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     あらゆるダイエットは、短期的には、体重を減らす効果が確かにある。
     それぞれのダイエットを比較すると、その効果の差は、個人差に埋もれてしまうくらいに大差ない。
     しかし長期的には、どんなダイエットをした人でも、ほとんどすべてといってもいいくらいの確率で、元の体重に戻ってしまう。

     体重がリバウンドするのではない。その人の生活が(あるいは人生が)リバウンドするのだ。 
     「ダイエット」という特別な期間が終わり、通常の生活に戻ると、体重も元に戻る。

     「健康的」とされる体重を維持する、ほとんど唯一の方法は、最初から太らないことである。


     しかし、これではいくら正しくても仕方がない。

     次の実験は、ランダム化比較テスト(RCT)*1を用いたもので、ホテルのベッドメイクを行う従業員を対象に行ったものである。

    *1 データの偏り(バイアス)を軽減するため、 被験者を無作為(ランダム)に処置群(治験薬群)と比較対照群(プラセボ群など)に割り付けて実施し、評価を行う試験。RCT)

    A.J. Crum, E.J. Langer(2007) Mind-set matters: exercise and the placebo effect. Psychological Science, 18(2):165-71.
    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17425538


     従業員は、生活習慣、食生活、身長・体重・血圧などが、実験の前に調べられ、無作為(ランダム)に2つのグループに分けられた。
     一方のグループは運動が体重や健康に与える影響が一般論として教授された。もう一方のグループには運動が体重や健康の一般論に加えて、ベッドメイクのそれぞれの作業が具体的にどれくらいのカロリー消費があるかが詳しく伝えられた。
     それから4週間後、再び生活習慣、食生活、身長・体重・血圧などが調べられた。念のため、支配人とともに従業員全員のシフトと働きぶりがチェックされ、二つのグループに差がなかったことが確認された。

     各作業ごとの消費カロリーを詳しく教えられたグループの方だけが、大きく体重が減少し、脂肪度指数とウェスト・ヒップ比が下がり、血圧も下がった。
     ベッドメイクの仕事は、もともとかなりカロリーを消費するものである。それでも、その効果を具体的に知ることが必要であるらしい。

     つまり必要な変化はすでに起こっているのだ。

     以下の表は、あなたの「普通の生活」での消費カロリーを細かく見てフィードバックが得られるように、国立健康・栄養研究所の健康増進プログラムのページhttp://www.nih.go.jp/eiken/programs/program_kenko.html で公開されているメッツ値表(metabolic equivalents)表 http://www.nih.go.jp/eiken/programs/pdf/mets_n.pdf をもとに、1週間の消費カロリーを計算できるようにしたものである*2。

    *2 METS(metabolic equivalents)を使って消費カロリーを求めるには次の式を使う。
     1時間あたりの消費カロリー(kg)=1.05×METS×体重(kg)
     これを使って、1分あたり消費カロリー=METSとなるよう体重を63kgに設定している。
     計算式から分かるように、体重が二倍なら単純に2を掛ければいい。体重95kgの人なら約1.5倍だ。
     このエクセルファイル http://psychotoolbox.web.fc2.com/Calorie_a_Day.xlsでは、自動的に計算してくれる。

    A 活動B 1分間で消費されるカロリー(kcal)C 日常生活で毎日やってるもの
    D 1週間で行っている時間(分)カロリー消費量(B×D)
    眠る0.9
    テレビを見る1.0
    読書1.0
    電話する1.0
    セックスする1.3
    入浴1.5
    食事1.5
    デスクワーク1.5
    ドライブする1.5
    授業を受ける1.8
    料理する2.0
    洗濯する2.0
    皿洗い2.5
    バイクに乗る2.5
    手ぶらで階段の昇り降り3.0
    幼児を抱きかかえて移動3.0
    ペットの散歩3.0
    掃除機での掃除3.5
    風呂掃除3.8
    徒歩通勤・通学4.0
    自転車に乗る4.0
    介護4.0
    庭掃除4.0
    走り回る子どもと遊ぶ5.0
    松葉杖で歩く5.0
    雪かき6.0


     まず普段やっているものについて、B欄に○をつける。
     その後、1週間でどれくらいやっているかをC欄に書き込む。まずは、おおざっぱな時間でいい。そして、1週間当たりの消費カロリーを求めてみよう。
     そして普段から持ち歩いて、すきま時間に眺めるようにする。

     そのうち、もう少し詳しく、何をどれだけやっているかが分かってくる。そうしたら表を改訂しよう。
     効果を知りたい人は、体重を記録してもいい。詳しい表が書けるようになると、効果が出てくるようだ。

    その科学が成功を決めるその科学が成功を決める
    (2010/01/26)
    リチャード・ワイズマン

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