活動範囲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/06 14:17 UTC 版)
海上保安庁法第1条の規定では、「海上」とあるのみで、地理的な限界は定められていない。しかし、主な活動海域は、日本の領海、接続水域、排他的経済水域(EEZ)、日米SAR協定に基づく捜索救助区域(本土より南東1,200海里程度)である。このうち領海とEEZを合わせた面積だけでも約447万平方キロメートルあり、領土(約38万平方キロメートル)の約11.8倍に相当する。これにSAR協定分担域を合わせると、国土面積の約36倍という広大な水域を担当していることになる。捜索救難任務で、海上保安庁の巡視船や航空機だけでは対処困難な場合には、各管区海上保安本部から海上自衛隊や航空自衛隊に災害派遣の要請が出される。災害派遣の要請を受けた海上自衛隊では、護衛艦、哨戒機、救難飛行隊などを出動させて海上保安庁の活動に協力する態勢が敷かれる。同様に航空自衛隊の場合は、主に航空救難団の救難隊が1958年(昭和33年)より数多くの捜索救難などの活動で海上保安庁に協力してきている。 活動範囲は当初、「港、湾、海峡その他の日本国の沿岸水域において」(制定時の海上保安庁法第1条第1項)と限定されていたが、後に改正されて単に「海上において」と規定され、活動範囲の限定が解除された。活動範囲は全世界に及んでおり、一例として、専用船「しきしま」によるヨーロッパ - 日本間のプルトニウム輸送護衛任務、マラッカ海峡おける海賊捜索任務などがある。内陸部で大規模災害が発生した場合は、自治体や関係機関からの要請に基づき、内陸部での救助活動にあたることもあり、活動範囲は幅広い。 海上保安庁の任務は、「海上における犯罪の予防および鎮圧、海上における犯人の捜査および逮捕」(海上保安庁法第2条第1項)であることを根拠に海上保安官は陸上においても捜査や情報収集活動を行うことが可能である。海上保安庁の陸上における業務の法的根拠としては、海上におけるの文言は「犯罪」「犯人」に掛かる修飾語であり、犯罪の予防鎮圧・捜査逮捕を海上に限定するのであれば「犯罪の海上における予防および鎮圧」となることから、この部分が法的解釈の根拠となっている。したがって、海上で発生した犯罪の捜査や犯人の逮捕のために海上保安官が陸上にまで及んで活動することは、法律上可能である。 アメリカ沿岸警備隊では海洋調査の一環として南極観測船の運用を担当しており、日本においても1957年(昭和32年)から1962年(昭和37年)までの南極観測船(第1~6次)については海上保安庁が運用していたが、1965年(昭和40年)以降の南極観測船は海上自衛隊が運用している。 その任務の過程で得たノウハウを、各国の水上警察や沿岸警備隊に提供することもある。マレーシア、インドネシア、フィリピンなどの東南アジアには、海上保安庁の職員や退職者を国際協力機構を通じて人員を派遣している。
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