1相コミットメント
「コミットできる?」の確認なしで「コミットして!」と指示するよ
「2相コミットメント」と対比されることが多いよ
簡単に書くよ
1相コミットメント(読:イッソウコミットメント 英:one-phase commitment)とは
分散データベース(1つのデータベースっぽく扱っている複数のデータベース)で、まず全部のデータベースに対して「処理を確定できる?(コミットできる?)」と聞いて、全部のデータベースから「できるよー!」と返事が来たら、全部のデータベースに対して「処理を確定して!(コミットして!)」と指示するやり方を「2相コミットメント」と言うのですけどね。そうではなく、いきなり一発で「処理を確定して!(コミットして!)」と指示するやり方
です。
詳しく書くよ
順番に見ていきましょう。
まずは予備知識として
・データベース
・テーブル
・分散データベース
・トランザクション
・コミット
・ロールバック
・2相コミットメント
について説明します。
「そんなの説明されなくても知ってるよ!」な人は適当に読み飛ばしてください。
データベースは「データを入れておく箱」です。
ただし「データベース」という用語は、実際には、もう少し複雑な概念です。
データを入れておく箱そのものは「テーブル」と言います。
とりあえず
データベースの話において、実際にデータを入れておく箱がテーブル
と覚えてください。
分散データベースは「なんちゃって1つのデータベース」です。
実際には複数のデータベースで構成されているけど、それらをまとめて1つのデータベースっぽく扱っているデータベースです。
トランザクションは「ここからここまでワンセット」な処理単位です。
例えば、そうですね。
ピヨ太君がピヨピヨカンパニーに出社するとしましょう。
ピヨ太君はピヨピヨカンパニービルに到着すると
1.私服からスーツに着替える
2.タイムカードを押す
3.コーヒーを飲みながらケーキを食べる
の3つの行動をします。
この3つの行動が、ピヨ太君が出社した状態になるためにやる作業です。
いわば、ピヨ太君の「出社作業」です。
出社作業が終わったら、ピヨ太君はピヨ太ママに「ピヨ太です。出社しました」と連絡を入れます。
これでピヨ太君は出社した状態になります。
繰り返しになりますが、ピヨ太君の出社作業は
1.私服からスーツに着替える
2.タイムカードを押す
3.コーヒーを飲みながらケーキを食べる
の3つの行動です。
この3つの行動は、どれか1つでも欠けてはダメです。
すべての行動を一連の流れでやる必要があります。
このような
「ここからここまでワンセット」な処理単位
がトランザクションです。
小難しい言い方をすると「分割不可な一連の処理」です。
コミットは「トランザクション処理の結果を確定させる処理」です。
先ほどのピヨ太君の話を思い出してください。
出社作業をやっている最中は、ピヨ太君の状態は「出社中」です。
対外的には、出社したことには、なっていません。
ピヨ太君はピヨ太ママに「出社しました」と連絡を入れました。
これでピヨ太君は、対外的にも「出社済み」になりました。
ピヨ太ママに連絡を入れる作業がコミットに相当します。
トランザクション処理は「ここからここまでワンセット」な処理です。
当たり前ですが、やっている途中はやりかけです。
対外的には、やったことには、なっていません。
コミットをすることによって、対外的にも、やったことになります。
トランザクション処理の結果が本体に反映されます。
一連の「ここからここまでワンセット」な処理が終わり「やるべきことはやり終わったから、やり終わったことにするよ!」と対外的に宣言するのがコミットです。
ロールバックは「やりかけのトランザクション処理を取り消して何もしなかった状態に戻すこと」です。
先ほどのピヨ太君の例を思い出してください。
ピヨ太君の出社作業は
1.私服からスーツに着替える
2.タイムカードを押す
3.コーヒーを飲みながらケーキを食べる
の3つの行動でした。
これが終わってピヨ太ママに「出社しました」と連絡を入れると出社済みになります。
ピヨ太君は毎日順調に出社作業をしていました。
ところが、ある日のことです。
ピヨ太君のタイムカードが見当たりませんでした。
これではタイムカードが押せません。
ふて腐れたピヨ太君は、私服に着替えて帰ってしまいました。
出社作業を取り消して、ピヨピヨカンパニービルに来る前の状態に戻ってしまったわけです
このような
やりかけの「ここからここまでワンセット」な処理を取り消して、やらなかった状態に戻す
のがロールバックです。
処理というのは、いつでも上手くいくとは、かぎりません。
トランザクション処理も同じです。
やっている最中で何らかの理由により失敗することがあります。
処理が失敗するのは仕方ありません。
ですが、やりかけの状態で止まってしまうのは、とても中途半端です。
そこで、やりかけの処理結果を捨てて、やる前の状態に戻します。
「中途半端な状態で残るくらいなら何も残ってない方がマシだ!」の心意気です。
この「やりかけの処理結果を捨てて、やる前の状態に戻す」作業がロールバックです。
2相コミットメントは「分散データベースにおいて、まず全部のデータベースに『コミットできる?』と聞き、全部のデータベースから『できるよー!』と返事が来たら、全部のデータベースに対して『コミットして!』と指示するやり方」です。
例えば、そうですね。
ピヨ太君はケーキ屋さんをやっています。
ピヨ太君のケーキ屋さんでは、売上と在庫をデータベースで管理しています。
売上は売上データベースで管理し、在庫は在庫データベースで管理しているのです。
ちなみに「1つのデータベースで管理すれば?」と思うかもしれませんが、気にしないでください。
説明上の都合です。
さらにピヨ太君は、売上データベースと在庫データベースを合体させたつもりになって、ピヨピヨケーキショップデータベースとして扱っています。
ピヨピヨケーキショップデータベースは分散データベースです。
実際には複数のデータベースで構成されていますが、1つのデータベースっぽく扱われています。
ある日のことです。
ピヨ子さんがケーキを100個ほど買ってくれました。
ピヨ太君は売上データベースに売上を記録します。
あと、在庫データベースに在庫が減ったこと(減った後の在庫数)を記録します。
売上データベースの更新と在庫データベースの更新は2つでワンセットです。
どちらか片方しか更新できないと「ケーキが売れたはずなのに在庫が減っていない」のような、おかしな状態になります。
売上データベースの更新と在庫データベースの更新は「ここからここまでワンセット」なトランザクション処理なわけです。
そこでピヨ太君は、2つのデータベースを同時にコミットすることにしました。
どちらの更新も問題なければ両方ともコミットし、どちらかで何か問題が起きたら両方ともロールバックすることにしたのです。
まずピヨ太君は売上データベースを更新しました。
このときコミットはしません。
処理が確定していない状態で一旦置いておきます。
次にピヨ太君は在庫データベースを更新しました。
このときもコミットはしません。
処理が確定していない状態で一旦置いておきます。
次にピヨ太君は両方のデータベースに対して「問題は起きなかった?コミットしても大丈夫?」と聞きます。
両方のデータベースから「大丈夫だよー!」と返事が来ました。
どうやら問題は起きていないようです。
ピヨ太君は両方のデータベースに対して「コミットしてー!」と言いました。
これで両方のデータベースが同時にコミットされます。
もし、途中で何か問題が起きていたら、両方のデータベースをロールバックします。
やりかけの処理を取り消すのです。
そうすれば何もやらなかった状態に戻ります。
この話においてピヨ太君がやったような
1.対象のデータベースを全部更新(コミットはしない)
2.全部のデータベースに対して「コミットして大丈夫?」と聞く
3-1.大丈夫そうだったら、全部のデータベースに対して「コミットして!」と指示する
3-2.大丈夫じゃなさそうだったら、全部のデータベースに対して「ロールバックして!」と指示する
コミットのやり方が2相コミットメントです。
売上情報と在庫情報が1つのデータベースに(別テーブルとして)入っていたら
1.売上テーブル更新
2.在庫テーブル更新
3.コミット
で済みますけどね。
データベースが違うと物理的に1つのトランザクションとして扱えません。
そこで2相コミットメントとかをして、1つのトランザクションっぽく扱うのです。
以上を踏まえて
『コミットできる?』の確認なしで、いきなり『コミットして!』と指示するやり方
が「1相コミットメント」です。
2相コミットメントは
1.「コミットできる?」を確認する
2.「コミットして!」と指示する
の2段階踏みます。
それに対して1相コミットメントは
1.「コミットして!」と指示する
の1段階なやり方です。
一言でまとめるよ
まぁ「1相コミットメント」って単語が出てきたら「『コミット(「ここからここまでワンセット」な処理(トランザクション処理)の結果を確定させる処理)できる?』の確認なしで『コミットして!』と指示するやり方なんだな~」と、お考えください。
おまけ
■訳してみるよ
「1相」は日本語ですね。
「commitment(コミットメント)」の意味は「委託」とか「委任」とか「約束」とかです。
何となくくっつけると
1相約束
となります。