非常勤と開館時間と

図書館に非常勤が多くなる理由

自治労の調べによると、自治体職員の3人に1人は非常勤職員ということです。図書館員は往々にして「図書館員だけが狙い撃ちにされている」と被害者意識をもつ方が多いですが、程度の差はあっても、実際にはどこの職場でもおこっていることです。ただし、私の実感として図書館は比較的早い段階から非常勤の方の比率が多いようです。このあたりを整理してみましょう。
まず制度面から。非常勤職員が積極的に増加したのは、育児休業制度ができてからだということは前に述べたとおりです。育休を利用しようとする職員のピンチヒッターとして登場しました。産休は女性だけだし育休もほとんどが女性が取得するのが一般でしたし、図書館は職員の男女比率がどちらかといえば女性の占める比率が高い職場であったから、ピンチヒッターとしての非常勤職員勤務が増えるのも当然のなりゆきだったと思います。
次に職場としての特殊性。一般の公務員は地方公務員法と自治体の条例で勤務条件がガチガチに定まっています。たいていの自治体では朝8時半ごろから午後5時半ごろが勤務時間で、勤務日も土日は休み。というあんばいで週あたり勤務時間まで決められています。
ところが、一般市民の便宜を図るため、開館時間=就業時間を伸ばす、あるいは土日=勤務を要しない日に出勤するとなると、「条例規則によりがたい場合」が多出してしまいます。これではよろしくない、というよりも複雑怪奇な勤務形態になってしまいました。私も何を隠そう、勤務表づくりを手がけたこともありましたが、とにかく難しいというか出来映えの悪いパズルのようなものでした。苦労した末「作品=勤務表」を提示すれば、非難中傷ボヤキ愚痴のオンパレードに見舞われ、じつに遣り甲斐の無さを感じたものです。ところが、そこに臨時とか非常勤の方がはいってくると、これがなかなかウマくいくわけですよ。しかもご本人は気の毒だけど正規のオバサ…じゃない御姉様方とちがって不平不満めいたことはいわないからますます好都合なのです。
あとはこのブログでも何回か取り扱った「行政改革」ですね。定数削減を目的に正規を非正規に置き換えることが「国策」となれば、同じ置き換えでも「非正規をもって替えがたい」職場よりも「なじんでいる」職場に集中するのは当たり前のハナシです。

司書と市民の「差」

ここで開館時間に話が及んだところで…
地方自治体は頻繁に住民を対象にアンケートを行います。
その結果、

「図書館など文教施設の充実」

という項目が上位にランクインされます。
図書館員としてはよろこばしいことですし、励みにも追い風にもなるのですが…
なにを「充実」させる(してもらいたい)かで、市民と図書館員にはかなりの「差」が生じます。
図書館員は、

  • 資料の充実

などを考えます。当然ですね。
しかしながら、市民は

  • 開館時間・日数の延長

を具体的な要望として出してします。
就労構造が変わり「専業主婦と子ども」から「ワーキングマザー+託児保育施設」が増えてくると、来館困難な方が増えます。
その人たちの身になれば、

  • 使えない30万冊の蔵書

よりも

  • 使える3千冊

を志向したとしても間違いのないことですから。
このあたり、市民全体の意識とか要望に思いをはせなくてはいけないと思いますけどね。