記事のポイント
- 大林組が日本初となるグリーン水素の鉄道輸送を実現した
- 大分県で製造したグリーン水素を神戸市の建設現場まで輸送した
- 従来のトラック輸送に比べ、CO2排出量を82%削減した
大林組はこのほど、日本初となるグリーン水素の鉄道輸送を実現した。大分県九重町で製造した再エネ由来のグリーン水素を神戸市の建設現場まで鉄道で輸送した。従来のトラック輸送に比べ、CO2排出量を82%削減した。(オルタナ編集部・下村つぐみ)
再可能エネルギーから生成されるグリーン水素は、燃焼時にCO2を排出しないことから、世界的に注目が集まる。
大林組は「2050年カーボンニュートラル」を掲げ、2012年から、再生可能エネルギーの発電事業に取り組んできた。同社は2021年7月、大分県九重町で地熱発電力を用いたグリーン水素の試験販売を始めた。
地熱発電の設備容量は125キロワットで、毎時約0.9キログラム(10ノルマルリューベ)の水素が製造できるという。水素0.9キログラムは、トヨタの水素燃料電池自動車(MIRAI)が125キロメートルから140キロメートル走行できる量だ。
今回初となった鉄道輸送では、JR貨物などの協力のもと、グリーン水素の製造地である大分県から神戸市にある建設現場まで運んだ。従来のトラック輸送に比べ、輸送時のCO2排出量を82%削減できたという。
運ばれたグリーン水素は、神戸市の仮設現場事務所に設置した水素燃料電池に供給され、事務所の電力として使う。
■鉄道の高圧ガス輸送について明確な基準がない
グリーン水素は気体状で、専用のボンベに充填して持ち運ぶ。大林組は、ボンベを集約し、約16キログラムでひと塊りとして運ぶ。
「高圧ガス保安法」には、鉄道による輸送について明確な基準がない。そのため、今回は自動車輸送の安全基準に沿って輸送を行ったという。
大林組・グリーンエネルギー本部の梶木盛也部長は、「液化水素の鉄道輸送の検討も始まっており、安全基準の見直しが必要だ」と話す。
「そのためにも、鉄道貨物による輸送実績を積み上げていくことが重要だ。建設現場だけでなく、資機材輸送時などを含めた施工に係るサプライチェーン全体でのCO2排出量削減を目指していきたい」と続けた。