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とあるエンジニアが嘘ばかり書く日記

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『すいすい学べる認知行動療法』松野航大・嶋大樹・原真太郎

これは良書です!とぼけた感じの書名ですが、認知行動療法の基本がわかりやすく説明されていて、参考文献も豊富で、最初の一冊として最適です。心理学の本って何となくオカルトか、逆に統計ばっかりで味気ないイメージでしたが、適度な理屈っぽさでした。ではメモしてゆきます。

基礎

  • 行動とは?
    • 死人にできない事 → 「死人テスト」という名前がついている!
    • 「学校に行かない」は死人にも出来るので行動ではない。
    • 「学校に行くのを避ける」なら行動になるので行動療法の枠組みが使える。
  • レスポンデント行動
    • 特定の行動によって誘発される行動
    • 梅干しを食べたらヨダレが出た → 梅干しを見ただけでヨダレが出る
    • 無条件反射: 梅干しの味(= 無条件刺激)でヨダレが出るように必ず起こる反射
    • 条件反射: 梅干しの色や形(= 条件刺激)でヨダレが出るように、無条件刺激と組み合わせた時だけ起こる反射
    • レスポンデント条件づけとは: 梅干しの色で味を連想してヨダレが出るように、無条件刺激が条件刺激を連想して反応するような学習
  • オペランド行動
    • 行動の後の結果によって頻度や強度が変化する行動。
    • 喉が渇いた時に → ボタンを押したら → ジュースが出てきた
    • 先行事象: 喉が渇いた時
    • 行動: ボタンを押したら
    • 結果事象: ジュースが出てきた
    • この場合、ジュースが出てきた事でボタンを押す行動が強化される。
    • 遅延結果:
      • 甘いものを食べ過ぎて太った。
      • このような行動のしばらく後(60秒以降)に生じる結果事象は行動に影響しない。
      • ダイエットは難しい。

よく、日常会話で「条件反射」という言葉を使いますが、実は心理学用語だったみたいです!しかも「梅干しを食べたらヨダレが出る」みたいな梅干しの味で直接起こる反射は「条件反射」ではなく本来「無条件反射」だったんですね。「梅干しを見ただけでヨダレが出る」みたいな間接的な反射だけが「条件反射」です。

馴化と鋭敏化

  • 馴化(じゅんか) (p25)
    • 同じ刺激にだんだん馴れてくる事。
    • 刺激特異性
      • 同じ刺激が繰り返されると馴れるが違うと馴れない。
      • 「どーん」「どーん」と繰り返す大音に馴れた後で、「ブブー」という別の大音がすると馴れていないので驚く。
    • 自発的回復
      • 花火大会で「どーん」と音がしてびっくり → しばらく経つと音に馴れる。
    • 馴化の増強
      • 人生初めての花火大会では 15 発目で音に馴れる。
      • 人生二回目の花火大会では 3 発目で音に馴れる。
      • というふうにだんだん馴れるまでの回数が減る事。
    • 刺激の呈示間隔と刺激強度
      • 刺激の感覚が短いと馴化が早い。
        • 「どーん」... 「どーん」より「どーん」「どーん」の方が馴化が早い。
      • 刺激が弱いと馴化が早い。
        • 大きい「どーん」「どーん」よりも小さい「とん」「とん」の方が馴化が早い。
    • 刺激般化
      • 刺激特異性の逆。多少刺激が異なっていても馴れる。
      • 「どーん」の花火の音が多少異なっていても馴れる。
  • 鋭敏化
    • あまりにも強い刺激を繰り返し呈示され、反応が減弱するどころか増強されること。
      • 大きな地震の後で、小さな揺れにも「地震かな?」とドキドキしてしまう。
    • 鋭敏化には刺激特異性が無い。工事の「ドカン!」という音に鋭敏化してしまうと、「ねえ」と声をかけられただけで驚いてしまう。
  • 二重過程モデル
    • 刺激が繰り返し呈示された時は、馴化と鋭敏化の両方が生じていて、強い方が優勢になる。
    • 初期には先鋭化が起こりやすいため、最初に強すぎる刺激を受けてしまうと馴化より先鋭化が勝ちがち。

レスポンデント条件づけを応用した行動療法

「犬に噛まれて怪我をした。それ以来犬の写真や映像を見るだけで恐怖で犬を触れなくなった」

  • 無条件反射: 犬に噛まれて痛い。
  • 条件反射: 犬の姿を見ると怖い。
  • 系統的脱感作: 犬の姿を見た時の恐怖を打ち消すリラックス感覚(=拮抗条件づけ)を与える。
    • 不安階層表を作る。
      • 犬に触った時の恐怖を 100 として、犬を見ただけ、犬の動画を観る、犬の写真を見るといった様々な場面に応じて恐怖感を数値化(SUD: subjective unit of disturbance scale) する。
    • リラックスしながら不安階層表から刺激(例: 犬の動画を観る)んで曝露(exposure)する。
    • SUD がゼロになったらその場面は終了。
    • 不安階層表の SUD が全てゼロになったら治療完了。
    • 刺激の与える順序(低いものから与えたり、ランダムに与えたり)や、リラックスの与え方(呼吸法、筋弛緩法、自律訓練法)などに様々なバリエーションがある。

他にもたくさん面白い事が書かれてありますが、疲れたので一旦終わります。