- 作者: 鈴木智彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2011/02/17
- メディア: 新書
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本のタイトルや帯はやや扇情的ですが、
中身はむしろ淡々として、突き放した筆致です。
歌舞伎町、飛田新地、釜ヶ崎その他、生々しい実態が描かれていますが――私がとりわけ興味を寄せたのは、著者ご自身の葛藤・失敗についての記述です。つまりこの本は、単に対象についてのルポというより、「ヤクザについて書くこと」そのものについての貴重な現場報告に「も」なっています。
過剰にヤクザに肩入れしたり、逆に罵倒が前提になったりするのではなく、あるいはデータ一辺倒の「客観性」に終わるのでもない。15年にもわたって濃密な(しかし距離感のある)関係を生きながら、論じる自分を内省的に、また社会的に位置づけ直す――その手探りについても書いてある。著者の葛藤を理解することが、いつの間にか読者を自省や状況理解に導くところがあります。*1
ヤクザを論じるからこそ、
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- その対象と自分がどう付き合うのか
- 論じる自分が相手に感化されすぎていないか
- ネタとして利用するだけではないか、そのことを相手も知って計算ずくで接しているのではないか
といったことを論じるスタンスになるのかもしれませんが、
本来これは、どういう対象を論じるにも必要な検証努力ではないでしょうか。*2
私は、ヤクザを論じた書物の文脈に詳しくないので、この本を位置づけることはうまくできませんが、いわゆる実話誌的な記事に興味のないかたにも、この本はおススメです。