メインコンテンツにスキップ

カラスを敵に回さない方がいい。カラスは人間に恨みを持つと17年忘れない

記事の本文にスキップ

30件のコメントを見る

著者

公開:更新:

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

 カラスは驚異的な知能と記憶力、社会性で知られている。味方認定されるとプレゼントを届けてくれたり守ってくれたりと心強いが、敵認定されたら最後、長期にわたって恨まれ続けることとなる。

 生物学者の研究によると、カラスの恨みは17年も消えることがないという。しかも彼らは、その恨みを仲間内で共有する。つまり1匹を敵にすると、群れを敵にする恐れがあるという。

広告の下に記事が続いています

 これを知れば、カラスを敵に回すことがいかに恐ろしいかがわかるはずだ。

カラスの群れを敵に回した大学教授の末路

 カラスの執念と恨み深さを身をもって体験したのは、米国ワシントン大学のジョン・マーザルフ教授らだ。

 その発端は2006年のとある実験にある。彼らは何を思ったか、恐ろしげなマスクを被ったうえで、7匹のカラスを捕獲した。

 教授らはカラスに危害を加えたりはしなかった。ただ、それぞれの足にタグを取り付けて、そのあとすぐに逃してやった。それなのに、カラスから大きな恨みを買う羽目になったのだ。

 マーザルフ教授らは、それから数年間というもの、時折例のホラーマスクを被って大学キャンパスを散策し、そこにいるカラスたちに餌を与えていた。

 だがこれが恐怖体験だったのだ。マスクを着用しているときは、53羽中47羽のカラスからカァカァと激しく威嚇されたからだ。

 教授らが捕獲したのは7羽だけだ。それなのに、なぜこんなにも大勢のカラスから嫌われるハメになったのだろう?

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

17年敵認定した人間の顔を忘れず、仲間たちで共有するカラス

 この恐怖体験のピークは2013年で、それから徐々に威嚇してくるカラスは減っていったという。それでも最終的に威嚇されることがなくなったのは、最初の捕獲から17年後のことだ。

 2023年9月、マーザルフ教授は懲りもせずホラーマスクを着用しながら散歩をしていたが、彼に攻撃的な態度をとるカラスはついにいなくなった。

 じつはこの実験では、ホラーマスクのほかに、当時米国の副大統領だったディック・チェイニーの顔を模した”中立的”なマスクも使われていた。

 チェイニーマスクを着けた人はカラスに何の苦痛も与えずに餌を与え、カラスから威嚇されることがなかった。

 こうしたホラーマスクとチェイニーマスクに対するカラスの反応は、その意味(恐ろしいか中立か)を知らないボランティアがマスクをつけた時でも起きた。

 やはりホラーマスクを着用したときだけ、カラスから威嚇されたのだ。

 こうしたことは、カラスが顔で危険人物を見分け、それを仲間に伝えて共有できることを示している。

 しかもそうした記憶は最長17年間も消えることがないのだ。

 カラスの寿命は種類によって異なるが、一般的には野生で10~20年程度と言われている。なので一度恨まれたら死ぬまで恨まれ続けることになる。

 さらに自分が死んでも憎い相手を仲間に伝えて共有するので、それを含めて17年間は、カラスに恨まれながら過ごすこととなる。

この画像を大きなサイズで見る
Photo by:iStock

カラスは知識や経験を世代を超えて受け継いでいる

 カラスが非常に高い知能の持ち主であることはよく知られている。その知能は、ただ脅威を認識し、恨みを抱くだけにとどまらない。

 道路に硬いクルミを落とし、そこを通過する車に割らせたり、枝から作ったフックでなかなか届かない場所の食べ物を取り出したりと、彼らは創意工夫にあふれた生き物だ。

 またカラスは高度な社会の中で生きている。親しい家族と一緒に生活し、豊かな感情を持っている。死んだ仲間のために「葬式」らしきものを行っているとする研究もある。

 そうした社会生活を支えているのが、カラスのコミュニケーション能力だ。

 カラスはさまざまな鳴き声で仲間と会話を交わす。そうした鳴き声には方言すらあるというのだから驚きである。

 このコミュニケーションは、今回の事例のように危険人物を伝えるだけのものではない。エサについての情報を共有し、外敵を撃退するために同盟を形成する際にも使われると考えられている。

 とりわけ注目すべきことは、カラスが仲間同士で教え合うことだ。

 カラスがある人物や物が危険であることを学ぶと、それを仲間に伝え、その情報が群れの中であっという間に共有される。

 そうした知識は、次世代にも受け継がれ、若いカラスでも直接経験することなく危険性を知ることができる。

 このように知識を世代から世代へと伝えることができる動物は、人間を除けばわずかしか知られていない。

カラスがさまざまな文化で知性の象徴であるのもある意味当然なのかもしれない。

 この研究は『Proceedings of the Royal Society B』に掲載された。

References: Crows can hold grudges against certain humans for up to 17 years - Earth.com

広告の下にスタッフが選んだ「あわせて読みたい」が続きます

同じカテゴリーの記事一覧

この記事へのコメント、30件

コメントを書く

  1. 漆原教授みたいな人はどこの大学にもいるのか

    1. アフリカのいろんな部族が作ったお面で実験してたら完璧だった。
      博士号取ってるんだし定期的に論文発表もしてるはずなんだけど、なんか漆原教授が真面目に実験やったり論文書いたりしてる姿って想像できない。

  2.  カラスの寿命( 7-8 年らしい)から考えると口伝が 2,3 世代くらい引き継がれた感じかな。 ってことは容貌というか見た目に関してそれなりに詳しく伝える方法がありそうですね。 彼らが文字に起こせるようになったら記憶の蓄積ができて、一気に人間に近づける可能性があるように思います。 おそらく文字を読めるようにはなっても書く方法がなさそうだから今くらいで済んでいるのかなぁと。 はっ!嘴をつかった楔形文字みたいなのができるかも? 

    1. 単に鳥のつつき痕だと思っていたものが実は鳥の文字だった説

    2. いやいやホラーマスクが出てきたら
      「あいつは危ない」と鳴くだけ
      教えなくても、その声が聞こえた烏は眼で見て確認する
      それだけ

    3. 飼育下だと20~30年生きるとも言われてるから
      17年経って威嚇されなくなったのは
      当初のカラスが居なくなったからという面もあるかもね。

      もちろんクルミ割りのように仲間の真似をすることで
      世代を超えて受け継がれることもあるだろうけど。

    4. >カラスの寿命は種類によって異なるが、一般的には野生で10~20年程度と言われている。なので一度恨まれたら死ぬまで恨まれ続けることになる

  3. 散歩中の犬がうっかり朝食中のカラスを驚かせたのが祟り、数ヶ月間群れに付け狙われた
    狙われたのは、犬と連れの人間の両方
    驚かせたのは1羽だけよ

  4. それって恨みを持ってたんじゃなくて単にホラーマスクを危険な生物と認識しただけじゃないのか?

    1. 別の場所でホラーマスクの代わりに
      カラスが好きそうなデザインのマスクをつけて
      同じ実験をしてみてほしい

    2. 17年したら攻撃的な態度も見られなくなったって書いてあるやん😂
      これで因果関係がしっかり説明できてるんだが、読解力の問題かな?

  5. カ~ラ~ス~なぜ鳴くの~♪
    A.憎きアイツのツラを仲間に伝え17年間きっちり恨み抜く為

  6. 大阪の堺筋本町とかあの界隈のガラの悪いカラス多いんだけど(標識の上からすげぇ威嚇してくる連中)あんなのにただ見つめて怯まないだけでも恨まれんるんですかね?

    1. タダ見つめるだけって、野生の生物にとっては威嚇行為や示威行為だもの

      1. ヘェ〜、あんな不特定大多数の中で私の顔を覚えてたらそれはそれで凄いですね。

  7. カラスにお仲間さん扱いにされ、時々よくわからん遊び顔を見せてくれる
    悪くもないし、面白いので気にしないけどなぜ仲間にされたのだろう

    1. あいさつしたり他所のごみ漁りをスルーしてたら割と警戒心解いてくれるよ

  8. 中型のオカメインコですら賢くてびびるんだから
    カラスだったら人の顔を覚えるくらいなんてことないだろうね…

  9. MDさん「みんなを悲しませるオペラOは許しません」

  10. 痩せたカラスに弁当のおかずをあげた時はどうやって見つけたのか知らんけど毎朝ベランダきてカァ!って挨拶して行くようになったな
    引っ越したあとはついてこなくなったけど時々ベランダで寛いでたしカラスって賢いんだなぁとしみじみ思ったよ
    あと可愛いねんな

  11. 舐めんじゃねえぞこっちがカラスに襲われたら死ぬまで覚えててやるからな

    1. 研究内容からしてカラスの中でもどういうカラスに襲われたかを見分けてそれを周囲の人間にも周知するまでしないとカラスと同等になれんようだが

  12. 17年とかいうから寿命どうなんだろうって思ったら
    種によって差はあるけど
    だいたいそれくらい生きるみたいだなカラスって

  13. 絶対にありえない

    カラスの寿命は7~8年

    飼育環境下でなければ15年なんて生きられない

    1. 資料によっては野生での平均寿命が
      10~15年となってるものもあるから
      はっきりとは分かってないんじゃなかろうか。

      飼育下では20~30年生きるそうだから
      環境次第では野生でもそのくらい生きる可能性もあるかも。

  14. 世代で記憶を継承していくのか面白い
    そして何時かはその記憶もすたれていくのも面白い
    やっぱ実体験世代が居なくなると段々記憶もすたれるんだろうなぁ

  15. 逆に怪我をして飛べなくなったカラスを保護して、怪我が治るまで懇切丁寧に愛情かけて飼育して、その甲斐もあってカラスの怪我も治り飛べるようになったから野生に返したら、カラスは何年もの間、その人が出かける度に何処からかやってきて肩に乗って撫でるのをせがむ様になった。という話もある

  16. どうやって個人を特定し仲間に伝えているのか、そこがキモだろ

    個人の特徴を会話だけで伝えているのか、危険人物が来てそいつが敵だと鳴き騒ぐのじゃ全然違うぞ

  17. 生きてる間中、姿を見たら「あいつは嫌なやつだ気をつけろ」というのを鳴いて他のカラスに伝えてた?(マスクを被らないで歩いても攻撃はなし?)
    その鳴き声を聞いたカラスは一緒になって威嚇したりしたけど、「あいつは嫌なやつだ気をつけろ」を鳴くカラスがいなくなったら気にしなくなったでいいの?
    仲間や子に伝わり続けたなら17年で終わるはずないから7匹のカラスが死に絶えたのでおわった

コメントを書く

0/400文字

書き込む前にコメントポリシーをご一読ください。

リニューアルについてのご意見はこちらのページで募集中!

知る

知るについての記事をすべて見る

動物・鳥類

動物・鳥類についての記事をすべて見る

最新記事

最新記事をすべて見る