李鍾元(イ・ジョンウォン)立教大学教授のコラムが昨日(8月22日)のハンギョレ新聞に載っていたので、また(勝手に)翻訳してみました。(ここのところ、翻訳ネタばかりでごまかしているというツッコミはナシよ。)
やっとリアルタイムに読めるまでに追いつきましたね。フフフ。
それではどうぞ。
“闘う政治家”安倍と日韓関係/李鍾元
『外交を喧嘩にした男』。読売新聞が小泉外交の5年間を総括した本のタイトルだ。日本語原文の“喧嘩”は、韓国語で“闘い”と訳されたが、語感としては子どもたちの“ケンカ”や“口ゲンカ”に近い。
後任の総理として確実視されている安倍晋三官房長官も、“闘い”を掲げている。彼の政権構想をまとめた著書、『美しい国へ』の最初のページは「闘う政治家」という単語で始まる。日本には信念もなく闘いを避け、保身を図る政治家があまりに多いという挑発的な宣言だ。“安倍総理”の国家と国民のための“闘い”が、どのような内容と方向に展開していくのかは、韓国としても関心を持たざるをえない。
安倍官房長官の今までの発言や行動を見る限り、彼は現在の日本ではもっとも右派的な政治家に属するだろう。我々が日本の“右傾化”あるいは“右派”という言葉を使うとき、その内容には様々な要素が含まれている。大きく分類して経済的右派、現実主義的右派、軍事的右派、理念的右派の4つに分けることができるだろう。経済的右派とは対内的には新自由主義的構造改革、対外的には資源と市場獲得などの財界の利害を反映する立場だ。現実的右派は“国際貢献”と“普通の国”を志向してはいるが、復古主義的歴史観は多少負担に感じている。軍事的右派とは日本の軍事力に対する物的・制度的制限の撤廃に重点を置いている。一方、理念的右派は復古的で伝統的な価値観と理念を強調するもので、日本版“宗教右派”とも言えるだろう。これらの4つの流れはもちろんお互いに重複し、政治家個人の思想と行動の中にも様々な要素が混じっている。しかし、これを区別して分析することが対日関係と外交を考えるうえで必要だ。
例えば、小泉首相は靖国神社参拝に固執したことから、韓国民の視点からは根っからの右派政治家というイメージが強い。しかし、彼の政策や行動をよく見てみると、経済的右派の側面が目立ち、理念的・軍事的右派の性格は弱い。日本の代表的“右派”メディアである『読売新聞』や財界が小泉首相の靖国参拝を批判するのは、理念的右派の言動が日本の国益を損なっているという現実的右派、経済的右派の憂慮から出てきたものだ。
今までの発言と行動だけで判断すれば、安倍官房長官は理念的・軍事的右派に近い。経済改革よりも改憲、愛国心を強調する教育基本法、攻撃能力の保有を主張することに力を注いできた。日本国内でもこのような点が保守本流と財界の憂慮を引き起こしている。もちろん、実際に政権を任されれば現実的均衡をとる傾向が現れるだろう。靖国問題に関しても妥協策を打ち出す動きが出ている。中国に対しても“政経分離”を標榜し、東アジア地域の経済協力、自由貿易協定(FTA)の拡大版である東アジア経済連帯協定(EPA)構想を主唱することで、財界の憂慮に配慮する姿勢を見せている。
しかし、彼のアジア政策は依然として不透明だ。中国脅威論の基調が未だに強いなか、日米同盟を軸にオーストラリア、インドなどの“民主主義国家”との連携を長期戦略構想として提唱している。意図的なのか、アジアでもっとも力動的な民主主義国家、韓国はこの構想から除外されている。まだ具体的な内容は明確ではないが、中国を狙った動きが活発化する場合、東アジアでは“新冷戦”の北風が吹き荒れることになるだろう。靖国参拝問題が一段落したとしても、日韓関係はさらに大きな不安定要因を抱えていかなければならない。日本の多様性と変化を視野に入れた包括的な対日政策の構想が必要だ。
李鍾元 立教大学教授・国際政治