12月26日のハンギョレ新聞に掲載されていた李鍾元(イ・ジョンウォン)教授のコラムです。
韓国もそうですが、日本はますます六カ国協議における存在感が薄くなってきているなぁ、というのをこのコラムを読んでいて思いました。
それではどうぞ。
北朝鮮の核と朝鮮半島のパワー・ゲーム/李鍾元
朝鮮半島に“核の時代”をもたらした2006年も残りわずかとなった。わずかな期待をかけた六カ国協議も、具体的な進展を見せないまま終わった。もちろん六カ国協議は本格的な米朝交渉を控えた前哨戦の性格が強い。
1月に開かれる米朝交渉でアメリカの金融制裁がどのような形であれ妥結された場合、北朝鮮の核問題に大きな突破口が見出される可能性がある。六カ国協議終結以降に出てきた一連の発言を総合すれば、アメリカが求めた早期履行措置の核心である寧辺(ヨンビョン)核関連施設の稼動停止という“代価”をめぐる熾烈な条件闘争と駆け引きが、対立の中心にあるものと見られる。中国の唐家セン国務委員は、アメリカが金融制裁を解除すれば北朝鮮が寧辺の原子炉を停止すると提案したことを伝えた。金融制裁解除は前提条件であり、その後でなければ核問題に関して議論することはできないという金桂冠(キム・ゲガン)外務次官の記者会見が、北朝鮮の立場なのだろう。『朝日新聞』が伝えた中国の仲介案も、寧辺の核施設停止と食料およびエネルギー支援が中心的な内容となっている。
注目されるのは、このような提案が具体的であり、条件によってはすぐに実行可能なものであるという点だ。金融制裁という新しい要素を除外した提案は、1994年の米朝ジュネーブ合意の早期処置である“核施設凍結対エネルギー支援”の図式と似ている。北朝鮮が核実験を強行した今、状況はもちろん94年とは違う。しかし米朝双方が94年の水準を含めて最小限の合意から得る利益は少なくない。北朝鮮としてはすでに最大で見積もって核兵器13機を製造できるプルトニウムを保有した状況で、核実験以降の制裁局面を転換させ、食料とエネルギー支援などを獲得できれば寧辺核施設の“停止”は充分に妥協する価値がある。米ブッシュ政権としても94年のようにアメリカが重油を供給する方式でない場合、事態の悪化を防ぐという観点から、寧辺の核施設停止が北朝鮮の核問題全体に介入する踏み台という意味がある。“あらゆる核計画の申告”、“核実験場の閉鎖”というクリストファー・ヒル次官補の要求は、クリントン政権との差別化を図りながら段階的に接近を試みるためのものと見られている。
10月9日の核実験を契機として、北朝鮮とアメリカの関係が逆転した感じさえする。昨年9月以降、北朝鮮は金融制裁が大きな打撃であることを隠しもせず、アメリカにしがみつくかのように交渉を求めた。一方のアメリカは金融制裁の圧迫効果に満足し、北朝鮮との接触さえも拒否していた。振り返ってみると、北朝鮮の“虚虚実実”戦略だったのかもしれない。北朝鮮はブッシュ政権の圧迫と強硬姿勢を理由に核実験を強行したのだ。このような“攻防”がなければ、北朝鮮の核実験はより大きな衝撃波や反発を受けていただろう。
あれほど強硬だったブッシュ政権が、今回は交渉にしがみついている格好だ。北朝鮮の高姿勢に対しても六カ国協議の継続が必要だと口をそろえて強調している。もちろんイラク政策の失敗、中間選挙の敗北により、ブッシュ政権内の強硬論が大きく後退したのは事実だ。しかしアメリカの“低姿勢”は、次なる段階の圧迫のための国内外に向けたアリバイとしても必要になる。
今回の六カ国協議をめぐり、アメリカと中国は両国間の緊密な協調を意図的に見せつけている。さまざまな葛藤要因を内包しながらも、米ブッシュ政権は戦略的な米中協調体制を模索する方向に傾いている。“非核化”という共通の利害関係を媒介に、アメリカと中国が朝鮮半島の将来に関する事実上の“共同管理”体制を本格化しているとも言える。“核”問題が大きくなるほど、朝鮮半島に対するいわゆる大国の介入と関与は増幅するしかないのだ。韓国の位相がさらに無力になる前に、多角的に北朝鮮を説得する努力が必要だ。
李鍾元立教大学教授・国際政治