必要となった」(40代、建設業、係長・主任クラス)などの声も複数あった。出社を強制されるケースもそれなりにある一方で、自律性を重んじる動きが増える現実にも目を向けたい。