厚生労働省が新型コロナウイルス感染拡大防止策として導入した接触確認アプリ「COCOA(ココア)」に前代未聞のトラブルが発生している。2021年2月3日にAndroid版のCOCOAで、陽性登録したアプリ利用者と接触しても検知しない障害が明らかになった。検知しないため当然通知も来ない。
障害は2020年9月28日のバージョンアップに伴い発生。その機能がなければCOCOAが「無用の長物」と化してしまう中核機能が働かないという前代未聞の障害がなぜ4カ月以上も見過ごされたのか。掘り下げて取材すると、行政機関が委託元となるソフト開発・保守の発注の在り方から課題があることが見えてきた。
「お粗末」と菅首相もバッサリ
COCOAはスマートフォンのBluetoothを使って、COCOA導入ユーザー同士の接触を検知・記録するアプリである。新型コロナ感染症の陽性者と接触した可能性が生じた場合、COCOAがユーザーにプッシュ通知で知らせる。Android版では2020年9月28日以降、今も検知できない状態が続いている。
「COCOAへの信頼に対する重大な問題だ」――。内閣官房新型コロナウイルス感染症対策テックチーム内の「接触確認アプリに関する有識者検討会合」委員を務める、世界経済フォーラム第四次産業革命日本センターの藤田卓仙氏はこう指摘する。
菅義偉首相はどう感じているのか。2021年2月5日午前の衆院予算委員会で次のように答弁した。「様々な機能というのは時によっては支障を来すことはあり得る。しかしそのことが4カ月間も放置されていたのは、昨日も発言したが、お粗末なことだ」。「COCOAは感染防止対策のカギであり、大変申し訳なく思っている。2度と起こらないようしっかり気を引き締めて取り組んでいきたい」――。
そもそもCOCOAは、通知を受けた接触者が自らの行動を変えることで感染拡大を防ぐための個人向けツールである。「特に、現在のように感染が拡大している状況では、たとえ接触があっても通知されないCOCOAを入れていることで、接触者に行動変容が起きずかえって害になる可能性もある」(藤田氏)。厚労省は障害解消に向けた改修を2021年2月中旬に実施するとしている。