運営費交付金削減率が3%になったら破綻しそうな大学

国立大学の財務情報を調べて運営費交付金削減率が3%になったら破綻しそうな大学を分析しようと思ったら以下の資料を見つけた。国立大学の財務状況や外部獲得資金、論文数などの情報を知りたいならばこの資料を見れば一目瞭然。

大学類型別に運営費交付金・自己収入・外部資金・施設費収益・科学研究費補助金の割合を見ると、以下のようになる。

  • 運営費交付金が経常収益に占める割合(運営費交付金依存率)が高いのは、大学院大学、教育大学、文科系中心大学の順である。運営費交付金依存率が低いのは、医科系大学と中規模病院有大学であり、87 大学の平均は41.0%である。
  • 自己収入(附属病院収益を含まない)が経常収益に占める割合(自己収入依存率)が高いのは、文科系中心大学と中規模病院無大学である。
  • 附属病院を有する大学のうち、病院収益が経常収益に占める割合が最も高いのは、医科大学であり、55.1%。また、交付金依存率は約30.0%である。
  • 外部資金及び科学研究費補助金収入が経常収益に占める割合(外部資金等比率)が高いのは、大学院大学、理工系中心大学、大規模大学である。教育系大学、文科系大学は、外部資金等比率は僅少であり、外部資金が多少増加しても、法人経営を支えるほどにはならない。

上記資料より、

国立大学法人の財務分析上の分類は以下のとおり

  • A: 大規模大学
    • 学生収容定員1万人以上、学部等数概ね10学部以上の国立大学法人(学群、学類制などの場合は、学生収容定員のみ)
    • 北海道、東北、筑波、千葉、東京、新潟、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、九州
  • B: 理工系中心大学
    • 医科系学部を有さず、学生収容定員に占める理工系学生数が文科系学生数の概ね2倍を上回る国立大学法人
    • 室蘭工業、帯広畜産、北見工業、東京農工、東京工業、東京海洋、電気通信、長岡技術科学、名古屋工業、豊橋技術化学大学、京都工芸繊維、九州工業、鹿屋体育
  • C: 文科系中心大学
    • 医科系学部を有さず、学生収容定員に占める文科系学生数が理工系学生数の概ね2倍を上回る国立大学法人
    • 小樽商科、福島、筑波技術、東京外国語、東京芸術、一橋、滋賀、大阪外国語
  • E: 教育大学
    • 教育系学部のみで構成される国立大学法人
    • 北海道教育、宮城教育、東京学芸、上越教育、愛知教育、京都教育、大阪教育、兵庫教育、奈良教育、鳴門教育、福岡教育
  • G: 中規模病院有大学
    • 医科系学部その他の学部で構成され、A〜Fのいずれにも属さない国立大学法人
    • 弘前、秋田、山形、群馬、富山、金沢、福井、山梨、信州、岐阜、三重、鳥取、島根、山口、徳島、香川、愛媛、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、琉球
  • F: 中規模病院無大学
    • 医科系学部を有さず、A〜Fのいずれにも属さない国立大学法人
    • 岩手、茨城、宇都宮、埼玉、お茶の水女子、横浜国立、静岡、奈良女子、和歌山

総予算に対する外部資金等の比率が低く、かつ、総予算に対する人件費が高い大学は、運営交付金の削減による影響をもろにかぶるので危ない。上記資料の90ページより大学類型別に総予算に対する人件費を見る、中規模病院無、教育系、文科系は総予算に対する人件費が70%〜80%なので、入学定員を上げられない限りは運営費交付金の削減率3%にされるとつぶれる可能性があると思う(つぶれない場合は急速な人員整理が必要となるのでは?)。

それにしても、大規模大学の予算のすごいこと。明らかに正のフィードバックがかかっている。まあ、大規模大学の外部獲得予算のほとんどは旧帝大だけど。下のグラフを見ると東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学だけが外部資金取得額が200億円を突破している。残りの北海道、筑波、千葉、新潟、神戸、岡山、広島、九州をあわせたときの平均が200億に達しないことから考えても、東京大学、京都大学、大阪大学、東北大学の外部資金取得能力は半端じゃない。

旧帝大である、北海道、東北、東京、名古屋、大阪、京都、九州の7つの大学が平成16年度は科研費総額の67.1%、平成17年度は60.9%、平成18年度は59.5%を取得している。

追記

# 2008年11月09日 hexol 財務省の中の人の話 つ http://www.rieti.go.jp/jp/special/dialogue/07.html

で教えていただいた。

いろいろと耳が痛い。国立大学関係者は必読。この財務省における正論を打破できないと教育経費を上げることの主張はできない。

追記2

大きい画像が欲しい方は、NISTEP:国立大学法人の財務分析(2008年1月)のPDFファイルにあります。ご覧ください。