五十嵐晴夫さんに聞いた「稲の直播栽培」根掘り葉掘り
バラマキ中の五十嵐晴夫さん。定年後の直播栽培にチャレンジしています。
5月に稲の直播きを見学したあと、根掘り葉掘り聞いたことを
書こうと思ってすっかり失念していたことに昨日気付きました。
あらー。
ってことで、メモを頼りに書いてみます。
五十嵐晴夫さんは、前回ご紹介した60歳から始めるぶどう栽培とともに
60歳から始めるコメ栽培として直播栽培に取り組んでいる。
詳細はこちらから→http://hontabe.blog6.fc2.com/blog-entry-465.html
60歳からの省力化米栽培「直播き」に挑戦-五十嵐晴夫さん
先日田んぼを見に行ってみたら、直播栽培の田んぼの稲は
田植えをしたのと変わらない感じでフツーに育っていた。
「これ、直播き」と言われないと全然気づかないが、
よーく見てみると稲の生育も生え方もきちんと揃っていない。
なるほどー。これかーって感じ。
五十嵐さんの直播きは直播き機を使わないバラマキなので、
密植と疎植部分ができてしまう。密植部分のぶんけつ数は少なくなるが
疎植部分のぶんけつ数は増えるから全体で見ると収量は変わらないらしい。
五十嵐さんの田んぼがあるあたりでは、食味はそんなに良くはないが
収量はいいらしく慣行栽培で10俵から11俵とれる。
昨年の直播の田んぼでは10俵収穫できたので、今年は11俵が目標だ。
稲は順調に育っているように見える。
「田植えをしなくていいし収量は変わらないしで
いいことばかりなのになんでみんなやらないのかな」と五十嵐さんは言う。
「60歳で定年退職してぶらぶらしてるくらいだったら、農地はあるんだから
コメを作ればいいのに。パチンコ行くより健康にいいよねえ」
しかし地域の人々は直播栽培はうまくいかないと思っているらしい。
それは直播栽培で盛大に失敗している人がこの地域にいるから、
ってことらしくて、わたくしは申し訳ないが笑ってしまった。
あんまり凹凸はないように見えるけど、凹んでるところがあるよね。
でも田植えしてもこういう田んぼになってる人いるし
よくわからないわー、田んぼ。
昨年近所中の評判になったその直播きの田んぼは
草ぼうぼうでとても田んぼに見えなかったらしい。
理由は技術ではなく、持ち主の手が回らないという単なる管理不足なのだが、
皆の脳裏にはなぜか「直播き=やっぱりダメ」が強烈に焼き付いてしまった。
当面はチャレンジする人はいなさそうである。
五十嵐さんの成功が評判になれば始める人がいるかもしれない。
つーことで、根掘り葉掘り聞いた結果は以下の様なものである。
まず田んぼの代かきをしたあと、3日間水を抜かなくてはならない。
種モミをまいた後、モミが泥のなかに深く入ってしまわないよう
表面をある程度固める必要があるためらしい。
3日間というのは五十嵐さんの田んぼの場合で、土質によっては
適正な日数がそれぞれにあるだろうということだ。
この後再び水を入れ、溝切りをしたらすぐに種モミをまく。
種モミはJAで購入後、業者に鉄コーティングを依頼しておく。
散布量は一反あたり3kgである。3,000円くらいでできるらしい。
機械でバラマキするのでは種にかかる時間は一反分で10分程度だ。
田植えをすることを考えるとあまりにも短い。
え? もう終わったの? って感じだ。
この地域では5月20日ごろまでにまかないと収量に差がでる。
地域によって違うのだろうと思うが、田植えをしたものよりも
直播きでは出穂が10日間ほど遅れる。
五十嵐さんは早生・中生品種のハエヌキを選択している。
あと、つや姫の後継品種(品種名公募中)とか良さそうだとのこと。
バラマキ後は田んぼをそのままにしておけばいいかというとそんなことはなく、
約1週間後にもう一度水を落とし、1週間干したままにする。
ここで稲は発芽する。芽が出たら再び水を張り、除草剤を散布する。
その後の管理は田植えをしたものと同じだ。
お隣の田植えをした田んぼの風景。きっちりまっすぐそろっております。
せいれーつ!!! って感じ。
五十嵐さんの直播きの田んぼ。バラバラっとしておりますね。
分けつ数も多かったり少なかったりでバラついてそう。
稲の生育は当然だがバラツキがありきちんと揃わない。ということは、
稲刈り時期に熟度にもバラツキがあるということで食味に影響する。
しかし付加価値商品ではないからOKなのだった。
「食味が」とか「無農薬で」「有機で」みたいな付加価値商品は、
除草機が入らないバラマキでの直播きは不可能なのらしい。
そこでふと思うわたくし。
直播き機を遣えば有機でもできるかもしれないな。
でも直播き機ってお値段どれぐらいするんだろ。
60歳過ぎてから新しい機械買うの大変かもな、なんて思うと
バラマキのほうが良さそうだが、どうだろうか。わからん。
また、直播栽培は田んぼが平坦じゃないと生育に差がつきやすい。
さらに、水管理の自由度が高くないところでするのはむずかしい。
なぜなら、直播き前と後に水を抜く必要があるからだ。
これが、田植えをする他の農家と水のタイミングが合わないらしい。
冬期湛水と似たような感じだね。
どこでもかしこでもできるやり方ではないということだ。
ともあれ、苗はきちんと生育している。
ハエヌキは草丈が低く倒伏しにくいという特徴があるが、
稲の丈が非常に高くなっているのは直播栽培の特徴らしい。
去年の食味は「こんなもんかもね」だった。今年はどうかな?
今後の課題は肥培管理と田んぼを平坦にすることだと五十嵐さんは言う。
そして「カンタンなのになぜ誰もしないのかなー」とカンタンそうに言っていたが、
初期の水管理などは上記のようにけっこうめんどくさいしむずかしいのだ。
そこんとこがうまくできなくて失敗する人もいるのだが、
五十嵐さんは失敗しないでうまくやれているということだろう。
重そうに頭を垂れてる穂もあれば、上むいて突っ立ってるのもあり、
これが生育のバラツキってやつらしいです。
なんかイナゴがたくさんいてキーって感じでした。
ぶどうも米も、五十嵐さんのテーマは60歳からの省力化栽培である。
地域の人が元気で85歳までできる農業をどのように省力化すればいいか、
いろいろ考え一番いい方法を模索し実践しているのが
ほんとうにすんばらしいとわたくしは思う。
大規模化を目指している若いもんにとっては邪魔! と言いたくなるだろう
高齢者の小規模・省力化栽培だが、地域に若いもんがいないところだってある。
大規模化できるところは農地が足りない状態になっているとよく聞くが、
中山間地や大規模栽培が不可能な地域の農地は荒れるばかりである。
じいさまたちがあと5年、10年続けられる農業、
定年退職後パチンコで預金を食い潰すことなく楽しくできる農業。
そんなやり方があるとすばらしい。
五十嵐さんのチャレンジにはそのヒントがあるような気がするのだった。
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