FRBの2018年の5つの課題

Tim Duyがブルームバーグ論説で2018年にFRBが直面するであろう課題を5つ挙げている。

  1. インフレは加速するか?
    • FRB予測では常に1年後にインフレが生じることになっており、2017年もそうだった。
    • FRBは2017年については携帯電話サービスの価格低下などの一時的要因をインフレが目標に届かなかった理由にしており、2018年にはそうした要因が消えてインフレは1.9%まで加速するとしている。
    • もし2018年もインフレが予測を下回ったら、インフレ期待が下がっているので引き締め経路を緩めるべき、という議論がFRB内部で出てくるかもしれない。
    • ただ、2017年に弱いインフレにも関らず3回利上げしたことには留意しておく必要がある。労働市場が強ければ、また同じことが起きるかもしれない。
  2. 職の伸びは鈍化するか?
    • 過去3ヶ月に平均17万だった職の伸びは失業率に下方圧力を十分に加え続けているが、17年に0.6%ポイント低下した失業率についてFRBは0.2%ポイントの低下しか予測していない。
    • FRBが悲観的過ぎたことが明らかになり、賃金の伸びが加速すれば、政策はタカ派寄りになるかもしれない。
    • 一方、賃金の伸びもインフレも低い状態が続けば、安定的なインフレと整合的な長期的失業率の推計値を下方修正することに焦点が移るかもしれない。
  3. 減税効果を過小評価していないか?
    • 共和党が議会とホワイトハウスを掌握してすぐに、FRBは減税の効果を予測に織り込み始めた。
    • 過去3四半期の経済活動が予想よりも強かったことと相俟って、2018年の予測成長率は1年間に2.1%から2.5%まで高まった。
    • しかしFRBはまたもや悲観的過ぎるのかもしれない。年末に3四半期連続で3%以上の成長を達成することが見込まれていることからすると、減税が一時的にせよ予想よりも大きく2018年の成長を押し上げるのは想像に難くない。そうなると、FRBは予想よりも強い経済に直面することになる。
  4. 逆イールドカーブを気にすべきか?
    • 逆イールドは景気後退の前触れとなってきた実績があるが、FRBは伝統的にイールドカーブから多くを読み取ることに慎重だった。
    • ただ、ニール・カシュカリやロバート・カプランのように気にするべきという地区連銀総裁もいる。多くのアナリストはFRBが2018年に逆イールドをもたらすと予測しており、この問題は一部の当局者にとって一層の懸案事項となるだろう。
    • Duy自身は、成長が底堅く推移する限りイールドカーブを気にするのはFRBの中で少数派に留まる、と予想する。もしそうならば、FRBは逆イールドにも関わらず利上げを続ける理由を見つけるだろう。
  5. 金融の安定性への懸念は金利政策に影響するか?
    • 中銀は伝統的に、資産価格高騰に対し、金利政策ではなく金融システムにおける過剰レバレッジへの規制監督で対応してきた。
    • だが、金融危機における不動産資産のように、その手法をすり抜けてしまう問題もあり得る。現在の仮想通貨の投機熱もそこをすり抜けているのか? これまで金利を引き上げてきたが、それでも金融環境が緩和的過ぎることをそれは示しているのか? 2018年は、金融当局がもはやこの問題を座視できない、と決意する年になるかもしれない。

Duyはこの後、FOMCのメンバー交替に触れつつ、2018年の利上げは3回を維持するだろう、という見通しを示している。