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2010.08.14
リスニング、あと何が足りないか?
英語を聞き取るのに、必要なことはなんだろう?
発音についての(少しの)知識
話すためにだけでなく、聞くためにも、発音できることが必要だ。
よく言われるように、自分で発せない音は、聞き取ることができない。
あるいはノイズとしてしか処理されない。
英語をたくさん聞けば、いつか聞き取ることができるだろうか?
そうかもしれない。
だが、何を聞けばいいのか、わからないまま続ける努力はつらい。
音の出し方を飲み込んでから聞いた方が、学習効率は段違いに高くなる。
最初に発音に投資すべき理由
最初に発音に投資しておくと、その後の学習効率は格段にあがる。
理由はいくつかある。
語学学習の楽しさ/つらさは発音の習熟度に依存する
自分の発音にいくらかの自信、あるいは十分な開き直りがないと、英語を口にするのに消極的になる。
誰かに話しかけるのはもちろんのこと、ただ英文を読み上げる、音読することもストレスフルになる。
なぜ発音を否定されると人格まで否定された気分になるのか?
ヒトは、発音について、非常にセンシティブだ。
これはヒトの「仕様」だと考えていい。
音声言語はメッセージを伝える手段であるばかりか、音声を発する相手が「仲間」かどうかを峻別するシグナルでもある。
つまり同じように発音できる者は仲間であり、そうでないものは仲間でない。
「なりすまし」は容易ではない。
群れを作り協力し合う動物として、フリーライダー(ただのり)を抑制するためには、発音による峻別は重要だ。
手控えの少ない子どもたちは、残酷なまでに「おかしな発音」をあげつらう。
発音を否定されることは、言葉以前の段階で「門前払い」された感じを与える。
知的な人たちほど、この事はこたえる。
発音に関する悪循環
母音は喉で出すが、子音は口の中で舌や唇に息をぶち当てて出す。
顎や舌や唇を動きが小さいと、息の量が少ないと、なかなかうまく発することができない。
発音に自信がないと、声量は小さくなる。口の動きも息の量も手控えられる。
すると、ますます発声がうまくいかない。
かなりうまく発音できる人ですら、相手に聞き返されると、自信のもろいところが崩れ、発音が乱れてしまうことがある。
発音に関する好循環
しかし悪循環のサイクルは、逆方向に回すこともできる。
発音を磨くと、英語を発することのストレスが減る。
音読がスムーズになり、アウトプットの量と質が改善していく。
コミュニケーションについてのモチベーションが高まることで、コミュニケーションの機会が増える。
いかなるものであれ、アウトプットすることを通じて、記憶に残り定着する。
アウトプットにされるものは、記憶するに足るものだからだ。
いかなる形であれ、繰り返しアウトプットしないと、ほとんど何も残らないと思っていい。
発音の改善はインプットの効率も高める
ワーキングメモリのなかで、言葉の音を担当する音韻ループは、最もはやく自動化される。
音韻ループのタスクが自動化されると、注意という貴重な認知資源が、発音以外のことに振り向けられるようになる。
このことは、時間あたりに処理可能な英語の量を増やす。
まず発音に注力することで、英語の処理速度を高めることができる。
このことは、英語の学習効率をインプットの面からも高めることにつながる。
語彙も文も無限だが知るべき音の数は有限
英語の音の数(音韻数)は、数え方にもよるが50ほどだ。
何百、何千というオーダーではない。
身につければ一生ものだし、あえて避ける理由はない。
発し方からはLとRの音はまるで違う
日本人にとって区別しにくいと言われるLとRの音は、出し方から言えば相当違う。


(Phonetics: The sounds of American Englishから。このサイトでは、それぞれの発音について、断面図の動画と静止画で確認することができる)
聞くだけでは「ラ」行の音にブロックされてしまうが、出せるようになれば区別はかなりはっきりつく。
口の形、舌の位置についての映像としては、次のものが2310円でDVD付きである。
自分でできる発音の矯正方法については、以下のものがベスト。
上記の本は、プロソディ(ストレス、リズム、イントネーション)について触れていないのがマイナスとのレビューがあるが、確かに話すことについては、個々の音よりもプロソディの方が問題であることが多い(音はなまっていても、プロソディができていれば結構間に合ってしまう、とも言える)。
これについては、以下の有名教材が有益だろう。
だが、個々の発音からやり直すには、別の教材が必要だと思う。
in thereが何故「いんねあ」と聞こえるのか?
個々の音が捕まえられると、文字通りに英語が発音されていないことに気付く。
いや、正確には、気付く事になっている。
しかし「正しく発音」できるようになれば自ずから気付くというのは、いささか不親切だと思う。
反復練習や学習者の「気付き」は重要かつ不可欠だが、
「個々の発音が、どういった場合に、文字が示す発音から逸脱/変化するのか」は知識としてあった方がいい。
でないと、耳の良い真面目な学習者ほど迷い、自信がつきにくいことになる。
もちろん音声変化の存在やルールを知ったからと言って、すぐに変化する音や脱落(省略)される音に気付ける訳ではない。
しかし発音の仕方を身につけていると、まず音声変化のルールが身にしみやすい。連続して発音しにくいところで、《発音しやすいように》音声変化は起こるからだ。
自分でも発音し、音声変化を「追体験」することで、文字通りでない発音をつかまえられるようになる。
音声変化も含めた、聞くための発音練習としては
がやさしくて入門しやすい。
音声変化やプロソディについて、ある程度網羅的で練習問題も入っているものとしては、
発音に関して体系的・網羅的に扱ったものとしては、
が推奨できる。
少し長くなったので、リスニングのための語彙(ボキャブラリー)やリーディングその他については改めて。
発音についての(少しの)知識
話すためにだけでなく、聞くためにも、発音できることが必要だ。
よく言われるように、自分で発せない音は、聞き取ることができない。
あるいはノイズとしてしか処理されない。
英語をたくさん聞けば、いつか聞き取ることができるだろうか?
そうかもしれない。
だが、何を聞けばいいのか、わからないまま続ける努力はつらい。
音の出し方を飲み込んでから聞いた方が、学習効率は段違いに高くなる。
最初に発音に投資すべき理由
最初に発音に投資しておくと、その後の学習効率は格段にあがる。
理由はいくつかある。
語学学習の楽しさ/つらさは発音の習熟度に依存する
自分の発音にいくらかの自信、あるいは十分な開き直りがないと、英語を口にするのに消極的になる。
誰かに話しかけるのはもちろんのこと、ただ英文を読み上げる、音読することもストレスフルになる。
なぜ発音を否定されると人格まで否定された気分になるのか?
ヒトは、発音について、非常にセンシティブだ。
これはヒトの「仕様」だと考えていい。
音声言語はメッセージを伝える手段であるばかりか、音声を発する相手が「仲間」かどうかを峻別するシグナルでもある。
つまり同じように発音できる者は仲間であり、そうでないものは仲間でない。
「なりすまし」は容易ではない。
群れを作り協力し合う動物として、フリーライダー(ただのり)を抑制するためには、発音による峻別は重要だ。
手控えの少ない子どもたちは、残酷なまでに「おかしな発音」をあげつらう。
発音を否定されることは、言葉以前の段階で「門前払い」された感じを与える。
知的な人たちほど、この事はこたえる。
発音に関する悪循環
母音は喉で出すが、子音は口の中で舌や唇に息をぶち当てて出す。
顎や舌や唇を動きが小さいと、息の量が少ないと、なかなかうまく発することができない。
発音に自信がないと、声量は小さくなる。口の動きも息の量も手控えられる。
すると、ますます発声がうまくいかない。
かなりうまく発音できる人ですら、相手に聞き返されると、自信のもろいところが崩れ、発音が乱れてしまうことがある。
発音に関する好循環
しかし悪循環のサイクルは、逆方向に回すこともできる。
発音を磨くと、英語を発することのストレスが減る。
音読がスムーズになり、アウトプットの量と質が改善していく。
コミュニケーションについてのモチベーションが高まることで、コミュニケーションの機会が増える。
いかなるものであれ、アウトプットすることを通じて、記憶に残り定着する。
アウトプットにされるものは、記憶するに足るものだからだ。
いかなる形であれ、繰り返しアウトプットしないと、ほとんど何も残らないと思っていい。
発音の改善はインプットの効率も高める
ワーキングメモリのなかで、言葉の音を担当する音韻ループは、最もはやく自動化される。
音韻ループのタスクが自動化されると、注意という貴重な認知資源が、発音以外のことに振り向けられるようになる。
このことは、時間あたりに処理可能な英語の量を増やす。
まず発音に注力することで、英語の処理速度を高めることができる。
このことは、英語の学習効率をインプットの面からも高めることにつながる。
語彙も文も無限だが知るべき音の数は有限
英語の音の数(音韻数)は、数え方にもよるが50ほどだ。
何百、何千というオーダーではない。
身につければ一生ものだし、あえて避ける理由はない。
発し方からはLとRの音はまるで違う
日本人にとって区別しにくいと言われるLとRの音は、出し方から言えば相当違う。


(Phonetics: The sounds of American Englishから。このサイトでは、それぞれの発音について、断面図の動画と静止画で確認することができる)
聞くだけでは「ラ」行の音にブロックされてしまうが、出せるようになれば区別はかなりはっきりつく。
口の形、舌の位置についての映像としては、次のものが2310円でDVD付きである。
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自分でできる発音の矯正方法については、以下のものがベスト。
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上記の本は、プロソディ(ストレス、リズム、イントネーション)について触れていないのがマイナスとのレビューがあるが、確かに話すことについては、個々の音よりもプロソディの方が問題であることが多い(音はなまっていても、プロソディができていれば結構間に合ってしまう、とも言える)。
これについては、以下の有名教材が有益だろう。
![]() | American Accent Training (2000/09) Ann Cook 商品詳細を見る |
だが、個々の発音からやり直すには、別の教材が必要だと思う。
in thereが何故「いんねあ」と聞こえるのか?
個々の音が捕まえられると、文字通りに英語が発音されていないことに気付く。
いや、正確には、気付く事になっている。
しかし「正しく発音」できるようになれば自ずから気付くというのは、いささか不親切だと思う。
反復練習や学習者の「気付き」は重要かつ不可欠だが、
「個々の発音が、どういった場合に、文字が示す発音から逸脱/変化するのか」は知識としてあった方がいい。
でないと、耳の良い真面目な学習者ほど迷い、自信がつきにくいことになる。
もちろん音声変化の存在やルールを知ったからと言って、すぐに変化する音や脱落(省略)される音に気付ける訳ではない。
しかし発音の仕方を身につけていると、まず音声変化のルールが身にしみやすい。連続して発音しにくいところで、《発音しやすいように》音声変化は起こるからだ。
自分でも発音し、音声変化を「追体験」することで、文字通りでない発音をつかまえられるようになる。
音声変化も含めた、聞くための発音練習としては
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がやさしくて入門しやすい。
音声変化やプロソディについて、ある程度網羅的で練習問題も入っているものとしては、
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発音に関して体系的・網羅的に扱ったものとしては、
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が推奨できる。
少し長くなったので、リスニングのための語彙(ボキャブラリー)やリーディングその他については改めて。
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猛暑で私の脳味噌はとろけそうで、「勉強」どころか、字が書いてあるものは読むと必ず目に入る「暑い」という字を見たくなくて新聞さえ斜め読みをしている私などとは違って、この暑さの中でも英語の勉強法、なかんずく 英語の「発音」について熱心にエントリーを書いていら
碧(あお)い日記 2010/08/18 Wed 00:16
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