全1434文字

 みずほ銀行が鬼門のバッチ処理でつまずいた。2021年3月11~12日に起きた外貨送金のトラブルは、ディスク装置の故障が発端だった。バックアップ装置への切り替えに失敗し、データの不整合も重なって夜間のバッチ処理が朝までに終わらなかった。みずほ銀行はこの2週間で4件ものシステム障害を引き起こしており、顧客の視線は厳しさを増している。

 「断腸の思いだ」。2021年3月12日夜、東京・千代田のみずほ銀行本店で開いた緊急記者会見で、藤原弘治頭取はこう絞り出した。藤原頭取は2週間ほど前の3月1日、まったく同じ場所で記者会見をしたばかり。システム障害を理由に、これほどの短期間でメガバンク首脳が2度も謝罪会見に立つのは異例だ。

システム障害について陳謝するみずほ銀行の藤原弘治頭取(2021年3月12日)
システム障害について陳謝するみずほ銀行の藤原弘治頭取(2021年3月12日)
(撮影:日経クロステック、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

 3月1日の記者会見は、2月28日に起きたATM障害を受けたものだった。2月28日の障害は紙の通帳を発行しない「みずほe-口座」への切り替え処理に起因し、ピーク時はみずほ銀行ATMの7割超に相当する4318台が停止した。藤原頭取は記者会見で再発防止を誓ったが、それから短期間に3件のシステムトラブルを起こした。

バックアップ装置に切り替わらず

 3月11~12日に起きたシステム障害の経緯はこうだ。きっかけは、勘定系システムの司令塔に当たる「取引メイン」と「外為コンポーネント」を仲介するシステムのディスク装置の故障。みずほ銀行はディスク装置を冗長構成で運用しており、故障が発生するとバックアップ装置に切り替わるはずだった。しかし何らかの理由で失敗した。

藤原頭取はほとんどの質問に自ら答えた
藤原頭取はほとんどの質問に自ら答えた
[画像のクリックで拡大表示]

 そこで故障発生から約4時間後の3月12日午前3時50分に壊れたディスク装置を交換し、午前6時38分に再起動を実施。その後、遅れていたバッチ処理を実行したが、「(外為で)データの不整合が発生し、作業が遅延した」(みずほ銀行の片野健常務執行役員)。データの不整合が起きた原因は現時点で分かっていない。

 結局、一連のバッチ処理の完了は3月12日午後7時46分までずれ込んだ。その結果、国内他行向けの外貨建て送金取引約300件で遅れが出た。本来は午後1時までに振込先の銀行に送金データを送っておかないと同日付の入金にならないが「入金日についてお客様にご迷惑がかからないように他行と調整したい」(みずほ銀行の清水英嗣執行役員)。