世論形成めっちゃ怖い

最近の国立大学のホットトピックは運営交付金の削減率が毎年1%から3%に引き上げられる見通しなことと、複数の大学が共同でひとつの学部を設置できるよう大学設置基準を変更するという点。

補助金削減に大学機関が反対 声明を発表
(10月3日 05:00)

県内の大学、短大など十九教育機関で構成する大学コンソーシアムとちぎ(理事長・菅野長右ェ門宇都宮大学長)は二日、二〇〇九年度の国の概算要求基準で国立大の運営費交付金と私学助成費などの削減幅が3%に拡大される方針に対し、反対声明を発表した。
大学の財政的基盤である交付金と助成費は、「骨太方針2006」に基づき、〇七、〇八年度に1%ずつ削減。〇九年度は削減幅が3%に拡大される方針という。
声明文は「大幅な削減が行われれば、教育の質を保つことは難しくなり、地域の人材育成機能低下と知的基盤の芽をつぶす」と批判。削減に強く反対するとともに、交付金と助成金の確保と充実を求めている。
会見した菅野学長によると、宇都宮大では〇七、〇八の各年度でそれぞれ約五千万円が削減された。同大は経費削減を進める一方で、〇九年度までの四年間に計二十一人の教員削減を進めるなど教育現場へのしわ寄せが出ている。菅野学長は「このままでは産学連携や地域連携への影響もある」と不安視した。

しかしながら、概算要求基準通りに09年度の運営費交付金が3%削減されることになれば、本学の場合,約1.5億円もの運営費交付金が一挙に削減されることになります。この額は、約270人の教員全体の1年間の基盤的教育研究経費(いわゆる教員研究費)の総額もしくは光熱水費・通信費などの基幹的共通経費に匹敵する額でもあります。この3%もの削減が実施されれば、こうした費用の捻出が難しくなり、経営が厳しくなることは明々白々な事実です。総人件費改革による人件費削減も06年度以降の5年間で5%削減することを求められており、「人(教職員)がすべて」の教育系単科大学は、今でも大変難しい対応を迫られています。この上、基盤的教育研究経費もしくは基幹的共通経費相当額の交付金が減額されれば、経営的にも大変厳しくなることは必然です。

中教審:複数大学が共同で学部−−改定案
中央教育審議会大学分科会は25日、複数の大学が共同で学部や大学院を作れる大学設置基準などの改定案をまとめた。近く文部科学相に答申する。文科省は10月中にも基準を改定し、10年4月から共同学部・大学院への入学が始まる見通し。
教員や施設などを削減でき、再編が進むとみられる。【加藤隆寛】
毎日新聞 2008年9月26日 東京朝刊

運営交付金削減で、多くの地方国立大学の資金がショートし、いやおうなく、大学の合併&教職員のリストラが進むというシナリオ。

これをつつがなく進めるためには、世論として「国立大学は無駄が多すぎる」という空気を作らなければならないのだけど、ちょうど、今日の9時のNHKニュースを見ていて、その世論形成が始まったのを見た。

内容は、複数の国立大学の教職員に通勤費として支給されている額が1ヶ月分の定期券の代金だったという話。一般の企業は(私の大学も)、6か月分の定期券の代金で通勤費は計算されている。数年前の人事院勧告で国家公務員も民間企業並みに6ヶ月の定期券で通勤費を計算することになったそうだけど、その人事院勧告から現在までの差額を合計すると3億円にも達しており、国民の税金が無駄につかわれているというニュースだった(GoogleニュースやNHKのWebサイトでこのソースを探したがなかった)

確かに無駄でよろしくないことなんだけど、この金融危機、かつ、日本の政治も荒れている状況で、このニュースが9時のニュースの最初のニュース。どう考えても、運営交付金削減の世論形成の一環としてリークされたニュースでしょ。このページの日付を信じるならば、その通勤代を6ヶ月定期で計算するように変わったのは2003年だ。今は2008年。いつでもニュースにできた話じゃないの?

怖い未来だけど自分の業績と研究室の学生の満足度を上げてリストラに備えなきゃ。あと5,6年が猶予期間か。若手にとっちゃ短いなぁ。