斉藤孝  カメのブログ

カメの個人的ブログです。私の趣味、ガーデニング、友人との交流

チベット高原と黄河グランドキャニオン(3)チベット鉄道、ラサと天空の湖

チベット高原と黄河グランドキャニオン(3)

    チベット鉄道、ラサと天空の湖
                                                                   河瀬斌 

 チベット鉄道の始発駅、西寧でチベット旅行社の社長運転手と別れ、夕刻列車に乗りました。北京から直通の列車もあるようだ。鉄道はデイーゼルのようで一等客室はダブルベッド付で案外広く食堂車もあり、24時間の列車の旅が始まりました。ゴルムド駅を過ぎると夜が明け、以後全部で34の駅に停車しましたが、朝早くもクンルン山脈の雪山が見えました。この山脈は中国西域から東西長さ1200km、日本の全長と同じ長さの長大な山脈で、最高点は海抜 7400mに達する。

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その先は峡谷に沿って列車がチベット高原に向かってどんどん登ってゆきます。

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トト河駅の「トト」はチベット語で「細かく編んだおさげの髪」という意味で、揚子江源流の細かく分かれた川筋のことです。しかし実際は細かく分かれた川でなく大河が無数に交錯している風景で、それを「細かい川」と表現する!揚子江流域の広大さを感じました。

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雁石坪駅は青海省最後の駅で、氷河の見えるチベット境界の最高所のタングラ峠 5072mを通るときは列車内の空気を加圧して高山病を防いでいた。その先は大きなツォナ湖(チベット語で「神湖」)の縁を走り、最初のチベット駅、那曲(ナクチュ)駅に止まった後は日没になり、ラサ着は21:45の夜になりました。

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ラサの標高は富士山頂とほぼ同じでチベット仏教の聖地。その総本山のポタラ宮は山の斜面を巧みに利用して建てられた6−8階の巨大な建造物で、ダライ・ラマ5世が17世紀に造営した白宮の上に宗教儀式を行う紅宮が載っている。14世がインドに亡命してからは内部が閉鎖され、見学できませんでした。

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ダライ・ラマ不在の民衆の不安と裏腹に、夕刻訪れると宮殿前の池から豪華な噴水と宮殿が照明に浮かび上がっていた。

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翌日ポタラ宮を再訪した後、大昭寺、バルコル街の民芸品店などを訪れました。街では民衆の蜂起を恐れて中国軍の兵隊が沢山警戒に当たっていました。

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最後の日はラサの北、街より標高が1000m以上高い、天空の湖「ナムツオ湖」(納木錯湖)を地図で見つけ、タクシーで行ってみました。途中、チベット鉄道の橋げたが見えました。

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湖へは6000m近い山脈(青唐古拉山)が堺しているので、湖にゆく5170mの峠越えではチベットの峠や山頂に必ずある、タルチョ旗が翻っていました。この峠越えは自分の生涯高所記録(モンテローザ頂上4634m)を更新!

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天空の湖は岩山に囲まれていましたが、意外と広く開放的。しかしその標高は4700mなので売っている酸素ボンベを吸ってみましたが、長旅のおかげで、すでに高所順応している様でした。帰路は峠付近で雪が降りました。

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翌日ヒマラヤに沿って延々と流れるヤルツアンポー川を渡ったところにあるラサ飛行場から、空路重慶経由で東京に帰り、無事チベット高原を巡る11日間の長旅を終えました。
           終わり

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チベット高原と黄河グランドキャニオン(2)黄河大峡谷と青海湖

チベット高原と黄河グランドキャニオン(2)

           黄河大峡谷と青海湖
                                                    河瀬斌 

  「青海省に入ると黄河の上流域にグランドキャニオンがある」と旅行社から聞き、そのルートを通ることにしました(地図赤線)。そこは同仁から高原を下り黄河が支流に合流するところから始まり、貴徳までの黄河上流の峡谷地帯です。その途中には大きな新しいダム湖がありました。

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高原を下って大きな橋で黄河を渡ると、その名とは違った青く澄んだ黄河と赤い断崖、まさに「黄河グランドキャニオン」がそこから始まりました。

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 米国グランドキャニオンとの違いは青い水、そしてそこに人々が暮らしていることでした。その上流には大きなダム湖が建設され、ダムを迂回する道から巨大な青色のダム湖が見下ろせました。黄河の青い水の理由ははこのダムができた結果だったようです。

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ダム湖を過ぎて貴徳の町へはグランドキャニオンを思わせる険しい岩の峡谷沿いの道を走りました。しかし貴徳の「黄河大橋」の近くでは水が穏やかになり「黄河で泳ぐ」こともできました。綺麗な黄河での水浴びはとても快適でした。

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 貴徳に泊まった翌日からは再び高原に登る道になりましたが、高原近くになると民族が全く変わって遊牧民となり、高原ではパオ(遊牧民の家)が多くなりました。パオの中は20畳以上あり、絨毯が敷かれてとても広く快適なのです。道路では山羊の群れが道を塞ぐことも度々ありました。

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 高原をさらに走るとついには見渡す限りの菜の花に囲まれた巨大な青海湖(標高 3250m、琵琶湖の3倍の広さ)に到着しました。対岸は霞んで見えません。この湖は塩湖ですが塩分が薄いので独特の魚(コウ魚)がいるそうです。水牛がたくさん水浴びに来ていました。

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湖のほとりのホテルに泊まった翌日は、チベット(平蔵)鉄道の起点の西寧(シーニン)へ向かいました。

     続く.....(3)チベット鉄道でラサと天空の湖へ


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チベット高原と黄河グランドキャニオン(1)九寨溝から花咲く高原へ

チベット高原と黄河グランドキャニオン(1)
   九寨溝から花咲く高原へ
                   河瀬 斌 

 チベット高原は東西3000km、南北2000km、東は成都、西はカシュガルに及ぶ標高3000-5000mの世界一広大な高原です。2011年8月、その東側に沿って九寨溝から始まり高原を横断し、黄河キャニオンを通って青海湖までに至る、四川省、甘粛省、青海省にまたがる地域を5日間車でドライブ(赤線は九寨溝ー西寧へのドライブの経路)。その後西寧からチベット鉄道(最高所標高 5000m)  でクンルン山脈や揚子江上流を横断、チベット首都ラサに至り、最後に標高4700mの天空の湖(ツォナ湖)を訪ねる、という11日間の大旅行をしました。長い旅なので3回に分けて書きます。
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 北京での学会講演後、直行便で湖と滝が連続する九寨溝へ入りました。ここは成都に近いチベットの入り口で、中国人の人気も高く、飛行場からの専用バスは驚くほどの数のバスで次から次と観光客を整然と!運んでいるのです。しかし公園は広大なのであまり混雑はしませんでした。ここには数え切れないほどの真っ青に澄んだ湖と石灰岩の滝が交互に現れ、その間の散策路を歩きました。青い透明な水中に沈んだ樹木が印象的でとても美しかった。

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九寨溝観光が終わると予約したチベット旅行社の専用タクシーが待っていて、谷から高原へ登るといよいよ中央高原を走る大旅行が始まりました。
 3時間ほど走ると標高3500mの見渡す限り高山植物の咲き乱れる広大な草原(ゾルゲ湿原)に着きました。日本の高山植物に似ているが、より大きな花が多く、ヨツバシオガマ(写真下中央)に似た花やエーデルワイスに似た花もありました(写真下右)。

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その草原で乗馬をする?のは気が引けましたが、「花がかわいそうだ」と感じなくなるほど草原があまりに広大!なので「思い切って乗ろう」と決めました。馬子は顔が細いなかなかの美人!

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 その先には東洋のスイスと言われる郎木寺(タクションラモ)という、美しい部落に宿泊しました。村にはドロミテに似た岩山があり、キルテイゴンパというチベット寺を訪ねると、仏僧たちが曼荼羅を懸命に作成している最中でした。

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翌日甘粛省の合作に入ると、ヤクの放牧地が広がり、民家でヤクのチーズ作りを見たり、昼食では夏目や花の入った美しい茶と焼き鳥風の昼食が出ました。

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 その後青海省の同仁に入るとグランドキャニオンのような赤い絶壁が現れ、それをバックに大きな寺吾屯下寺というこの辺では大きなチベット寺院が建ち、門前にはマニ車(信者が寺に入る時に回す円筒)がずらりと並んでいました。

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この街に宿泊した翌日は、高原を下って、いよいよ黄河のグランドキャニオン地帯に入るのです。この頃、日本語を話す運転手はなんとなく礼儀がなく変な人?と感じていたのですが、(その後わかったことですが)その運転手は実はチベット旅行社の社長さんだった!
      (2) に続く.....

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中国西域ガンダーラの道と高峰を訪ねて

中国辺境山河を歩く(2)    2024年10月24日 


     中国西域ガンダーラの道と高峰を訪ねて

                                                                                                                                      河瀬  斌


   中国西域(新疆自治区)のウルムチ、カシュガルは天山山脈の東西にあり、中央シルクロードオアシスの要衝です。首都ウルムチは近代的都会で、近くのトルファンには多くの唐時代遺跡があります。ウルムチからは北側のカザフスタン、キルギスタンを通る北シルクロードと、西のカシュガルに向かう中央シルクロードが分岐します。現在のウルムチは中国文化とイスラム文化の分岐点で人種も混在しています。

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 しかし現在新疆は中国政府が政治的に反乱要注意としている地域でもあり、この地を踏むことは難しい時代です。幸い私は2019年8月にウルムチで脳神経外科日中友好会議が主催された折、インターネットでカシュガルから西遊記ガンダーラへの道中にある秘境「カラクリ湖」があることに気がつきました。そこには7500mを越す二つの高峰があったのです。

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幸運にも学会の西域出身の人にその秘境カラクリ湖へ行く個人旅行の手配を助けてもらいました。そこで学会後ウルムチからカシュガルに飛び、「カラクリ湖」へ、内密に予約してくれたタクシーで走りました。その幸運な機会を得て、7000mを越すコングール峰、ムズタークアタ峰の二つの高山を直近に望むことができたのです。

 ウルムチは新疆ウイグル自治区の近代的な首都でブドウの産地ですが、標高が低く夏は雨が少なく炎天下なので唐の時代から地下水路が発達してきました。郊外に行くと西には天山山脈が望め、その山岳観光地「天池湖」を訪ねることもできます。

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市の南、トルファンには7世紀唐の時代に西都護府が設置され、立派な都市遺跡「交河故城」などが沢山ありました。

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カシュガル:カシュガルは中国で最も西に位置し、西のタジキスタンとはパミール高原で隔てられています。ウルムチとは中央シルクロードで結ばれています。

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南へはカシミールに抜ける「ガンダーラへの道」があり、その途中にカラクリ湖と二つの高峰があります。

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カシュガルは完全なイスラム都市で、エイテイガール寺院やアパクホーシャ寺院など有名なイスラム寺院があります。


カラクリ湖へ:学会で予約してくれたタクシーに乗り、南のカシミールへ抜ける314号線に入り赤い岩壁を通るとまさにそこは「西遊記」ガンダーラへ道の雰囲気でした。それを過ぎると真っ青な水をたたえた大きなダム湖がありました。

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そこからは頭上にコングール連山の一角が臨めた。

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約3時間のドライブをすると、運転手用の食堂とパオが並ぶ休憩所があり、バックには雪をいただく巨大な高山がありました。その向こうに見える小さな湖が「カラクリ湖」だったのです。湖の標高は3000mを超えていた(なにぶん運転手は片言の英語しか話せないので不明)。昼食は羊の骨と肉片の入ったスープとナーン風のパンを食べました。

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その湖の後ろの巨大な山がムズタークアタ峰(7546m)だったのです。湖から見るとそれは富士山のような火山か火砕丘に見えました。火山の世界最高峰はアンデスのオホスデサラード(6893m),キリマンジャロ(5895m)ですが、もしも火山に分類されれば世界最高峰の火山になるでしょう。

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反対方向には沢山の氷河を抱く巨大な連山が見え、山頂は雲に隠れていましたが、それがコングール峰(7649m) ということがわかりました。

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翌日の帰国の際、カシュガル空港ではパスポートの検閲に30分以上待たされて心配しましたが、無事出国することができ、北京経由で日本に帰国できました。しかしこれが学会の人の補佐がない旅行であれば、拘留されていたかもしれません。

         終わり


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中国辺境山河を歩く(1)四川省のマッターホルン

中国辺境山河を歩く(1)      2024年9月20日

         四川省のマッターホルン

                                                      河瀬 斌

 中国辺境の山河はあまり知られておらず、現在は渡航制限で行くこともできません。幸い私は2004−2019の中国の国内旅行が自由だった時代に、医学講演依頼を受けたついでに自分で旅を企画しました。

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(地図説明) 成都から180キロ、入り口の巴郎山峠は4487mの峠で、下車すると高山症状になることもあります。中心のホテルは日隆鎮(標高3100m)で、そこを起点に3つの谷(双橋溝、長坪溝、海子溝)が伸びています。双橋溝は車が入れ、最もポピュラーで記念碑も沢山あります。湖に「枯木灘、盆景灘」という大正池のような枯れ木が林立しています。長坪溝は双橋溝と似ていますが、車が入れませんので行っていません。海子溝は入り口から四姑娘山の展望台(鍋庄坪3670m)までは車が入れますので晴れたらそこへ行くと良いでしょう。その奥の2つの湖(大海子、花海子)周辺の草地は初夏に花が咲き、写真家に有名ですが、遠く道も悪いので馬を借りないと行けません。歩道入り口に馬子付きの貸し馬がたくさんいます。

 時は20年前、2004年8月、成都の学会の後にツアーに参加し四川省のマッターホルンとされるスークーニャン(四姑娘山6250m)を見にゆきました。

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 成都から小型のバスで二時間乗っているうちに豪雨のため細い山道は土砂が流れ出し通行止めに。雨が止んだ後、道から転落した車を引き上げている現場を見ると、「ここは中国!」と背筋が寒くなりました。途中パンダの放し飼いの里がありました。

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 その後標高4000mを超える巴郎峠を越すと3400mの高原中心地の日隆鎮(賓客用ホテル)に着きました。ここはすでにチベットなので、夕食には真っ黒な「ヤクの肉」とバター茶が出ました。

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 最初の高原(双橋溝)は高山に囲まれた草原や、大正池のように枯れ木の林立した池のある、上高地に似た景色でしたが、チベットの入り口なので少数民族の子供たちがたくさんいました。

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 翌日は乗馬ができると聞いていたので、値段を聞くと1頭わずか1200円で1日乗れる(馬子付き)というので、2頭を借りて、18キロ先の花海子(湖)まで行くことにしました。馬子はドロドロの道を平気で馬を引いて歩いてゆきます。チベット族は小柄でとても足が強いのです。

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 18キロ先の湖(花海子)周囲の草原は、季節が遅いので花が咲いていませんでしたが、7月は綺麗だったでしょうね。しかし往復に10時間も馬に乗ったので、さすがにお尻が痛くなりました。
ぼーっとした天気でしたが、途中雪に覆われた6250mの四川のマッターホルン、スークーニャンの絶頂が見えたので満足でした。

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 帰りの巴郎峠では夏でも雪が降って道路は真っ白になりました。
20年前の中国はワンゲル的自由旅行が安くできたと同時に、少々危ない思いも体験したのです。  終わり





          

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