カテゴリ:鉄道:建設・工事 > 上野東京ライン・品川駅再開発
品川駅・旧田町車両センター再開発(2014年10・11月取材)
公開日:2014年12月06日22:09
品川駅では、来る2015年3月に開業する上野東京ライン(東北縦貫線)の乗り入れに対応するためのホーム改良工事と駅北側の車両基地の再開発事業が進められています。10月~11月にかけてこの工事の再調査をしましたので、現在の状況おお伝えします。
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品川駅・旧田町車両センター再開発(2014年5~8月取材/その1)(2014年8月19日作成)
品川駅・旧田町車両センター再開発(2014年5~8月取材/その2)(2014年8月21日作成)
■東北縦貫線と品川駅・田町車両センター再開発の概要
左(1):秋葉原駅付近を走る上野東京ラインの試運転列車。(E233系)
右(2):御徒町駅付近を走る上野東京ラインの試運転列車。(185系)2014年11月24日撮影
現在、JR東日本では東海道線東京駅と東北本線上野駅の間を結ぶ新線「上野東京ライン」(東北縦貫線)の建設を進めており、来る2015年3月14日に開業することが決定しています。この新線建設の主たる目的は国内最高レベルとなっている山手線・京浜東北線の混雑緩和ですが、副次的な効果として車両運用の効率化も期待されています。
現在、東海道線は品川駅、東北本線は尾久駅付近にそれぞれ車両基地を持っています。2001(平成13)年に山手線の西半分を経由する湘南新宿ラインの運行が開始され、双方の路線が接続されましたが、車両基地はこのルートから外れているため、車両運用を完全に一体化することができませんでした。上野東京ラインが開業すると、双方の車両基地が直接結ばれることから、今後は東海道線側の車両基地を大幅に整理縮小し、東北本線側の車両基地に大半を統合する計画となっています。
品川駅付近の車両基地再開発エリアの位置
車両基地の統合により生み出される品川駅周辺の土地は約13ヘクタールに上ります。JR東日本ではこの土地を売却し、上野東京ライン建設の費用などに充てる予定です。(このため、上野東京ラインは事業費を全額JR東日本が自己負担している。)売却にあたっては山手線・京浜東北線の線路を東側に移設し、同時に新駅を設ける計画となっています(詳細次記事)。品川駅は東海道新幹線の全列車が停車し、京急線により国際空港である羽田空港まで15分で結ばれています。また、2027年の開通が予定されているリニア中央新幹線は品川駅を東京都心側のターミナルとする計画となっており、完成すれば東京~大阪間が1時間で結ばれ、全国各地へのアクセス性が飛躍的に高まる見込みです。
この車両基地縮小に合わせて、東京都では品川・田町地区全体の再開発計画(東京サウスゲート計画)を始動させています。一例として、品川駅周辺への外国企業の誘致、駅前への新たな交通結節点(バスターミナル)の整備、京急品川駅の地平化・2面4線化による駅内外のアクセスのシームレス化、都営浅草線泉岳寺駅の拡張などが検討中となっています。
■8番線がまもなく使用開始
着工前の品川駅の配線概略図
再開発着工前の品川駅は、既に運行を終了している客車列車に最適化された設備となっており、機関車付け替えのための短い留置線や交差箇所全方向を結ぶ特殊な分岐器など極めて複雑な構内配線となっていました。また、東海道線の上下線の間には、「臨時ホーム」と称する2面4線の島式ホームがありました。この臨時ホームは新幹線や高速道路が未整備だった時代に、帰省シーズンなどに全国各地へ向かう臨時列車が発着していたもので、現在はほとんど使われていませんでした。このホームはその目的から東京方面からは直接進入できない配線となっており、そのままでは上野東京ラインの折り返しには使用できません。そこで、2009(平成21)年より東海道線ホーム・臨時ホームの形状を変更し、東京方面から進入可能にするための改良工事が開始されました。
改良工事は東海道線ホームの東京寄りを東海道線下り本線側にカーブさせるもので、合わせて東京寄りの車両基地の線路の再配置、横浜寄りの横須賀線との連絡線上にあった特殊分岐器の普通分岐器への交換などが実施されています。工事は順調に進み、2013年11月には東海道線を1日半運休にした大規模な線路切替工事が実施され、駅北側で建設中だった新しい車両基地と改築された臨時ホーム9・10番線が使用を開始しました。
左(1):6番線から見た7・8番線ホームの東京寄り。屋根の取り付けも完了した。
右(2):8番線から見た7・8番線ホームの東京寄りの階段。9~12番線と比べると幅は狭い。
臨時ホーム7・8番線は、昨年11月に9・10番線に代わり使用停止になった後、ホーム中央の一部を除いて取り壊され、9~12番線と同様に改築する工事が行われています。
東京寄りは先に改築されたホームと同様に、既存のホームが一旦全て取り壊され、新たに東海道線下り本線側に曲がった桁式のホームが建設されました。10月には屋根の取り付けまで完了し、照明などの工事が行われていました。ホームの位置が変わったため、北改札側の橋上駅舎に通じる階段も一旦撤去されましたが、9~12番線と比べると移動量はわずかであるため、ほぼ同じ位置に新しい階段が復旧されています。
※この先画像が15枚(711KB)あります。画像はスクロールに従って自動で読み込まれます。(JavaScriptが有効の場合のみ)データ容量にご注意ください。
左(1):9番線から7・8番線ホームの東京寄りを見る。7・8番線は車両基地側に大きく飛び出している。
右(2):8番線と9番線の合流部分。
7・8番線ホームは、東海道線下り本線(東京方面)から直接進入することは考慮されていません。そのため、9~12番線と比べてホームが全体的に東京方面にずらされており、9番線のホーム端から見ると車両基地の直前までホームが続いていることが確認できます。8番線はホームが終わると9番線から車両基地に入る線路にすぐに合流する配線となっています。
左(1):9番線と8番線の接近部分は8番線側のホームが削られ、8番線の軌道スペースを捻出した。
右(2):ホーム中央付近にあった旧地下通路の開口部はケーブルの敷設ルートに転用。
8番線ホームの中央付近は9番線が拡幅された結果、線路を2線分敷設するスペースが無くなりました。このため、8番線のホーム幅を削って線路の敷設スペースを捻出しています。7・8番線ホームは品川駅の改良工事完成後は着工前と同様に臨時ホームとして使用される予定となっており、使用頻度が低いと予想されるため、このようなホーム幅でも十分であると判断されたものと見られます。
一方、このホーム縮小部分の近傍には1998年まで使用されていた地下通路の階段が蓋をした状態で残されていました。この地下通路は現在も駅ナカ商業施設の商品搬入や、電力・ガスなどの配管の敷設ルートとして使用されており、7・8番線ホームの階段についても、開口部のサイズを縮小した上でケーブルの敷設ルートとして再整備されました。
7・8番線ホーム中央付近に設置されたエスカレータ
臨時ホームはこれまで使用頻度が低かったことから、エスカレーターやエレベーターなどのバリアフリー施設が一切存在しませんでした。今回の改良工事に合わせて7・8番線でもエスカレーター・エレベーターの新設が実施されており、通常のホームとしても運用可能になる見込みです。
上:9番線から見た7・8番線ホームの横浜寄り。ホーム先端の位置は改築前よりも後退した。
左下(2):6番線から見た7・8番線ホームの横浜寄り。7番線側は金属柵が設置されている。
右下(3):9・10番線ホーム端から横浜方面を見る。右の8番線は9番線のシーサス手前で合流。
7・8番線ホームは東京寄りのホームが延長されたため、代わりに横浜寄りのホームが短縮されました。短縮に合わせてホームは桁式に全面改築されており、橋上駅舎につながる階段とエレベーターが新設されています。ホームが短縮されて生み出されたスペースは、ホーム入口の分岐器設置スペースに転用されています。これにより、従来はシーサスクロッシングの一部をダブルスリップスイッチにしていたものを片開き分岐器のみで構成可能になり、メンテナンス性が向上しています。
なお、現時点では7番線は使用しないため、軌道が敷設されていませんが、横浜寄りのホーム先端は7番線側のみ固定式の金属柵が設置されています。このことから、7番線は停止位置が東京寄りにずれるものと予想されます。
11月に入り、7・8番線ホーム上には案内板類が設置された。
11月に入ると、ホーム本体は概ね完成したことから、案内板や発車案内用のLED表示器を設置する工事が始まりました。案内板は全てバックライトに省エネルギーなLED照明を用いた最新仕様となっています。また、ホーム番線を示す案内板は全てシールとなっており、現時点では「東海道線・東京方面」の文字のみが書かれています。(この理由は次項で説明)
また、7番線側は軌道が敷設されておらずすぐには使用しないため、ホーム半面が板状の仮設柵で仕切られています。
上:12月7日より使用開始となる8番線へ降りる階段。
左下(2):まだ使用開始になっていない8番線の案内板。シールの下に「上野東京ライン」の文字。
右下(3):裏面には常磐線方面を示すと思しき緑色の背景色が見える。
橋上駅舎内の案内板も8番線の部分が書かれた新しいものに順次交換が開始されています。京急乗り換え口の近くにある7・8番線ホームに降りる階段の案内板は現時点ではグレーのシールで全体が隠蔽されていますが、その下にはうっすらと「上野東京ライン」の文字が見えるほか、裏面には常磐線への直通を示すと思われる緑色の背景色が少しだけ漏れているのが確認できます。
東海道線ホーム6番線の案内板はシールが二重貼りされており、2枚目はグレー1色になっている。
一方、現行の東海道線上り5・6番線ホームは、6番線側のみ案内板がシールに変わりました。このシールは二重に貼られており、1枚目が従来と同じ「東海道線・東京方面」、2枚目がグレー1色になっている模様です。
これらの不自然な案内板の答えは次の掲示でわかりました。
来たる12月7日(日)より、臨時ホーム8番線が使用開始となり、代わりに現在東海道線上り副本線となっている6番線が使用停止となる旨のお知らせが11月末より品川駅構内各所に掲出されました。これまでと同じ流れであると仮定すると、8番線を東海道線上り副本線として使用しつつ、6番線の東京寄りを下り線側に曲げる工事が行われるものと予想されます。7番線の軌道が敷設されていないのは、6番線を改築する際、十分な離隔を確保し、工事をスムーズに進める目的があるものと見られます。
品川駅の東海道線上り線は、列車本数の多い平日朝ラッシュ時に5番線と6番線2本ある線路を交互に使う「交互発着」が実施されています。東海道線上り副本線が8番線に変わることにより、昨年11月に使用を開始した新車両基地の西端の東海道線新上り本線を走行する営業列車が初めて出現することになります。
品川駅の2014年12月7日以降の配線図
来年3月よりいよいよ上野東京ラインが開業します。10月末にJR東日本から発表された運行系統の概要によると、常磐線からの直通列車は品川駅で折り返すことが予定されており、改良工事の完成した9~11番線ホームが本格的に使用されることが見込まれます。
一方、品川駅と隣接する車両基地の再開発事業は完成が2020年頃の予定となっており、現時点で完成ではなくむしろこれからが本番と言えます。新駅設置も決定した品川地区の今後に引き続き注目です。
▼参考
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れについて(東海道線との相互直通運転) - JR東日本(2002年3月27日発表)
宇都宮・高崎・常磐線の東京駅乗り入れ工事の着手について - JR東日本(2008年3月26日発表・PDF/62KB)
田町~品川駅間に新駅を設置し、まちづくりを進めます - JR東日本(2014年6月3日発表・PDF/1.41MB)
「上野東京ライン」開業により、南北の大動脈が動き出します~開業時期、直通運転の概要について~ - JR東日本 (2014年10月30日発表・PDF/27KB)
品川駅改良工事(第1回・第2回切換)について - 鉄道と電気技術2012年5月号33~38ページ
東北縦貫線「上野東京ライン」開業に向けて-東北縦貫線計画と開業を見据えた駅改良計画- - 土木施工2014年4月号42~44ページ
品川駅乗降場改修工事-配線変更に伴う供用中の駅ホーム改修- - 土木施工2014年4月号52~54ページ
「アジアヘッドクォーター特区」の指定について|東京都
特定都市再生緊急整備地域の指定の申入れについて/東京都都市整備局
品川・田町駅周辺まちづくりガイドライン2014意見募集|東京都
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