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2010.06.24
忘れる人は、学び足りない
速く覚える人(ファスト・ラーナー)とゆっくり覚える人(スロー・ラーナー)とでは、どちらが忘れやすいのだろうか?
古い、せっかちな実験では、断然ファスト・ラーナーの方が成績がよかった。
スロー・ラーナーの方が、ファスト・ラーナーよりも「忘れっぽい」とされた。
「頭のいい奴より、頭の悪い奴の方が、忘れっぽいのは当然だ」と人は思うかもしれない。
いわば通念に合った結果が出た、という訳だ。
しかし、じっくり時間をかけると、スロー・ラーナーも、同じだけ覚えることができる。
時間あたりの覚える量は、ファスト・ラーナーの方が、スロー・ラーナーよりも多い。
そこで忘却を左右するのは、「覚える速さ」ではなく「覚えた量」なんじゃないか、という仮説が登場した。
記憶に要した時間は問わないで、覚えた量をファスト・ラーナーとスロー・ラーナーとを同じにして、忘れる速さを計ってみた。
すると、ファスト・ラーナーとスロー・ラーナーとで、忘れっぽさは同じだ、という結果が出た。
さらに「覚えた量」をいろいろ変えて実験した。
すると、ある程度までは、たくさん覚えれば覚えるほど、忘れる速さは落ちていく。つまり、忘れっぽくなくなる、ことが分かった。
複数の理由が考えられるけれど、より多く覚えた方が、記憶されたものの間のネットワークが密になって、忘れにくくなる。
覚えやすいように、フラスコの比喩で説明してみる。
![memory_beakers.png](https://blog-imgs-35.fc2.com/r/e/a/readingmonkey/memory_beakers.png)
覚えることはフラスコに水を入れること、忘れることは水が蒸発することに喩える。
条件が同じなら空気と触れている面積が大きいほど、蒸発は進む。
そしてフラスコの形状は真横から見ると三角形であり、首のところに来るまでは水が入れば入るほど、空気を触れる面積が小さくなるようになっている。
首のところまで水が入ると、それ以上入れても、空気に触れる面積は変わらない。ある程度覚えると、それ以上は忘れる速度は下がらない、という訳だ。
逆に、学びが少ないほど、忘れるのは速い。
(文献)
Underwood, B.J., 1964. Forgetting. Scientific American 210, pp. 91–99.
Horton D. L., & C. B. Mills. 1984. Human learning and memory, Annual Review of Psychology, Vol. 35, pp. 361-394
(関連記事)
古今東西の記憶術をざっくり7つにまとめてみた 読書猿Classic: between / beyond readers
![このエントリーをはてなブックマークに追加 このエントリーをはてなブックマークに追加](http://b.st-hatena.com/images/append.gif)
古い、せっかちな実験では、断然ファスト・ラーナーの方が成績がよかった。
スロー・ラーナーの方が、ファスト・ラーナーよりも「忘れっぽい」とされた。
「頭のいい奴より、頭の悪い奴の方が、忘れっぽいのは当然だ」と人は思うかもしれない。
いわば通念に合った結果が出た、という訳だ。
しかし、じっくり時間をかけると、スロー・ラーナーも、同じだけ覚えることができる。
時間あたりの覚える量は、ファスト・ラーナーの方が、スロー・ラーナーよりも多い。
そこで忘却を左右するのは、「覚える速さ」ではなく「覚えた量」なんじゃないか、という仮説が登場した。
記憶に要した時間は問わないで、覚えた量をファスト・ラーナーとスロー・ラーナーとを同じにして、忘れる速さを計ってみた。
すると、ファスト・ラーナーとスロー・ラーナーとで、忘れっぽさは同じだ、という結果が出た。
さらに「覚えた量」をいろいろ変えて実験した。
すると、ある程度までは、たくさん覚えれば覚えるほど、忘れる速さは落ちていく。つまり、忘れっぽくなくなる、ことが分かった。
複数の理由が考えられるけれど、より多く覚えた方が、記憶されたものの間のネットワークが密になって、忘れにくくなる。
覚えやすいように、フラスコの比喩で説明してみる。
![memory_beakers.png](https://blog-imgs-35.fc2.com/r/e/a/readingmonkey/memory_beakers.png)
覚えることはフラスコに水を入れること、忘れることは水が蒸発することに喩える。
条件が同じなら空気と触れている面積が大きいほど、蒸発は進む。
そしてフラスコの形状は真横から見ると三角形であり、首のところに来るまでは水が入れば入るほど、空気を触れる面積が小さくなるようになっている。
首のところまで水が入ると、それ以上入れても、空気に触れる面積は変わらない。ある程度覚えると、それ以上は忘れる速度は下がらない、という訳だ。
逆に、学びが少ないほど、忘れるのは速い。
(文献)
Underwood, B.J., 1964. Forgetting. Scientific American 210, pp. 91–99.
Horton D. L., & C. B. Mills. 1984. Human learning and memory, Annual Review of Psychology, Vol. 35, pp. 361-394
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リチャ
なるほど、テスト前にしか勉強しない人は、普段学ばない分、テストの内容を忘れるのが早いということか。
言われてみれば、大学生になって知識が蓄積した分、意外と忘れにくくなったような?w
言われてみれば、大学生になって知識が蓄積した分、意外と忘れにくくなったような?w
2010/07/06 Tue 15:04 URL [ Edit ]
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2014/05/19 Mon 16:23 [ Edit ]
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