第9回東東京読書会レポート(執筆者・東京創元社S)

 
 みなさんこんにちは。あっという間に7月になってしまいました。いまさらでたいへん恐縮なのですが、5月24日に開催した第9回東東京読書会のレポートをお届けしたいと思います。これを書くために当日のメモを引っ張り出したのですが、いやー、すっかり記憶から抜け落ちているので、メモ魔でよかったよかった……。


 第9回の課題は、世話人の青木悦子さんイチオシのアガサ・クリスティー『復讐の女神』でした。集まってくださったみなさんは、「クリスティーは好きでだいたい読んでる」という猛者から、「ほとんど読んだことがない」という方までいろいろでしたが、おおむね「おもしろかった!」という感想が多かったです。なかには「中学生のころクリスティーにはまってたくさん読んで、生涯のベスト書籍です!」という方も。あらすじはこんなかんじです。


復讐の女神 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

復讐の女神 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)


ミス・マープルのもとに、かつてある事件で冒険をともにし、先ごろ逝去した大富豪ラフィール氏の手紙が届いた。それは彼女に新たな事件の謎を解いてもらいたいという内容だったが、事件がどんなものなのかも、誰が関係しているのかもいっさい明かされていなかった。まるで雲をつかむような話だったが、ミス・マープルは彼の招待を受け、見知らぬ人々ばかりの英国庭園バスツアーに参加する。しかし彼女が事件の輪郭らしいものをつかみはじめたとき、ツアーの乗客が不審な死をとげて……。

 ちなみに東東京読書会はグループ分けせずにディスカッションをおこなっており、最初に自己紹介と簡単な感想を言ってもらうほかは、自由にトークしていただくスタイルです。自己紹介が終わってディスカッションが始まると、どんどん意見が出てきました。目立った意見としては、「本書の最大の魅力は、何が起こっているのかまったくわからない、というところから物語が始まる点だ」というご指摘がありました。ほんとうに、雲をつかむような状態から、じょじょに事件のかたちが見えてくるのがおもしろいんですよね。そのほか、「登場人物や犯人が考えたことをああでもないこうでもないと想像するのが楽しい」という意見も。この点は大勢でおなじ本について語り合う読書会自体にも言えると思います。


 作品についての解釈や、登場人物たちの動機や考えなどミステリ的な要素についてたっぷりお話したのですが、残念ながらネタバレになってしまう! ので、ご存じ探偵役のミス・マープルについて出た意見をご紹介したいと思います。


 「マープルさんはかわいいおばあちゃんというイメージがあったけど、平気で嘘をついて顔色も変わらないというのは意外だった」「したたかさや計算高さもある」「すてきなおばあさんという印象がなくなってきた」「でもそこが魅力」「かっこいい! こういうおばあさんになりたい」「食えないおばあさんっていいですよね」「話を聞き出すのが得意だから諜報員に向いている!」などなど……。さすが、ミス・マープルものの集大成と言える作品なだけに、いろいろな意見が飛び出しました。あとはみんなでマープルさんの収入源についての考察をしたりしたのも楽しかったですね〜。


 そのほか、「この作品は映像化されているけど、原作とまったく違う」「タイトルの『復讐の女神』って意味合いがずれているのでは?」「この話はどういう年代をイメージして書かれているのか? 1940年代くらい?」などなど、さまざまなポイントで盛り上がりました。二次会にもほとんどの方が参加してくださり、今回もとても楽しい会になりました!


 次回は記念すべき第10回ですので、いろいろな割引などを考え中です。詳細が決まりましたらまた告知させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします!


(東東京読書会世話人・東京創元社S)


東京創元社S


 小柄な編集者。日々ミステリを中心に翻訳書の編集にいそしむ。好きな食べ物は駄菓子のラムネ。2匹のフェレット飼いです。TwitterID:@little_hs