ツガノガク 『時をかける少女』

 古書店にて,ツガノガク『時をかける少女』の第1巻(ISBN:4047136204)を見かけたので購入。『エース特濃』Vol.2(2003年5月)から連載されていたもの。原作者に筒井康隆の名が挙げられているが,アリスン・アトリー『時の旅人 a traveller in time』(ISBN:4566012077)も参考文献としている。
 主人公は,高校3年生の芳山和子(細田守監督版では「魔女おばさん」として登場)。タイムリープ(時間跳躍)を引き起こすものは“ラベンダーの香り”。最初のタイムリープでは,妹と“ヨーグルト”の争奪。続いてタイムリープした和子は,1989年4月15日における「過去の自分」の姿を見る。つまり,1つの空間に〈本来の時間軸状の私〉と〈時間旅行をしてきた私〉が同時に存在することを許すドラえもん的タイムスリップ)。
 その後,和子は大事故を避けるために時間跳躍力を使い,さらには大人から「“時”の怖さ」を「知る責任」を知らされる。ストーリーは次々に起こる危機を回避していく筋立てで,ドラマツルギーとしては順当だけれど平凡な印象を受ける。
 絵柄は現代的な〈萌え絵〉。デビュー間もないということもあって描線は不安定。コマの取り方も頼り無く,出来映えは良好とは言い難い。
 う〜ん…… これが《2003年の時かけ》だったのか。
 こう数々のバリエーションがあると,「筒井康隆原作の『時かけ』」としては捉えきれなくなりそう。主人公たる少女が時間跳躍することを物語の骨格にした「『時をかける少女』というジャンル」がどのように変遷を遂げてきたのかを追う評論作業が必要だろうなぁ。

 浅野真弓、原田知世、南野陽子、内田有紀、中本奈奈、安倍なつみ…すべて芳山和子である。中学三年生の芳山和子は放課後の理科室でラベンダーの香りをかいで“タイムリープ”(時間を遡る)の力を得て、同級生の男子二人と不思議な事件に巻き込まれてゆく。そのうちの一人・深町一夫とのプラトニックな恋…。この芳山さんが主役を務める物語が『時をかける少女』である。(中略)
 「時代背景はなくてもいいんですよね。通時的な骨格がはっきりしてるわけだから、繰り返し映像化できるんです。」
http://r25.jp/index.php/m/WB/a/WB000410/tpl/interview01_11/bkn/20060713/id/200607130201 (筒井康隆インタビュー :: 骨格がシンプルな物語は何度でも繰り返すことができる)