米WeWorkのCEOが9月6日に出した、ほぼすべての賃貸借契約についてビルオーナーと再交渉しているとの声明は、オフィスが置かれた苦境を端的に物語っています。米国では従業員をオフィスへと回帰させる動きが強まり、コロナ禍下のリモートワーク拡大をけん引したZoom社でさえも一定の出社勤務を求めたことが話題になりました。しかし在宅勤務に合理性を見いだしたワーカーは多く、各企業が期待するようには回帰は進んでいないもよう。全米の平均出社率は5割程度といわれ、こうした状況はオフィスの空室率が高止まりする原因となっています。

 米国よりオフィス回帰が進んでいる日本でも、出社と在宅勤務のハイブリッドワークが浸透し、コロナ禍前のオフィス市況には戻っていません。日経不動産マーケット情報2023年10月号では、半年ごとに実施している「新築オフィスビルの稼働率」調査を掲載しましたが、そのタイトルも「勢い欠くテナント内定ペース」。東京では大量供給の影響もあり、満床になるまでにかなりの時間を要する状況です。記事では大規模新築ビル35棟について、テナントの契約・内定状況を明らかにしています。今後のオフィス市況を読み解く材料としてご活用ください。

 10月号の売買レポートは、三菱HCキャピタルリアルティが取得したフロンティア武蔵小杉N棟・S棟や、491億円で11物件を取得したスターアジア不動産投資法人、エム・エルエステートがGLPから取得した物流施設3物件など、記事33本を掲載。これらを含む取引事例131件を一覧表にまとめました。一方、移転ニュースは、田町タワーで1万坪超を賃借しオフィスを集約する三菱重工業や、新虎安田ビルで2800坪を賃借するデンソーなど、5社の移転を詳しく解説するとともに、28社の移転情報を表にまとめています。

 なお、2002年の創刊以来の取引データは「ディールサーチ」で提供中。REITの運用実績データなども収録しています。また、東京都心のオフィスビル3000棟のテナント情報については「オフィスビルデータベース」で、東京都心の大規模オフィスビル開発計画については「これからできる大規模オフィスビル調査データ2023」で提供しています。ぜひ併せての利用をご検討ください。

編集長 三上 一大