2006年 02月 02日
米投資銀行の「四季」 |
アメリカの投資銀行には、結構はっきりとした「四季」があります。毎年忙しい時期と忙しくない時期がかなりはっきりとしていると言う意味ですが、その「波」には実際の四季も関係している気がします。
<冬(1月~4月前半)>
多くの米系投資銀行は、11月末を年度末として、12月~11月と言うサイクルで動いています。ただ12月がいわゆる「ホリデーシーズン」であることもあり、年初めはやはり1月、と言ったムードです。以前にも書いたように、アメリカでは正月は大した意味を持っていないので、1月2日からフル回転で仕事が始まります。
1月から3月までは、どこも1年間のバジェット達成のために出来るだけ多くのディールを獲得しようとし、一年で一番忙しい時期となります。(バジェット、つまり目標収益は、前年のフィーを幾ら稼いだかがベースになって決まります。そしてその額は毎年増額していくわけです。)この時期には祝日もほとんどなく、NYは平均気温が摂氏ゼロ度以下といった最悪の冬の時期です。NYの冬は全般的に天気も悪く、週末なども出かけたりするムードでないことも、ますます「仕事一本」のムードを助長している気がします。
ただこの時期には、多くの投資銀行がボーナスの支払いを行うため、みんな車やボートのパンフレットを見たり、アパートの購入を考えたりとそわそわしています。次のボーナスまで一年あるかと思うと恐ろしいですが、多忙な時期の中で唯一の楽しみといえるかもしれません。また人材の流動性が高いウォールストリートでは、ボーナスをもらった後には必ず何人かが辞めてしまいます。ヘッドハンターもこの時期に引き抜き攻勢をかけてくるため、なかなか興味深い時期ではあります。
<春(4月後半~6月)>
NYは4月の後半から急速に暖かくなり、6月終わりくらいまでは基本的に晴天の続く最高の季節を向かえます。この時期にはイースターがあって長い休みを取る人が多いことと、長かった冬が終わってみんな何となく浮き足立ってくることなどから、仕事がスローダウンします。
ちなみに休暇については、一年に一週間の休みが数回取れると言う感じです。そう考えると悪くないですが、休暇先からもカンファレンスコールに乗ったりと、何だかあまりリラックス出来ない感じはあります。まあDay-to-dayの仕事をやらなくてよいだけでも良いですが。
この時期の終わりには「ミッドイヤー・レビュー」(中間査定)があり、年前半のパフォーマンスについてのフィードバックセッションが行われます。よってあまり仕事に気が入っていないようだと、ここで厳しいフィードバックを受けてしまうこともあります。
<夏前半(7月、8月)>
雨季の無いNYでは、春から突然夏になります。文字通り数日の間に気温も突然15度くらいから30度近くに跳ね上がり、気がついたら夏に突入しています。
夏の間は、年の前半に仕込んだプロジェクトが佳境をむかえていくこともあり、仕事量としては結構多いのですが、MBAからサマーアソシエイトが、学士からサマーアナリストが入って来ることで、人手と言う意味では結構な助けになります。投資銀行では卒業一年前のMBAや学士の学生をインターンとして採用し、仕事を実際にさせることで採用の判断基準にしています。よってインターンの学生達は内定を獲得するために必死に働きますし、投資銀行としても夏の間に充実した経験をして学校に戻ってもらうために、どんどん面白い仕事を振ります。その結果、フルタイムの社員にとっては若干仕事が減ることになり、これが特にジュニアバンカーにとっては大きな助けになります。
また、9月入社の学卒3年目までのアナリスト達は、8月にボーナスが支払われます。アナリストは基本的には2年契約での採用のため、多くのセカンドイヤー・アナリストが、3年目に昇進する道ではなく、辞めてプライベートエクイティなどの道に進みます。サマーインターンは、そんな彼ら・彼女らが抜けた穴を一時的にふさぐと言う役割も果たしているように思います。
<夏後半・秋(9月~11月)>
そして9月頭のレイバーデイを境に、また仕事がフル回転し始めます。9月の第一週から「なぜ?」と言うくらいサマームードは消え去り、冬と同様のフル回転の時期を迎えます。サマーインターンが去った後にはフルタイムの1年目アナリストとアソシエイトが入ってくるのですが、研修期間との関係で若干のブランクが発生し、その時期は人手不足で非常に苦しむことになります。
個人的にはフットボールシーズンと野球のプレイオフのシーズンなので非常に好きな時期ですが、仕事と言う意味では冬と同じくらい忙しいです。それでもボーナス発表まで数ヶ月と言うことが、気持ち的にはサポートになります。
そうこうしているうちに10月になり、フルイヤー・レビュー(年度末査定)の時期になり、バタバタと働いているうちに11月末の年度末を迎えます。NYは11月末のサンクスギビングの周辺から急激に気温が下がり、本格的に冬に突入します。
<ホリデーシーズン>
12月のホリデーシーズンは、一般に思われているほど暇ではありません。NYの街は全米(全世界?)から集まる買い物客で溢れ、ホテル代も信じられないくらい高騰しますが、投資銀行ではむしろ年末の「駆け込み」プロジェクトなどで、秋から引続いて忙しいことが多いです。アメリカ人にとっては結構大きな休日であるサンクスギビングの週末も、若手は休めない人も多いようですし、最悪の場合にはクリスマスホリデーも取れない場合もあります。かつてはマーケットも12月には休暇ムードになると言われていましたが、そもそもバンキングにはあまり関係ないことと、最近では12月にも投資家カンファレンスやら大型案件の発表やらが多くあり、とても休暇ムードと言う感じではありません。
それでもウォールストリートにとって12月は一年のハイライトで、月の中ごろに通年のパフォーマンスとボーナスの発表があります。よって12月に入ると話題はボーナスに一本化し、「判決の日」までの苦痛な(?)数週間を過ごすことになります。ボーナスが発表された後は、特に12月20日くらいからみんながクリスマス休暇で実家に帰ったりバケーションに行ってしまうため、開店休業状態になります。
長々と書いてしまいましたが、要は今が一年で一番忙しい時期と言うわけで、寒い上に長時間労働なため、毎年この時期が来るのが恐ろしいです。そしてその事について色々文句を言っていると、半ば呆れた友人から、「何のためにそんなに働くのか」と突っ込まれます。確かに労働環境は厳しいですが、まあ当然理由と言うかインセンティブがあって働いているわけです。そのことはまた機会があったら書きたいと思います。
<冬(1月~4月前半)>
多くの米系投資銀行は、11月末を年度末として、12月~11月と言うサイクルで動いています。ただ12月がいわゆる「ホリデーシーズン」であることもあり、年初めはやはり1月、と言ったムードです。以前にも書いたように、アメリカでは正月は大した意味を持っていないので、1月2日からフル回転で仕事が始まります。
1月から3月までは、どこも1年間のバジェット達成のために出来るだけ多くのディールを獲得しようとし、一年で一番忙しい時期となります。(バジェット、つまり目標収益は、前年のフィーを幾ら稼いだかがベースになって決まります。そしてその額は毎年増額していくわけです。)この時期には祝日もほとんどなく、NYは平均気温が摂氏ゼロ度以下といった最悪の冬の時期です。NYの冬は全般的に天気も悪く、週末なども出かけたりするムードでないことも、ますます「仕事一本」のムードを助長している気がします。
ただこの時期には、多くの投資銀行がボーナスの支払いを行うため、みんな車やボートのパンフレットを見たり、アパートの購入を考えたりとそわそわしています。次のボーナスまで一年あるかと思うと恐ろしいですが、多忙な時期の中で唯一の楽しみといえるかもしれません。また人材の流動性が高いウォールストリートでは、ボーナスをもらった後には必ず何人かが辞めてしまいます。ヘッドハンターもこの時期に引き抜き攻勢をかけてくるため、なかなか興味深い時期ではあります。
<春(4月後半~6月)>
NYは4月の後半から急速に暖かくなり、6月終わりくらいまでは基本的に晴天の続く最高の季節を向かえます。この時期にはイースターがあって長い休みを取る人が多いことと、長かった冬が終わってみんな何となく浮き足立ってくることなどから、仕事がスローダウンします。
ちなみに休暇については、一年に一週間の休みが数回取れると言う感じです。そう考えると悪くないですが、休暇先からもカンファレンスコールに乗ったりと、何だかあまりリラックス出来ない感じはあります。まあDay-to-dayの仕事をやらなくてよいだけでも良いですが。
この時期の終わりには「ミッドイヤー・レビュー」(中間査定)があり、年前半のパフォーマンスについてのフィードバックセッションが行われます。よってあまり仕事に気が入っていないようだと、ここで厳しいフィードバックを受けてしまうこともあります。
<夏前半(7月、8月)>
雨季の無いNYでは、春から突然夏になります。文字通り数日の間に気温も突然15度くらいから30度近くに跳ね上がり、気がついたら夏に突入しています。
夏の間は、年の前半に仕込んだプロジェクトが佳境をむかえていくこともあり、仕事量としては結構多いのですが、MBAからサマーアソシエイトが、学士からサマーアナリストが入って来ることで、人手と言う意味では結構な助けになります。投資銀行では卒業一年前のMBAや学士の学生をインターンとして採用し、仕事を実際にさせることで採用の判断基準にしています。よってインターンの学生達は内定を獲得するために必死に働きますし、投資銀行としても夏の間に充実した経験をして学校に戻ってもらうために、どんどん面白い仕事を振ります。その結果、フルタイムの社員にとっては若干仕事が減ることになり、これが特にジュニアバンカーにとっては大きな助けになります。
また、9月入社の学卒3年目までのアナリスト達は、8月にボーナスが支払われます。アナリストは基本的には2年契約での採用のため、多くのセカンドイヤー・アナリストが、3年目に昇進する道ではなく、辞めてプライベートエクイティなどの道に進みます。サマーインターンは、そんな彼ら・彼女らが抜けた穴を一時的にふさぐと言う役割も果たしているように思います。
<夏後半・秋(9月~11月)>
そして9月頭のレイバーデイを境に、また仕事がフル回転し始めます。9月の第一週から「なぜ?」と言うくらいサマームードは消え去り、冬と同様のフル回転の時期を迎えます。サマーインターンが去った後にはフルタイムの1年目アナリストとアソシエイトが入ってくるのですが、研修期間との関係で若干のブランクが発生し、その時期は人手不足で非常に苦しむことになります。
個人的にはフットボールシーズンと野球のプレイオフのシーズンなので非常に好きな時期ですが、仕事と言う意味では冬と同じくらい忙しいです。それでもボーナス発表まで数ヶ月と言うことが、気持ち的にはサポートになります。
そうこうしているうちに10月になり、フルイヤー・レビュー(年度末査定)の時期になり、バタバタと働いているうちに11月末の年度末を迎えます。NYは11月末のサンクスギビングの周辺から急激に気温が下がり、本格的に冬に突入します。
<ホリデーシーズン>
12月のホリデーシーズンは、一般に思われているほど暇ではありません。NYの街は全米(全世界?)から集まる買い物客で溢れ、ホテル代も信じられないくらい高騰しますが、投資銀行ではむしろ年末の「駆け込み」プロジェクトなどで、秋から引続いて忙しいことが多いです。アメリカ人にとっては結構大きな休日であるサンクスギビングの週末も、若手は休めない人も多いようですし、最悪の場合にはクリスマスホリデーも取れない場合もあります。かつてはマーケットも12月には休暇ムードになると言われていましたが、そもそもバンキングにはあまり関係ないことと、最近では12月にも投資家カンファレンスやら大型案件の発表やらが多くあり、とても休暇ムードと言う感じではありません。
それでもウォールストリートにとって12月は一年のハイライトで、月の中ごろに通年のパフォーマンスとボーナスの発表があります。よって12月に入ると話題はボーナスに一本化し、「判決の日」までの苦痛な(?)数週間を過ごすことになります。ボーナスが発表された後は、特に12月20日くらいからみんながクリスマス休暇で実家に帰ったりバケーションに行ってしまうため、開店休業状態になります。
長々と書いてしまいましたが、要は今が一年で一番忙しい時期と言うわけで、寒い上に長時間労働なため、毎年この時期が来るのが恐ろしいです。そしてその事について色々文句を言っていると、半ば呆れた友人から、「何のためにそんなに働くのか」と突っ込まれます。確かに労働環境は厳しいですが、まあ当然理由と言うかインセンティブがあって働いているわけです。そのことはまた機会があったら書きたいと思います。
by harry_g
| 2006-02-02 10:50
| キャリア・仕事