2月26日のハンギョレ新聞に掲載されていた加藤紘一議員の関連記事とインタビューです。
まるでコントのようなトンデモ発言や、それに対する(フォローにもなっていない)弁明が絶えず繰り返されている、なさけな~い政府自民党において、加藤氏の発言は妙に“まとも”に見えてしまいます。それではどうぞ。
「拉致問題と核は分けるべき-日本は捨てられた木切れになる」
自民党の加藤紘一元幹事長
「さまざまな国々の拉致問題について理解をしていると言うが、外交的捜査に近い。(日本が)捨てられた木切れになる可能性が高い。拉致問題と核を分けて考えるべきだ」
今月18日午前、日本の民放テレビ『フジテレビ』の討論番組に出演した自民党のある議員が、「拉致問題に進展がなければ北朝鮮へのエネルギー支援はない」と北朝鮮に対する強硬姿勢に固執している安倍晋三首相を強く批判した。日本の世論の圧倒的多数が安倍首相の対北政策を支持している状況(2月20日『朝日新聞』81%支持)で、彼の発言は相当の覚悟のうえであり、勇気のいる表現に聞こえる。
発言の主である自民党の加藤紘一元幹事長(67・現衆議院議員)は現在、自民党内で安倍首相のもっとも手厳しい批判勢力として挙げられる。彼は小泉純一郎前首相に対しても一貫して厳しい批判をしてきた。「私は小泉氏とは長い付き合いだが、靖国に対する彼なりの信念について聞いた覚えがない。彼は自分の信念を貫くというポーズをとることで、中国や韓国を刺激した。彼がそのような言動を見せることは、日本国内の求心力を高め、自分の支持率をあげるためのものだという感を拭えない」
彼は昨年末に出版した『テロルの真犯人』で小泉首相の“靖国政治手法”を批判し、日本国内のナショナリズムの台頭について強い懸念を示した。この本ではまた、日韓政府間の見解の大きな違いを示した歴史認識問題についても「中国と韓国に対しては、日本の侵略戦争が多大な迷惑をかけたという基本認識から出発しなければならない」、「靖国問題が解決しない背景には、過去の戦争に対してちゃんと総括していないという問題があると思う」とはっきりと言及した。
彼のこのような歴史認識のために昨年8月15日、山形県鶴岡にある実家が60代の右翼団体構成員による“放火テロ”に遭い、全焼した。
外務官僚を経て1972年に議員として初当選した後、現在12選の重鎮議員である彼は、自民党内の非主流派の弱小派閥に転落したが、かつては総理の座を狙うほど“やり手の”政治家だった。
自民党幹事長時代の2000年当時、盟友である山崎拓議員と共に野党が提出した森善朗首相の不信任決議案に同調した、いわゆる“加藤の乱”を起こした。だが結局、夢破れて一時は議員職を離れ、そして再び党に戻るなど波乱の時期を過ごした。
22日、東京永田町の議員会館で会った加藤議員は、外交官僚出身らしく質問の一つ一つに対して慎重でありながらも説得力のある説明をしようとしている姿が印象的だった。
-拉致と核問題を分けるというのは・・・。
=そうせざるをえないだろう。なぜならば多くの関連国が、拉致問題にそれほど真摯な関心を持っていないからだ。アメリカや中国がまず拉致問題に関連した“圧力の連帯”からはずれ、直接対話に傾いている。第二に、日本の外務省も本心では拉致問題の連帯は難しいと判断しているのではないかと私は推測している。当初は「拉致問題の解決がなければ」と言っていたが、今では「進展がなければ」と表現を変えている。拉致問題解決、進展とは何なのか。政府ははっきりとは言わないが、日本と北朝鮮の間で(国交正常化関連の)ワーキング・グループが開かれるだけでも進展だと言わざるをえないのかもしれない。第三に、六カ国協議の結果、日本は北朝鮮のエネルギー事情を調査するのに関与することにしたと言うが、そうであるなら北朝鮮経済が栄養失調などの重病にかかった場合、どうするのか。エネルギー援助の面で、日本は相当の実力と経験を持っている国だ。核問題や国交問題で、アメリカや中国から少しずつ遅れをとっている点を考慮すれば、現実から大きくかけ離れた政策は国益に反すると思う。
-拉致問題の突破口はあるのか?
=かなり難しい。小泉純一郎前首相が△北朝鮮と交渉しないというアメリカの方針に逆らって訪朝したこと、△金正日に拉致を認めさせたうえに謝罪するようにし、8人の死亡を発表した点、△5人の生存者を帰国させた点、などはすばらしい成果として挙げることができる。しかしマイナス要素は▲生存者5人を北朝鮮に帰すという(日朝政府間の)約束を日本世論が許さなかったという点、▲横田めぐみの遺骨が偽物だという主張に対して北朝鮮が怒りを表明したという点などだ。従ってこれから拉致問題の突破口はこの二つの問題点をどのように解決しなければならないかにかかっていると言えるだろう。遺骨については第三国の機関で鑑定すれば、日本と北朝鮮のどちらの主張が正しいのか分るのではないか。
-最近、日本社会で格差問題が大きな争点として浮上しているが・・・。
=小泉政権の5年間にたまったマグマだと思う。雇用、所得格差、教育格差、大都市と地方の格差などの格差問題は、いつ爆発するかもしれない日本で一番大きな問題だ。小泉首相は国会答弁で「人間社会で格差があることの何が悪いのか」と発言したので、私が「小泉総理、そのように言われるのなら日本の総理として終わりですね」と反駁した。世界各国の首脳のなかで国民に向かって「格差があることの何が悪いのか」と国会で発言した政治家がいるのか、国会図書館で調べた結果、一人もいなかった。格差を狭めるために一生懸命努力することが政治家の仕事だ。
-靖国問題の解決案は?安倍首相の靖国参拝の可能性は?
=まずA級戦犯を靖国神社から分祀しなければならない。これが難しいのであれば、新たな追悼施設を建てる必要がある。靖国の近くの“千鳥ヶ淵戦没者墓苑”もその候補の一つになるだろう。安倍首相の去年の訪中以降、日中間の人的交流が多様に深まっているため、彼の在任中には参拝しないと思われる。
-日本国内でナショナリズムが強まることに対する憂慮が深まっている。
=近隣諸国との対立を煽れば、政治的にかなりの効果があるのがナショナリズムの特徴だ。したがってナショナリズムが便利だということを知っていながらも、できる限りナショナリズムを煽らない政治家は偉大な指導者だ。知っていながらナショナリズムを利用する政治家は危険だ。ほんの5~6年前までは、支持率を上げるためにナショナリズムを煽るという政治家はほとんどいなかった。日本には現在不健全な空気が漂っている。しかし、私は日本が健全な方向に戻るだろうと思う。過激なナショナリズムを主張する雑誌の販売率が徐々に落ちているというのは一つの兆しだ。
東京/キム・ドヒョン特派員