「野菜の時間」とその対価について
定植時のナス。毎年ヘロヘロしてて不安だけどフツーに生育します。
9月頃、野菜が高いとニュースになっていましたね。
スーパーでちらりと見たなかで一番ビックリしたのはきゅうり。
一本100円してましたよ。きゅうりが。一本100円!!!(繰り返し)。
きゅうり100円と言えば、以前八百屋さんの講演で
「きゅうり1本100円じゃびっくりしちゃうけど、1本50円で3本150円なら大丈夫!」
なんちて言われたことをを思い出したのですが、確かに少しびっくりしました。
野菜が高くてびっくりするってのはこういう感じか、なんちて思った次第です。
さて、そういう需要と供給の関係で価格決定、みたいなこととはまったく関係なく、
今年わたくし、野菜の価格について思うところがありました。
なんつーか、情緒的な話なので、どうかと思ったけど書いてみます。
わたくしの「ほんたべ農園」では今年5月1日ごろに野菜苗を定植しました。
ナスの場合、第一花がついているものを購入するので、第一果の収穫は5月23日でした。
きゅうりは25日です。きゅうりって生育が早いのですね。
で、その後、今年は台風でやられなかったので、まだ収穫が続いています。
接木苗のほうが元気がいいのは、区民農園で連作障害が出ているからでしょう。
よそんちの畑ではすでにナスは終了していますが、
わたくしはしつこく、しつこーく11月まで収穫する予定です。
わたくしの存じ上げているプロのナス農家は一本の木から200個収穫するそうですが
素人のわたくしの場合、5月末から11月まで、取れて50個くらいでしょう。
数年前、ちまちまと収量を数えたことがあるのですが、5月末第一果収穫から
8月4日までで一本あたり24個でした(このへんでめんどくさくなった)。
枯れたやつとか生育が悪いやつとか合わせて5本分の平均値なので、
収量が多かった木はもう少し取れてたと思います。
一本から200個というナスドリームはまだまだ遠く、というか
決して実現しない気がしています。
さて、粛々とナスをならせてくれた木に対してわたくしがしたことと言えば、
植穴にボカシ肥料を入れて支柱を立て、誘引し、思いついたように追肥をし、
真夏のクソ暑い日の早朝に水をドバドバやっただけです。
その間、ナスは勝手に花をつけ、花バチやらアブやらの受粉を介して結実し、
勝手に果実を太らせています。ヒトは何もしていないと言っていいでしょう。
おひさまと雨と土、微生物の力を借りてナスが自分で大きくなっているのです。
ナスの花が咲き、収穫できるまでにかかる時間は15日から20日くらいです。
スーパーに並ぶナス、それぞれ一個ずつに15日から20日かかっている。
焼きナスの皮をむきつつわたくしはこのことに今年初めて気がつき愕然としました。
よる年波のせいでしょうか。焼きナスの皮をむきながらわたくしは、
その「ナスの時間」を思い、ちょっとだけ涙が出そうになりました。
ほとんど肥料などやらず、雨が多かった今年は水やりもほとんどせず
誘引すらテキトーで、9月頃から「夏季剪定」と称して枝をバチバチ剪定し、
追肥などやらなかったにも関わらず、ナスは新芽を出してきれいな花を咲かせ、
粛々と果実を太らせている。
わたくしはそのナスの時間も食べているのです。
どんな野菜もヒトの手を借りる必要はありますが、一度地面に根を張ってしまえば
基本的には勝手に大きくなっているとも言ってもいいでしょう。
そして、それぞれの野菜に食べられる大きさになるまでの時間があります。
わたくしたちは、その時間を含めて農家に対価を払っている。
であれば、きゅうり一本100円でいいんじゃないの?
わたくしの畑で今現在、相変わらず粛々と大きくなっている砂糖のように甘いナスは、
一個100円でも売る気にはなれませんから、なんか1個50円くらいで売ってる
農家の人々はスゴいなーとマジで思います(仕事だから当然か)。
生育期間が長い果樹類なんか「売ってもらってありがとうございます」って感じです。
野菜が高いとかおっしゃる方々は一度ご自分で作ってみるといいでしょう。
それぞれの「野菜の時間」を実感することができるでしょう。
そして、すべての野菜とその時間に思いをはせ、高いだの、買えないだの、
家計がどうだの、葱が高くてイヤねーだのと、好き勝手に言うことの傲慢さなども
少しだけ感じてみるといいのではないか、とかわたくしも傲慢に考えてみた次第です。
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