農業は「強く」あるべき?
農業の記事よりもデジカメの記事のほうが興味深かったわたくしは、
経済についての興味が非常に薄く、この雑誌のターゲット層ではない。
ということをつくづく感じてしまったのでありましたよ。
週刊『東洋経済』「強い農業」を買ってみた。
2006年頃の農業ブーム時にもこんな特集されてたなー。
その後農業ブームはどうなったかな?
わたくしが某D社を退社した2009年、農地法の改正があり、
あちこちで企業の農業参入が話題になったことがあった。
当時、儲かってない建築業から農業へ転身を計った中小企業は多く、
ちらほらと参入の噂を聞いたが、何年か後にはほとんど聞かなくなった。
重機はあっても作物の栽培は難しい。
会社員が農業をするのも難しい。うまく行かなかったのかもしれない。
さてその年、イオンが農業部門に参入し
茨城県の牛久に自社農場を開設した。
わたくしは某D社退社後、地域活性のNPO法人で働いていた。
「グリーンエキスポ」というイベントで日本郵便の補助事業の表彰式があり、
それに参加して、偶然イオンアグリ創造の社長の講演を聞いたのだ。
内容は素晴らしいものだった。
高額な農業機器はリースにして経費管理し、苗は全て自社で賄う。
土壌分析をして施肥設計を行い、無駄をできるかぎり削減する。
農業において見えにくい経費の見える化を行い、ブランド品を作る、
というような話であった。
有機とか低農薬とか、農薬についての話はとくにされなかったが、
農薬も高いものなので、それも削減すると言ってたような気がする。
牛久で借りた耕作放棄地は3ヘクタールと記憶していたが、
『東洋経済』を読んだら2ヘクタールだった。
翌年に3ヘクタールにするって話だったかな?
農地の集積と大規模化でうまくいくのは米と施設園芸で、
その他の畑作でそれを行うのは難しい。大規模な畑作は、北海道及び
夏場の高原で行われているが、仮にこれを企業がやるとしたら、朝4時起き
夜は10時過ぎまで調整等々なんだが、これ、社員でできるのかな。
2010年3月、耕作放棄地や遊休農地の有効活用を目的として、
埼玉県で農業参入希望の企業と自治体とのマッチングイベントが行われた。
何でそれに参加したのは覚えていないが、いくつかの基調講演の中に、
イオンアグリ創造の広報のお姉さんの初年度総括の講演があった。
グリーンエキスポで聞いた明るい未来と経費削減の物語は、
予想外の経費発生の悲しい赤字の物語に変わっていた。
まず、苗が間に合わなかったので購入した。
土壌分析をして肥料を入れたら肥料代が思ったよりも高くついた。
その割にうまく栽培できず、病気や虫などで農薬代もかかった。
次作からは苗は自社で作ること、
農薬散布のタイミングなどが課題というような話だった。
苗を素人が作るのは意外と難しいが、できたのだろうか。
土壌分析診断は茨城県の普及員が行ったらしい。
質問してみたら、CECや腐植などは計ってなかったようだった。
どうやって施肥設計したのかな? 疑問は尽きない。
そしてお姉さんの総括は驚愕に値するものだった。
「企業が新規に農業参入する場合は、リスクを抑えるために
遊休農地の地主に作物が栽培できる土を作ってもらっておく等の
対策を取ることも考えたい。初期費用の発生はこれで回避できる」
遊休農地の有効活用は当時勤務していたNPO法人の使命だった。
地主から土地を借りるのでも大変なのに、そんな高いハードルを設けてどうする。
地主が土壌分析して肥料を入れて、さあ、どうぞ、なんて言うわけがない。
企業とは恐ろしいことを考えるものよのう。
しかし会場からは別にどよめきは起こらず講演は終わった。
グローバルといえば、日本酒の世界はマーケットを世界に転じているらしい。
地方の小さな蔵でもけっこう輸出に力を入れていて、意外な話が聞けたりする。
日本酒が世界にひろがっていくのはいい話だね。国内消費量が減ってるからね。
その後増やした3ヘクタール分は、地主にこういう交渉をしたのかな?
『東洋経済』の記事には赤字とも黒字とも書いてなかった。
さて、『東洋経済』の今回の特集に出ている人は
農業界にいると必ずどこかで噂を聞く人ばかりである。
農業界のトップを走ってる人、と言ってもいいかもしれない。
わたくしの周りにこんな人はいない。
もしかしたら、わたくしの周りの農家の努力が足りないということかな?
わたくしはそうは思わない。どんなビジネスでも成功者はいる。
それらキラ星のごとき人々はメディアにたびたび紹介される。
これをビジネスモデルにして同じようにすればいいのにと思うかもしれないが、
同じように出来る人、というかする人はそんなにいないだろう。
農業は「俺様」が多い職業であり、
人のやってることはやりたくないと言う人のほうが多い。
農業を支えているのは、それらの名もない人々である。
彼らがわたくしたちが普段食べているものをつくっている。
その「名もない人」はことさらに取り上げられない。
あたりまえ過ぎてつまらないからであろう。そういうものだ。
そしてわたくしはそのあたりまえの人々のことを知るのが好きである。
皆それぞれに個性があり、農業の取り組みもそれぞれでおもしろい。
だから、他者の目線から見た知らない人のことはどうでもいいのだった。
なんてことを、この記事を読んでいて考えてしまった。
しかし、いろんな人がいていろんなことが起きているのはわかった。
でもそれだけだ。
この特集記事が響かないわたくしは、この雑誌のターゲットではないのだろう。
わたくしの知っている人々が、ニッチな「有機農業界」の住民であり、
グローバルよりもローカルな存在であるからかもしれない。
ところで、農業は強くなれる、というか、強くなりたいと皆が思っているのかな?
月末の某D社の集会で、若い子たちを捕まえて聞いてみようっと。
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