fc2ブログ

「消費者の理解が足りない」のは有機農業だけじゃなくて農業全般

author photo

Byほんたべ

002_202111041606083c0.jpg
今年のほんたべ農園、いつもの通りで秋作の種まきが出遅れましたが、
この陽気と雨で粛々と生育し、今や大根この大きさ。小松菜もいい感じです。
スーパーの野菜が安いのも当然だよなと思いますです。


大地を守る会で働いていた1990年代から有機界隈でずっと言われているのが、
「消費者の理解が足りない」という言葉であります。

わたくしもずっとそう思っていて、農水省の有機の会議とかに出席すると
有機農業界隈の人が「消費者の理解が足りない」「啓蒙しなくては」的な話になります。
わたくしも「そうだよねそうだよね」と思い念仏のように「理解理解」と唱えてきました。

が。最近ふと。そこんとこに疑問が生じたのでありました。
「有機について理解が足りない」って、有機の何にだろう?

この言葉と同時によく言われるのが「有機野菜は値段が安い」です。
「有機野菜は付加価値商品だから割高になるべきだ」という場合もあります。

「値段が安い」と何が困るかというと、有機JAS認証に経費がかかることや、
農薬が使えないから病害虫被害が多い=歩留まりが悪いから反収が少ないとかってことで、
そういうことひっくるめて一般的な野菜価格の1.2倍とか1.5倍とかが必要、
なんちてよく言われます。

人によっては2倍とか言うけど、それはちょっとどうかな、なんちてわたくしは思います。
が、まあ、買ってくれる人がいればいいと思います。売れればいいんです売れれば。

なんてことは置いといて、こういった価格的なことも「理解」の一部です。
一般的な野菜に比べ「お高い」ことについての理解がないってのが有機の常識。
と言われているようです。

その他の「理解」には何があるかな? ちょびっと考えて思いついたのが、
1990年代のクレーム、虫が食ってるとか病気になってるとかの見た目の悪さ、
または土がついてるとか葱がむいてないとかってことのように思いますが、
ふと気づくと大地を守る会の宅配で届く野菜も、基本は「洗い大根」になっているし、
葱もむき葱が主流です。人参ですら洗ってあります。

わたくしが在籍していたころは「葱をむくのめんどくさい」とか
「人参を洗うと外側が傷むから傷みが早い」とか農家の方々に強硬に反対されていましたが、
最近の大地の野菜の見た目は一般的なスーパーの野菜に限りなく近づいていますす。
オイシックスになったからか。いや、その前から洗いにしてとお願いしてたはず。

2000年頃からは出荷規格の見直しも行い品質的にはすんばらしく向上して(るはず)、
現在の大地の野菜には虫食いも病気もほとんどありません。というか病気については、
こと一般の野菜よりも発症しないため、病気のリスクはないんじゃないかと思います。

これは1970年頃から始まった有機農業の方々の畑の土に微生物が豊富になり、
激しい虫害や病気の発生が少なくなっていることも関係しているのではと想像しています。
長年の炭素分の投入は微生物相を豊かにし病害虫リスクを下げ、食味を良くしてくれるのです。

最近は有機野菜がご近所のサミットや成城石井で売られていますが、
隣で売られている慣行栽培のものと比較してもまったく遜色のない美しいものばかりです。
毎回FG袋なのに水滴がついてる、ってこと以外は。なんでついてるのかは不明だ。

んじゃ今、何が理解されていないのかしらん?

農水省の有機に対するアンケートを見てみると、価格的には1.2倍から1.5倍でもOK!
という人がほとんどで、価格的な理解はすでに得られているように思えます。

そもそも、有機野菜のメリットを享受したいと思っているのは都市部の人々、
さらに収入的に一定程度のレベルの人が多いことは容易に想像できます。
なにしろ1.5倍でもいいと言っているのですから、収入に余裕がないとムリでしょう。

しかし大根や葱が20円ほど高くなっただけでメディアが大騒ぎしているのを見ると
「野菜が高い」ことがどうしても許せないというか困る人はかなり多いと考えられます。
というか、世の中のほとんどの人が「野菜は高いと困る」と思っている、と
言ってもいいのではないでしょうか。

つまり、有機野菜を買う層に対しては有機への理解(価格面)はすでに得られていて、
「理解が足りない」のはそれ以外の層の方々についてで、そもそもこれは有機というより、
農業全般に対する理解の低さが問題なのではないか、とわたくしは思うのです。

最近、この陽気で野菜価格が再びべらぼうに安くなっているようですが、
メディアでは「野菜が安くて農家さん大変ね」みたいな報道はいっさいされません。
この価格の下落でキャベツをうなっちゃう映像とか出たら出たで
「うなっちゃうなら格安で売ってくれれば買うのに」みたいな、
農家的には的はずれなことを言う人もたくさんいると思います。

そんな価格で出荷するならうなったほうがましってことがわからないのは、
「物流経費」とか「ダンボール代」などの出荷についての想像力がないからでしょう。
それこそ「農業についての理解がない」からではないかと思う次第です。

Amazonプライムだと送料無料だし、勝手にダンボールに入ってくるしで、
一般的には物流経費に思いが至らないのは当然かもしれませんが、
それにしても。物を動かすにも梱包にもお金がかかるものなのです。

以前とある有機農家の方が
「有機の推進とか言ってる場合じゃなくて、今やらなくちゃいけないのは農業の推進です。
地方の農業事情は大変なことになってるのですから」
とおっしゃっていたことを最近しみじみと思い出します。

とりあえず「農家さんを守る」とかできもしないことを口走るのではなく、
まずは、農業に対する理解をもう少しでいいから深める必要があるんじゃないかしら。
「野菜が高くて大変ですー」とか言う前に。

有機農業だけでなく農業全般に対する理解を深めるのが喫緊の課題のように思えますが、
何をどうすればいいのかはわたくしには今のところ全然わかりません。
とりあえず、問題提起をしたいと思った次第です。


関連記事
Share

Comments 0

Leave a reply

456789'.split(''),s='';for(var i=0;i