米国とその他大勢：学術研究の地理学

経済

という論文が世界銀行から昨年12月に発表されていた（原題は「U.S. and Them: The Geography of Academic Research」；Marginal Revolution経由のChris Blattmanブログ経由のStefan Derconブログ経由）。


内容は、1985年から2004年に経済学の学術誌に掲載された実証論文を分析対象国で分類した、というもの。

対象とした全202学術誌におけるランキングトップ30ヶ国は以下の通り（論文の表A3より作成）。

順位 国 全学術誌 全学術誌% トップ5誌 トップ5誌%
1 United States 36649 48.2% 2383 77.3%
2 United Kingdom 6567 8.6% 102 3.3%
3 Canada 4151 5.5% 86 2.8%
4 Japan 2209 2.9% 57 1.8%
5 Germany 2085 2.7% 35 1.1%
6 China 1807 2.4% 65 2.1%
7 Australia 1806 2.4% 8 0.3%
8 Rwanda 1649 2.2% 25 0.8%
9 India 1093 1.4% 39 1.3%
10 Netherlands 1013 1.3% 10 0.3%
11 France 898 1.2% 40 1.3%
12 Sweden 739 1.0% 15 0.5%
13 South Africa 721 0.9% 13 0.4%
14 Indonesia 682 0.9% 10 0.3%
15 Spain 643 0.8% 6 0.2%
16 Micronesia, Fed. Sts. 631 0.8% 18 0.6%
17 Czech Republic 631 0.8% 6 0.2%
18 Denmark 574 0.8% 2 0.1%
19 Italy 571 0.8% 12 0.4%
20 Brazil 506 0.7% 10 0.3%
21 Ireland 501 0.7% 5 0.2%
22 Argentina 486 0.6% 9 0.3%
23 Taiwan Province of China 411 0.5% 3 0.1%
24 Greece 402 0.5% 0 0.0%
25 Israel 385 0.5% 21 0.7%
26 Oman 359 0.5% 3 0.1%
27 Portugal 318 0.4% 3 0.1%
28 Turkey 298 0.4% 2 0.1%
29 Bangladesh 284 0.4% 6 0.2%
30 New Zealand 271 0.4% 1 0.0%

ここで「全学術誌%」の列は、合計論文数76046に対する比率を表す。また、「トップ5誌」および「トップ5誌%」の列は、American Economic Review, Econometrica, the Journal of Political Economy, the Quarterly Journal of Economics, the Review of Economic Studies掲載論文だけを対象にしている。そちらの合計論文数は3083である。


ちなみに、トップ5誌を基準に上位30位を取ると、以下のようになる。

順位 国 全学術誌 全学術誌% トップ5誌 トップ5誌%
1 United States 36649 48.2% 2383 77.3%
2 United Kingdom 6567 8.6% 102 3.3%
3 Canada 4151 5.5% 86 2.8%
4 China 1807 2.4% 65 2.1%
5 Japan 2209 2.9% 57 1.8%
6 France 898 1.2% 40 1.3%
7 India 1093 1.4% 39 1.3%
8 Germany 2085 2.7% 35 1.1%
9 Rwanda 1649 2.2% 25 0.8%
10 Israel 385 0.5% 21 0.7%
11 Micronesia, Fed. Sts. 631 0.8% 18 0.6%
12 Sweden 739 1.0% 15 0.5%
13 South Africa 721 0.9% 13 0.4%
14 Italy 571 0.8% 12 0.4%
15 Netherlands 1013 1.3% 10 0.3%
16 Indonesia 682 0.9% 10 0.3%
17 Brazil 506 0.7% 10 0.3%
18 Chile 228 0.3% 10 0.3%
19 Argentina 486 0.6% 9 0.3%
20 Australia 1806 2.4% 8 0.3%
21 Colombia 134 0.2% 8 0.3%
22 Switzerland 197 0.3% 7 0.2%
23 Spain 643 0.8% 6 0.2%
24 Czech Republic 631 0.8% 6 0.2%
25 Bangladesh 284 0.4% 6 0.2%
26 Ireland 501 0.7% 5 0.2%
27 Belgium 246 0.3% 4 0.1%
28 Hungary 244 0.3% 4 0.1%
29 Thailand 167 0.2% 4 0.1%
30 Palau 149 0.2% 4 0.1%

米英加の上位3ヶ国は変わらないが、4位が日本に代わって中国となっている。


なお、中国に関する論文数はインドの倍近くある。これは、インド出身の優れた経済学者が多いことを考えると不思議な気もするが、インド系の経済学者は理論志向が強いこと、中国系の経済学者は中国を分析する傾向が強いがインド系はそうでもないこと、インド国内の実証関連の学術誌が対象に含まれていないこと、を世銀論文では原因として挙げている。


また、世銀論文では、一人当たりGDPと論文数の関連も調べている（下図）。

これを見ると、確かに米国は上方に乖離しているものの、極端な外れ値というわけではないことが分かる。このこと（＝米国が特に外れ値でないこと）は、出版の自由度、英語が公用語か否か、データの質、イスラムが多数派か否か、高等教育の有無、といった説明変数を加えた回帰で一層明確になるとの由。


ただ、上位5誌に掲載される割合は、米国が2383÷36649＝6.5%なのに対し、他国は（3083-2383）÷（76046-36649）＝1.8%である。研究者の所属機関などでコントロールしても、米国に関する論文は、他国に関する論文に比べて、上位5誌への掲載率が2.5%高い、とのことである。