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     英語で話しかけられた時、よくやってしまうことだが、実は決してしてはならない返答がある。

     I don't know. 知りません/わかりません。

    だ。理由は後述するが、「最低限の英語」から見ても、この答えは最低だ。

     知ったかぶりするより、知らないと素直に表明するのが美徳だと考えてる人もいるかもしれない。逆に、「こんなこと言ったら、バカに見られるから慎めとか」と考える人もいるだろう。

     しかし、「最低限の英語」からすれば、この返答はもっとひどい。
     なんとなれば、この言葉は、相手と社会と世界に対して完全クローズのポーズを決めこむ事に等しい。言えば、ひきこもりイングリッシュだ。

     人間だから、わからないことがあるのは当然である。
     まして異文化に入った最初のうちは、分からん事だらけだろう。
     だから、I don't know.ってフレーズは必ず、しかも頻繁にアタマに浮かぶ。それは仕方がない。

     そんなときはこう置き換えるべし。

      What? なんだ? 

     バリエーションはいろいろあるが、最初はとにかく「What?」でいい。

     見知らぬものを見たとき、相手が何いってるかわからん時、I don't know.と浮かんだら、とにかくWhat?だ。

     これだけで、発言のターンは相手にまわる。
     「What?」は、いつでも攻守を入れかえるマジック・ワードだ。
     しかもこれを言われたら、言われた相手に説明責任が生じる。


     世界で最初に和英辞典をつくったヘボンという医者は、「これはなんですか?」だけを繰り返すことで、辞書をつくり、聖書を日本語に訳した。
     この辞書はここで引ける(『和英語林集成』http://www.meijigakuin.ac.jp/mgda/)。


     「What?」とは、さっきのいい方で言えば、相手と社会と世界に対して「回線(ポート)を開くこと」だ。


     What?が口について自然に出てくるようになったら、

      What's this? これは何だ?……モノの質問
      What do you mean? おまえ、何が言いたいんだ?……コトバの質問

     も使っていくといい。


     モノの質問も、ただ相手に「モノの名前」を言わせるだけじゃなく、さらにつっこみようがある。「What's this?」が反射的に出るようになったら、

      What's this? こりゃなんだ?
      What do you use it for? 何に使うんだ?
      How do you use it? どうやって使うんだ?
      When do you use it? いつ使うんだ?
      Where do you use it? どこで使うんだ?
      How do you spell it? その語はどんなスペルだ?
      How do you pronounce it? その語の発音はどんなだ?



     聞けば聞くほど、相手の説明は丁寧になり、しかも相手の答えは、覚えたくなるようなフレーズの山と化すだろう。
     ヘボンがやったように、相手youを辞書にしてしまうのだ。

     だから、

     What/When/Where/How do you___?

    「おまえならどういう/どうするんだ?」という疑問文になっているのだ。


     相手の英語が速すぎて聞き落としたときも、

      Please say again. もう一度言ってくれ。

     なんていわなくていい。
     というより、もう一度言ってもらっても、多分わからないだろう。

     一つ一つの英語の音がわかるのに、発音慣れしてるのに、「聞けない」のは、早口でついていけないのではない。
     相手の話す分量が多すぎて、こっちのワーキング・メモリからはみ出し、溢れ出しているのだ。だから、

      Please more slowly. もっとゆっくり頼む

     といっても、解決しない。かといって、

      Please, one word! 一言で言ってくれ

    と言われても、相手だって困るだろう。こっちが英語ができないのは、とっくに相手にだって分かっているのだ。一言で言えるものなら、とっくにそうしているだろう。

     ここでも、使うのは「What ?」だ。

      What do you mean? おまえ、何が言いたいんだ?……コトバの質問


    といえば、大抵は、まあ普通に気の効く相手なら、もう少しコンパクトな表現に言い換えてくれる。
     最悪、だらだら喋るのが好きなタイプでも、質問で、相手の話を、こっちが飲み込める大きさに刻んでいく手もある。

     会話は二人でやるものだ。

     わからないなら、わからないなりに参加して協力し合って、会話をつくっていくべきだ。
     そのためには、分からない方は、わからないなりの質問をする責任がある。
    「I don't know.」が最悪なのは、最初から「二人で会話を作っていく」責任を放棄して、参加すらしようとしないからだ。


     質問で、相手の話を、こっちが飲み込める大きさに刻んでいくには、たとえばこういう質問を使う。

      What's your point? おまえの話の要点(ポイント)はなんだ?
      What's the evidence? 根拠となる事実はなんだ?
      What supports your words? なんでそんな事が言えるんだ(何がおまえの主張を支えてるのか)?


     「主張って何て言ったっけ? claimだっけ」「発言はなんだっけ?」と迷ったら、とりあえず相手の言ったことなんだからyour wordsで構わない。
     こういう基本語はチェックしとくといい。
     意味の幅が広くて、文脈ごとに相手が意味を汲み取ってくれる、日本人なら中学英語で習うような単語だ。
     習うのは最初の方だし、何度も出会うから知ってる気がするから辞書でも引かない。
     おまけに意味の幅が広いから辞書の説明は長いから、思わず読み飛ばす。
     この手の単語の項こそ熟読すべきだ。
     例文は全部暗記するくらいでいい。未知の事態に遭遇しても、この手の基本語を2~3語組み合わせれば、なんとかしのげる。
     いまの例ならwordとかpointなんかが、そういう言葉だ。


     相手の言葉の切れ端ぐらいは、耳でつかまえられることもある。
     その場合、次のように質問できる。

      What's your (second / last ) word? 2番目に/最後に何て言った?

      What's "むにゃむにゃ".? 「むにゃむにゃ」(と聞こえてたのを口マネして)って何のことだ?



     知らない言葉(新語や専門用語)が出てきたときは、

      How do you spell it? おまえさんはその言葉、どう綴るんだ?

    と聞くべし。英語は同じ発音でもスペルはいろいろだ。

     だいたい人の名前なんてスペルを聞かなきゃわからない。
     だからWhat's your name? と聞いて、スペルを聞かないのは、むしろ失礼なくらいだ。相手だって聞いてくる。

     スペルが分かったら、平気な顔で

      How do you pronounce it? おまえさんはどう発音するんだ?

     と聞いて、相手の発音を真似てみる。
     違ってたら直してくれる。
     とくにガキは発音にうるさい。
     現地のコトバに慣れる最上の方法は、幼稚園でバイトすることだという話もあるくらいだ。
     ちょっともののわかった姑なら、英語がいまいちの日本人妻を、そういうところに放りこむ。


     応用というほどでもないが、
     電話をかけてきて、ファースト・ネームしか名乗らない人がいる。
     一応相手は人間だ。whatじゃなくwhoを使ってやろう。

      This is Bill. ビルです。
      Bill who? なんてビル?
      Bill Brown. ビル・ブラウンだよ。


     最初のうちは、とにかく知ってる単語だけを聞こう。
     どっちにしろ、知らない単語は雑音にしか聞こえない。

    miniEng2.gif




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