強者のみが生き残る? コメの未来は明るいか暗いか
田んぼには食料を生産する以外の役割があって、それがけっこう
大切なんだけど、意外と意識されていない。これを金額に換算すると
3兆7千億円程度になる。治水・生物多様性・景観などが含まれている。
東西南北に長く、土地によって気候も全く違う日本で唯一、
時期は違えどほぼ同じ栽培過程をたどる作物がある。
その作物を栽培している農家は、全国のどこでも、
同じ言葉を使ってその作物の栽培の話をすることができる。
その作物とは、コメのことである。
日本の気候風土にぴったりと合っているコメは、江戸時代には
お給料の支払に使われ、大名の資産の目安ともなっていた。
また、各地で秋に行われる祭は、稲作と密接に結びついている。
コメはそれほどまでに、古来から日本人に寄り添っている作物なのだった。
というようなことを知ると、朝ごはんにコメを食べたくならないかな?
おいしいおコメは他のどんな炭水化物にも勝ると思うが、
昨今のコメ消費量の激減を見ると、皆がそう思ってるわけではないらしい。
もしかしたら皆、おいしいコメを食べていないのかも。
さて、コメは他の作物と違い食味を計ることができる。
糖度などと違ってほぼ数字通りに判断できるところが素晴らしい。
食味値はタンパク含有量、水分、アミロース値などから数値化されるが、
「タンパク含有量」だけを目安にしてもいい。
タンパク含有量が、7以下であれば誰が食べてもおいしいおコメである。
7以下とさらりと言うが、その数値にするのはけっこう難しい。
平地がない中山間地では山を切り開いて棚田を作った。小さな田んぼが
延々と続く棚田は景観的には素晴らしくても、大型機械は入らないし、
作業性が悪くて経費がかさむから耕作放棄地になりやすい。
そしてそこでイノシシが繁殖しているという研究結果もあるのだった。
最近話題でおいしいと評判の北海道のブランド米、ゆめぴりかは
2009年にタンパク含有量6.8以下という基準を作り、
それ以上のものは「ゆめぴりか」として販売させなかった。
結果、ゆめぴりかを栽培した農家の6%しか出荷できなかったそうである。
クリアできたコメがあまりにも少なかったせいか、翌年は7.9%以下にして、
2011年からは7.4%以下にした。うーん、混乱したんだろうなあ。
その他、山形県のつや姫にも7.5%以下という基準値があり、
7.5%以上のものには「つや姫」という名前をつけて売ることが出来ない。
つや姫、ゆめぴりか以外にも、基準値を設けているおコメはいくつかある。
地域ブランド米は「数値化された食味」で勝負しているということだろう。
おいしさが保証されているという点で大変な強みだが、
一般ピープルは知っているのかな? もう少し広報したらどうだろうか。
このタンパク含有量を左右するのは肥料だ。
タンパク質=チッソ分だからね。
そして、ここで悩ましい問題が発生する。収量を左右するのもチッソ分である。
収量を上げたい人はチッソ(つまり肥料)をたくさん入れたい。
多い方がたくさん採れる。でも入れれば入れるほどおいしくならない。
おいしいのと多収とどっちを選ぶ? なんていう選択肢はあるだろうか。
慣行栽培であれば迷うこと無く多収を選ぶんじゃないかと思うわたくし。
なぜなら、米価はほんとに鼻血が出そうなくらい安いのである。
コメの等級は整粒歩合、胴割れ、未熟、被害、死米などの割合で決まる。
等級が下がるとイヤだから、出荷前に自分ちで色彩選別機にかける農家が多い。
外いたコメは加工用なんかにはならなくて、鶏のエサとか肥料になる。
だから斑点米作るカメムシ対策にネオニコがまきたいのだった。
魚沼産コシヒカリ以外の慣行栽培のコメは、だいたい
60kg(1俵)11,000円から13,000円である(仮渡金)。これ、農家の売上ね。
コメの平均収量を調べてみたら10aあたり530kgで、えーと、約9俵である。
10俵取れないのかあ、なんかびっくり。高度化成とか使ってるんだろうに。
そして、コメ1俵あたりの経費は平均して約10,000円だ。
も、もしかして、利益は1俵あたりたった1,000円~3,000円? ひいー。
コメは面積が大きくなればなるほど利益が上がるため、
大規模化が推奨されている。栽培面積が50a以下の小規模農家は、
コメだけでは全然儲からないと言われている(慣行栽培の場合)。
わたくしの生まれ故郷鳥取を代表する中山間地の田んぼは、
高齢化も相まって絶滅の危機にある。耕作放棄地への道まっしぐらだ。
コメは平たい土地で大規模に、というのが世の趨勢、政府の戦略なのだった。
では有機米はどうだろう?
有機米は一般のルートを通じて販売されていない場合が多く、
その分、良い価格で取引されているため、末端価格も高い。
しかし収量が良くないので、儲かるかどうかは「うーん」って感じだ。
慣行栽培と同様、大規模化が必要だろう。
収量は、よくて8俵、普通は7俵、肥料少なめの人は6俵、
中には5俵とかいう人もいる。
毎日おいしいおコメを食べることができて大変しあわせなわたくし。
コメ不足にでもならないとコメの価値ってわかりづらいけど、
保存性があり携帯も簡単で腹持ち良く力も出るしで、優れた食品だよね。
輸入に頼ってる小麦より、コメを食べたほうがいいのになあ。
チッソ分が多いとイモチ病が出やすく、有機だと効果のある農薬がまけないから、
チッソは総じて少なめである。ということは、タンパク含有量も少なめである。
だから有機のコメはおいしいことが多いのだった。
コメの世界ではずいぶん前から、高くて(安心で)おいしいものか、
安いがそれなりの味のものという二極化が進んでいる。
すんごく高いものかすんごく安いものが生き残るということだろう。
ってことは、有機米やブランド米作ってる人と、
大規模農家しか生き残れないってこと?
日本人が一日に食べるコメの量は1人150g、約一合。
一年間食べても一俵に満たない。そうしてコメはますます余り続ける。
付加価値のついたコメには競争力があるから、
国内でも海外でも勝負できるかもしれない。しかし、
それ以外のコメはどうなるかな? 減反と補助金がなくなったら?
これからコメ農家の淘汰が始まるのかもしれないなあ。
中山間地の棚田はイノシシの巣になるしかないのかしらん。
しかし今の自分にはごはんをおかわりすることしかできないのだった。
そしてよく考えてみたらわたくしは慣行栽培のコメは食べないから、
淘汰される人たちの役には立たないのだった。ううううう。ごめんなさい。
★現在ブログランキング参加中です!
↓プキッとクリック、ご協力お願いいたします!
こちらもよろしくお願いいたします!
にほんブログ村
- 関連記事
-
- 五十嵐晴夫さんに聞いた「稲の直播栽培」根掘り葉掘り
- 強者のみが生き残る? コメの未来は明るいか暗いか
- 新米の季節のカメムシの話