パリ五輪・パラに見るあるべき「スポンサーシップ」とは(前)

記事のポイント


  1. パリ大会は「史上最もエコな大会」を目標として掲げたが、批判も集まった
  2. 世界的に注目を集めるイベントへのスポンサーシップをどう考えるべきか
  3. PR効果だけでなく、そのイベントが持つ意味を見極めることが重要だ

企業はスポーツや芸術をはじめとした様々な領域でスポンサーシップを行っています。それらは資金的な協力もあれば、自社の商品やサービスまたは社員のスキルを提供するケース、ボランティア活動への参加など協力の形も様々です。今回は、何かと話題の多かったパリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、バリ大会)を振り返りながら、企業によるスポンサーシップの在り方について考えてみたいと思います。(オルタナ総研所長=町井 則雄)

なぜパリ大会に批判が集まったのか

企業が協力する理由は一つではありませんが、企業が慈善団体ではない以上、それらに対する協力には「見返り」が必要となります。

パリ大会は「史上最もエコな大会」を目標として掲げ、競技施設の95%を既存または仮設で実施することを皮切りに、チケットは全て電子化、ペットボトルの持ち込みは禁止、選手村ではエアコンを使わないなど様々な試みを取り入れていました。

これらの取り組みの姿勢には評価に値する点が多々あったことは間違いありません。しかし、結果的には世界中から批判が集中してしまうこととなりました。

この背景には、この大規模スポーツイベントをサステナブルに運営するということに対するロジスティクスや社会的意識がまだまだ脆弱だったということが大きいでしょう。

エコ大会ならぬ「エゴ大会」という声も

その象徴となったのがヴィーガンメニューにこだわった選手村での食事です。これはサステナブルな視点からすれば間違っているとは言えません。

しかし、これまでの大会の基準から期待されていた内容からはかけ離れたもので、選手たちのコンディションへの配慮などにも欠けていたと言わざるを得ず、批判も集中、エアコンやセーヌ川問題と並んでエコ大会ならぬ「エゴ大会」だと揶揄されるきっかけともなりました。

このパリ大会での批判を踏まえ、次回の大会が米国であることを考えるとロサンゼルス大会の選手村では牛肉をはじめとする動物性たんぱく質がしっかり採れる食事が提供されることになるでしょう。

協力するか見極める戦略的視点を持つべき

このようにオリンピック・パラリンピック大会は開催都市がどのような大会を目指すかによってその運営内容は大きく変容します。また、その影響力も他のスポーツイベントとは比較になりません。

世界的な注目を集める大会を支える企業のスポンサーシップの在り方は、PR効果そのものよりも、その大会がどのような意味を持つ大会なのかを見極め、自社としてスポンサードするべき大会なのかを判断する戦略的視点が厳しく求められる時代であり、同時に、「物言うスポンサー」という毅然とした在り方も期待されています。

後編ではパリ大会において日本企業はどのような役割を果たしたのかなどについて深堀りしていきたいと思います。

後編はこちら

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町井 則雄(オルタナ総研所長)

株式会社シンカ 代表取締役社長/一般財団法人 22世紀に残すもの 理事長/ 株式会社オルタナ オルタナ総研所長/岩手町政策アドバイザー など 1993年日本財団に入会。「日本財団図書館」・「日本財団公益コミュニティサイト『CANPAN(カンパン)』」の企画・開発を行うと共に、企業のCSRの取り組みを可視化するデータベース「CANPAN CSRプラス」の企画・開発に携わる。「世界を変えるデザイン展」、「未来を変えるデザイン展」の企画・総合プロデューサー。日本財団を2016年9月に退職、企業の社会課題解決型ビジネス創出のサポートやCSR支援を行うため株式会社sinKA(シンカ)を立ち上げ、現在に至る。経産省 地域新成長産業創出促進事業審査委員、内閣府「新しい公共推進会議」情報開示・発信基盤に関するワーキング・グループ委員、G4マルチステークホルダー委員会委員、CSR検定委員会 委員等を歴任。著書(共著) 「CSR検定テキスト」 、「企業と震災(木楽舎刊)」 など。

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キーワード: #SDGs

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