2005年 09月 26日
「投資銀行」って何? |
ブログの内容が専門的なので、そもそも「投資銀行」とは何か、「プライベートエクイティ」って何か、「ヘッジファンド」って何か、という事を、簡単に説明してみます。(今からアメリカは採用シーズンなので、採用の説明会でも同様の話をしています。)あくまで業界外の人向けですので、ご了承下さい。
「投資銀行」とは
投資銀行は、アメリカで言う「Investment Bank」の日本語訳で、一言でいうと「証券会社」です。アメリカでは、個人投資家を相手にする会社(証券会社=Broker)と、機関投資家(運用を専業にする会社)を主に相手にする会社(投資銀行=Investment Bank)が分けて考えられるため、別々の用語になっています。 Investment Bankを略してIBとか呼ばれます。
証券業界(ウォールストリート)の仕事は、簡単に言うと、お金のある人とない人の仲介業務です。お金が無い人(企業、国家など)が発行する証券(株、債券など)を、お金がある人(投資家)に直接販売し、販売手数料を取るので、「直接金融」と言われています。
これは、銀行のように、一度お金を預かって自分のバランスシートに乗せ、それを貸し出したりして運用する「間接金融」と異なります。また、最近投資銀行が活発に行っているプリンシパル・インベストメントは、自らが仲介者としてではなく投資家として、自らのお金で資産(会社や不動産)を買収する事業を言います。
投資銀行の内部には、大きくわけて二つの機能があります。 一つは、お金が無い人(企業など)の為に、その人と相談して色々な資金調達方法を考える機能。 もう一つは、お金がある人(投資家)に向けたサービスで、彼らが既に持っている証券を売買したり(セカンダリー業務)、お金がない人が発行した証券を売ったり(プライマリー業務)、リサーチを提供したりする機能です。
前者を担当するのが「投資銀行部(IBD, Investment Banking Division)」で、後者を担当するのが、いわゆるマーケットサイド、株式部(Equities)、債券部(FID, Fixed Income Division)、株式調査部(Equity Research)です。また、IBDとマーケットサイドの間に入ってプライマリー機能を補佐する部署を、Global Capital Markets(GCM)と呼んでいます。
つまり証券は、
企業→[投資銀行部・GCM→株式・債券部]→投資家
という感じで流れて、お金は、
企業←[投資銀行部・GCM←株式・債券部]←投資家
という感じで流れるわけです。
IBDの業務内容とプライベートエクイティ
投資銀行部(IBD)の業務内容は、基本的には企業の資金調達のお手伝いです。例えばIPO(Initial Public Offering、株式上場)なども、初めて企業が自分の会社の株を市場に放出して、資金調達をする行動になります。株式以外にも、転換社債、普通社債、ハイイールド債など、様々な資金調達方法があり、会社とマーケットの状況に応じて、もっとも適切な方法を提案し、実際に証券の引き受け・販売を行います。
そして、その資金調達業務の延長上に、M&A(Mergers & Acquisitions、合併買収)があります。投資銀行は、資金調達能力や企業価値の算定能力を生かし、M&Aの際には、買収企業の価値を算出したり、買収資金を調達したり、色々お手伝いをします。業務の多くに法律的なことが絡むため、元弁護士のバンカーも多いです。
そして最近ブログによく書いているLBOも、そのM&Aのための資金調達方法のひとつです。LBOは、Leveraged Buyout、つまり多額の負債を利用した企業の買収です。そして、それを専業にしているファンドを、LBOファンドとかPE(Private Equity)ファンドと呼びます。
ちなみにPrivate Equity(PE)とは「未上場株」を意味し、Public Equity(上場株)、つまり一般に皆さんが目にする株と区別されます。PEファンドは、LBOの際のエクイティ部分を出資します。未上場株は、上場株と比べて当然流動性は全くないわけで、投資リスクは極めて高くなります。PEファンドも広義の「投資家」ですが、M&Aを専業にしている事業法人、のようなものなので、基本的にはIBDのクライアントになります。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンド(HF)とは、株式部や債券部のクライアントである「投資家」の中でも、最もアクティブに、市場環境に関わらず絶対的リターンを追及する投資ファンドのことです。それに対して投資信託(Mutual Fund)は、基本的に市場の動きを代表する指標(日経平均など)との相対的パフォーマンスを基準に、長期安定投資を行う投資家です。
ヘッジファンドがリスキーな存在であると言うイメージは、かつてグローバルマクロファンドと呼ばれる、巨額の為替や債券を扱うファンドが、イギリスやアジアの通貨を暴落させたりしたせいで、一般に広がりました。ただ実際は、そういったファンドは今では影を潜め、大半のファンドが普通に株式の売買(ロング・ショート)をしています。
ちなみに「ロング」とは買い持ちポジションのこと、「ショート」とは空売りによる売り持ちポジションのことです。ヘッジファンドは、投資信託が禁じられている「ショート」と言う投資行動を用いて、ロングポジションのマーケットリスク、つまり、良い株を持っているのに市場全体の動きにつられて値下がりするリスク、をヘッジする戦略を取っています。(それで「ヘッジ」ファンドと呼ばれます。)
最近の傾向として、ヘッジファンドに多額の資金が流入していることもあり、ヘッジファンドは市場で株や債券の売買をするだけでなく、PEファンドのように流動性の低い資産への投資を活発化させています。その流れのなかで、投資銀行内部でも、かつての株式部や債券部のみならず、投資銀行部サイドでも、ヘッジファンドとの接点がかなり出てきています。
以上、簡単ですが、業界用語の説明でした。
「投資銀行」とは
投資銀行は、アメリカで言う「Investment Bank」の日本語訳で、一言でいうと「証券会社」です。アメリカでは、個人投資家を相手にする会社(証券会社=Broker)と、機関投資家(運用を専業にする会社)を主に相手にする会社(投資銀行=Investment Bank)が分けて考えられるため、別々の用語になっています。 Investment Bankを略してIBとか呼ばれます。
証券業界(ウォールストリート)の仕事は、簡単に言うと、お金のある人とない人の仲介業務です。お金が無い人(企業、国家など)が発行する証券(株、債券など)を、お金がある人(投資家)に直接販売し、販売手数料を取るので、「直接金融」と言われています。
これは、銀行のように、一度お金を預かって自分のバランスシートに乗せ、それを貸し出したりして運用する「間接金融」と異なります。また、最近投資銀行が活発に行っているプリンシパル・インベストメントは、自らが仲介者としてではなく投資家として、自らのお金で資産(会社や不動産)を買収する事業を言います。
投資銀行の内部には、大きくわけて二つの機能があります。 一つは、お金が無い人(企業など)の為に、その人と相談して色々な資金調達方法を考える機能。 もう一つは、お金がある人(投資家)に向けたサービスで、彼らが既に持っている証券を売買したり(セカンダリー業務)、お金がない人が発行した証券を売ったり(プライマリー業務)、リサーチを提供したりする機能です。
前者を担当するのが「投資銀行部(IBD, Investment Banking Division)」で、後者を担当するのが、いわゆるマーケットサイド、株式部(Equities)、債券部(FID, Fixed Income Division)、株式調査部(Equity Research)です。また、IBDとマーケットサイドの間に入ってプライマリー機能を補佐する部署を、Global Capital Markets(GCM)と呼んでいます。
つまり証券は、
企業→[投資銀行部・GCM→株式・債券部]→投資家
という感じで流れて、お金は、
企業←[投資銀行部・GCM←株式・債券部]←投資家
という感じで流れるわけです。
IBDの業務内容とプライベートエクイティ
投資銀行部(IBD)の業務内容は、基本的には企業の資金調達のお手伝いです。例えばIPO(Initial Public Offering、株式上場)なども、初めて企業が自分の会社の株を市場に放出して、資金調達をする行動になります。株式以外にも、転換社債、普通社債、ハイイールド債など、様々な資金調達方法があり、会社とマーケットの状況に応じて、もっとも適切な方法を提案し、実際に証券の引き受け・販売を行います。
そして、その資金調達業務の延長上に、M&A(Mergers & Acquisitions、合併買収)があります。投資銀行は、資金調達能力や企業価値の算定能力を生かし、M&Aの際には、買収企業の価値を算出したり、買収資金を調達したり、色々お手伝いをします。業務の多くに法律的なことが絡むため、元弁護士のバンカーも多いです。
そして最近ブログによく書いているLBOも、そのM&Aのための資金調達方法のひとつです。LBOは、Leveraged Buyout、つまり多額の負債を利用した企業の買収です。そして、それを専業にしているファンドを、LBOファンドとかPE(Private Equity)ファンドと呼びます。
ちなみにPrivate Equity(PE)とは「未上場株」を意味し、Public Equity(上場株)、つまり一般に皆さんが目にする株と区別されます。PEファンドは、LBOの際のエクイティ部分を出資します。未上場株は、上場株と比べて当然流動性は全くないわけで、投資リスクは極めて高くなります。PEファンドも広義の「投資家」ですが、M&Aを専業にしている事業法人、のようなものなので、基本的にはIBDのクライアントになります。
ヘッジファンドとは
ヘッジファンド(HF)とは、株式部や債券部のクライアントである「投資家」の中でも、最もアクティブに、市場環境に関わらず絶対的リターンを追及する投資ファンドのことです。それに対して投資信託(Mutual Fund)は、基本的に市場の動きを代表する指標(日経平均など)との相対的パフォーマンスを基準に、長期安定投資を行う投資家です。
ヘッジファンドがリスキーな存在であると言うイメージは、かつてグローバルマクロファンドと呼ばれる、巨額の為替や債券を扱うファンドが、イギリスやアジアの通貨を暴落させたりしたせいで、一般に広がりました。ただ実際は、そういったファンドは今では影を潜め、大半のファンドが普通に株式の売買(ロング・ショート)をしています。
ちなみに「ロング」とは買い持ちポジションのこと、「ショート」とは空売りによる売り持ちポジションのことです。ヘッジファンドは、投資信託が禁じられている「ショート」と言う投資行動を用いて、ロングポジションのマーケットリスク、つまり、良い株を持っているのに市場全体の動きにつられて値下がりするリスク、をヘッジする戦略を取っています。(それで「ヘッジ」ファンドと呼ばれます。)
最近の傾向として、ヘッジファンドに多額の資金が流入していることもあり、ヘッジファンドは市場で株や債券の売買をするだけでなく、PEファンドのように流動性の低い資産への投資を活発化させています。その流れのなかで、投資銀行内部でも、かつての株式部や債券部のみならず、投資銀行部サイドでも、ヘッジファンドとの接点がかなり出てきています。
以上、簡単ですが、業界用語の説明でした。
by harry_g
| 2005-09-26 23:51
| キャリア・仕事