白い花の舞い散る時間

 友桐夏(ともぎり・なつ)『白い花の舞い散る時間 〜ガールズレビュー〜』(ISBN:4086006472)読了。
 「うたたねこや」における微妙な物言いが気に掛かっていたところに,「積読を重ねる日々」での絶賛が加わったので,興味を持って買ってきました。

 今日はいつになく早く目が覚めたので,こんな朝には少女向け小説に浸ってみるのも悪くないと思い読み始めたのですが――
 うわ〜 うわ〜 うわわ〜 とんでもないものを読んでしまいました。
 本作が著者のデビュー作。投稿を繰り返した末に掴んだ受賞。はっきり言って文章はさほど上手くありません。荒削りであって,洗練されていない。「溜め」が弱いから,読み手の心に揺さぶりをかけるようなセリフまわしになっていない。
 でも,生まれ落ちた着想が押しとどめられることなく,巧妙に組み上げられた構成の上に危ういながらも乗っかって,とんでもない作品になっています。学習塾のチャットルームに素性を明かさず出入りしている5人が,夏休みの合宿と称して人里離れた洋館に集合し,実際に顔を合わせることになる。そんな甘酸っぱい雰囲気で始まる冒頭部からは,到底思いも寄らぬ結末。この内容がこの表紙でこの題名のコバルト文庫になっていることは,〈リリカル・ミステリー〉としか説明できない。これが作者に秘められた実力の発露なのか,それとも奇跡がもたらした福音なのか。
 この驚きは,味わってみる価値が十分にある。


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