午後にはすっかり暗くなり、なんだか気分も滅入ってくる。
帰りは傘が必要みたいだ。
「もう真っ暗だね」
煌々と光を放つ教室の蛍光灯の下で、窓の外を見ていた放課後。
テスト前に勉強を教え合うというのは口実で、本当は一緒にいたかっただけ。
そんなのは彼女にも周りの仲間にもバレていただろうが、気にならなかった。
外が暗ければ暗いほど、いまこの空間が、この時間が素晴らしく思えた。
この時間が一生続けばいいと思った。
サイン、コサイン、タンジェント。
勉強した内容は何一つ覚えていないけど、くだらない話に笑ってくれた彼女の口元の角度は今も覚えている。
仕事を切り上げ、職場を出る。
冷たい雨が、鬱々とした気持ちに拍車をかける。
地面に円を描く雨粒。
円に内接する四角形の性質ってなんだったっけ?
胸の奥で、光を放つあの時間。
この先どんな闇に包まれても、消えやしないと信じている。