〔寄稿〕「光復会の反対、信じられない」/中原道子
筆者は早稲田大学の名誉教授として武力紛争中の女性に対する暴力、軍隊と性の問題、男性が書いた歴史叙述に対する批判的分析、歴史記述における記憶の意味と位置、植民地主義とジェンダーなど多様なテーマで日本人学生はもちろん、世界各国の留学生たちに講義してきた。加害国で生きていく一人の女性として日本軍性奴隷を調査し、日本軍‘慰安婦’問題解決運動に参加してきた。
ところが11月3日、光復会をはじめとする32の独立運動関連団体の‘戦争と女性の人権博物館建立許可撤回を求める記者会見’の知らせを聞き、困惑せざるを得なかった。36年に渡る日本の植民地支配下で命を捧げて戦ってきた方々、それほど立派な独立運動の偉業を果たしてきた方々が、日本軍‘慰安婦’被害者女性のための‘戦争と女性の人権博物館’を西大門独立公園内へ建設することには反対しているという事実が信じられなかったからだ。
光復会は声明文で「戦争と女性の人権博物館」建設の「積極支持」を表明しながら、同時に西大門独立公園内に建設することには「決死的阻止を宣言」している。西大門刑務所は「抗日の産屋であり、民族魂の聖地」というのがその理由だ。また、「我が民族が積極的な抗日闘争よりも、日帝による受難のみを被った民族」という「歪曲された歴史認識」を若い世代に注入してしまうと批判している。
現在の韓国で、日本による植民地支配や帝国主義支配に対して果敢に闘っている人は誰なのか?日本が過去の戦争犯罪に対して過ちを公式に認め、謝罪することで日本という国家の責任を果たすことを求めている人たち、その闘いを続けている人たちは誰なのか?
それは他でもない、日本軍‘慰安婦’として被害を受け、今では80歳を超えたおばあさんたちだ。そのおばあさんたちを支援し、一緒に闘ってきたのが韓国挺身隊問題対策協議会の女性たちであり、その闘いの正統性を共有して闘ってきたのが日本をはじめとした世界各国の女性たちだ。
絶え間ない被害者たちの証言や、女性たちの闘いは、国連などの国際社会で戦時性暴力犯罪者に対する不処罰の歴史、そのパラダイムを変えた。米下院で日本政府に‘慰安婦’に関する公式謝罪と国家賠償を求める勧告決議も生まれた。その後、カナダ、オランダ、ヨーロッパ議会、最近では韓国の国会でも同じ勧告決議が発表された。10月30日には国連自由権規約委員会が日本政府に対する審査報告書および勧告を発表し、「‘慰安婦’生存者に十分な賠償を行えるようにするための‘法的・行政的に迅速な措置’と法的責任を認め、被害者の大多数が受け入れられるかたちでの謝罪」を勧告していた。
韓国の歴史において命を捧げ、独立のために戦ってきた人たちの聖地にこのような世界的に重要な意味を持つ‘戦争と女性の人権博物館’が建てられるのは望ましいことだ。日本軍による性奴隷制の被害者である女性たちは、今まで植民地支配下で日帝が女性に行った人権蹂躙に対して人権と尊厳回復を希求し、果敢に闘争してきたからだ。この闘争を支援してきた挺身隊問題対策協議会の女性たち、この闘争に共感して支援している世界各国の女性たちの闘争を歴史に残し、未来の世代に明るい歴史の1項目として伝えるのにもっともふさわしい場所が西大門独立公園だと信じている。世界各国からこれを訪れる人々は、人権と平和に関する世界共通の願いを実現するために闘ってきた被害女性たちを尊敬し、共感するだろう。日本軍によるあらゆる性暴力被害者たちの痛みを分かち合い、世界中で起こっている武力紛争に伴う性暴力が絶えることと、再び戦争のない平和な世界が訪れることを願っている。
中原道子・早稲田大学名誉教授
(ハンギョレ 2008年11月04日)